美浦のある調教師が「栗東の坂路は立派で負荷がかけられるから」と恨み節をつぶやいた水曜朝。今年の高松宮記念に出走する栗東組の11頭中10頭が坂路を駆け上がった。栗東勢のスプリントG1最終追いといえば坂路。「戦隊モノのリーダーが赤(黄はおっちょこちょい)」というほど当たり前になっていたけど、なぜなのか?理由は矢作師が教えてくれた。「コースは折り合いと持久力を重視した調整がメイン。短距離馬にはそこまで必要なことではない。その点、坂路は適正な負荷をかけられる」

 その矢作師が送り出すモズアスコットが坂路で抜群の動きを見せた。4F50秒2はこの日の栗東坂路で2位。坂路番長のモズスーパーフレア(4F48秒9)に首位の座は譲ったが、注目はラスト3Fのタイムだ。4Fの時計では1秒3差だが、3Fでは0秒4差。最初の1Fをゆったりと入る馬も多く、実際の競馬同様に“上がり3F”に価値がある。「コースより坂路の方がデータとして故障しづらいことが判明していることもあるし、この馬は坂路で。動きは良かったと思う」と師。速すぎる時計には頭を抱えたが、鋭い動きに高い評価を与えていた。

 坂路の好時計で単純なスピードを証明。18年安田記念、前走・フェブラリーSと芝&ダートのマイルG1を制した同馬が、新たなる領域でも通用する証拠を示した。当企画の初日は藤沢和師の「1400メートル戦はスプリント適性の高い馬が向いている」という談話を紹介した。アスコットは芝1400メートル戦で【2・4・0・1】と安定。これだけ根拠が並べば、初のスプリント戦でも本命候補に入ってくる。

 師は初コンビのM・デムーロについて「大きいレースでの彼の勝負強さは凄いです。この状況で少しでも明るい話題を提供できれば」と期待十分。11年ドバイワールドC。東日本大震災に打ちひしがれる日本人に勇気を届けたヴィクトワールピサの背にもこの男がいた。マイルとダートの頂点に立ったアスコットが、3度目の「Throne(王位)」を狙っている。