ラグビーも近い将来、Jリーグのように、各チームが小中学生のチームを持つかもしれない。NTTドコモの「ラグビーアカデミー」は、そんな未来への布石だ。2021年秋にスタートする新リーグの参加要件にもなることを想定し、大阪市の「南港」で週1回、中学生(女子は中高生)の指導をしている。

 担当の渡辺義己さんは「僕らの頃に比べたら、みんなうまい。動画でいろいろなプレーを見ているからでしょう。キックパス、オフロードパスもします」と参加者を称える。うまい選手ばかりでもない。誰もが所属チームや部活で活躍できるように、アカデミーは「塾」として存在する。基本はもちろんのこと、判断力を養う練習、体力測定など内容は多岐にわたる。

 指導陣は豪華だ。強豪・大阪朝鮮高の元監督で、現在はチームの育成兼リクルーターを務める呉英吉さんをリーダーに据え、ニュージーランドで長年、数々のチームを指導した竹内克バックスコーチも名を連ねる。渡辺さんら、トップリーグ経験者もグラウンドに立つ。メニューがバラエティーに富むのは、陣営が豊富な知識、経験を持つからだろう。

 地域貢献の一貫で17年に始まった取り組みは、初年度が35人、2年目の18年が70人と参加者は増えたが、昨年は27人に落ちた。27人は新型コロナウイルスの影響で修了式ができないまま、高校へ巣立っていった。減少は、PRがうまくいかなったのが原因だ。

 試行錯誤をしながらも、理念はぶれない。下沖正博ゼネラルマネジャー(GM)は「ここでうまくなって、ちょっとした成功体験ができれば、高校でも続けたいと思う子が増えると思う」と底辺拡大を願う。トップリーグのアカデミーは、関西ではNTTドコモだけ。自チームのラグビースクール出身者、フランカー広川翔也(25)がいるヤマハ発動機のように、下沖GMは「いつかここからトップリーガーが出れば」と口にしつつも、本音は別のところにある。

 危険な体勢でタックルをする子どもをたくさん見てきた。技術よりも、「気持ち」や「根性」が叩き込まれているケースが依然として残る。「技術が身に付くことで安全にプレーができる。それが楽しさにつながるし、ひいては、普及にもつながる」。ちまたのスクールが長くラグビー界を支えていることを認識しつつ、外国人選手が多数加わり「世界」に触れているトップリーグのチームだからこそ教えられることがある、と考えている。

 「塾」の位置付けのドコモのアカデミーは、将来はチームを持って、大会に出ることを考えている。スーパーマーケットの出店を商店街が恐れるように、参入すれば、既存のラグビースクールの反発を生む可能性がある。しかしながら、まずは「子どもファースト」で考えるべきではないだろうか。

 質の高い指導が受けられることが、子どもにとって最もプラス。もし、評判と違うチームであれば淘汰されるだろうし、模範になる存在なら、地域に好影響を及ぼすはずだ。「選手を奪われた」という狭い了見で判断すべきではないだろう。

 W杯で人気が出たとはいえ、ラグビー界の危機的状況は変わりない。少子化は深刻。高校の部員登録者数は、03年の3万419人から激減し、19年は2万11人だった。登録校数は1252から969まで減った。高校に1人でも多くのラガーマンを送り出すために、NTTドコモは動き出している。(倉世古 洋平)