ヤクルトは長期展望より目先の整備。崩壊状態を救う即戦力投手が必要

ヤクルトは長期展望より目先の整備。崩壊状態を救う即戦力投手が必要

チーム事情から見るドラフト戦略〜ヤクルト編

 56勝78敗2分、勝率.418——。正直、今年のヤクルトがこんな成績になるなど、まったく予想していなかった。昨年はセ・リーグ2位に入り、CS(クライマックス・シリーズ)ファーストステージで巨人に敗れたとはいえ、今シーズンに期待を抱かせるだけの戦力は整っていたはずだ。
※成績はすべて9月17日現在(以下同)

 事実、シーズン序盤は順調なスタートを切った。ところが、5月中旬から”魔の16連敗”を喫し、チームは一気にしぼんでしまった。その後も浮上するきっかけもないまま負けを重ね、結局は5位の中日にまで8ゲーム差をつけられるなど断トツの最下位。この責任を取り、今シーズン限りで小川淳司監督、宮本慎也ヘッドコーチの退団も明らかになった。


鳴門高校(徳島)時代は3年連続夏の甲子園に出場した河野竜生

 ただ、こんなに負けても、少しだけ前向きになれたのは、打線の奮闘があったからだ。627得点はリーグ1位の巨人(630得点)に次ぎ2位。2年目の村上宗隆が35本塁打を放つなど一本立ちし、山田哲人も34本塁打、33盗塁と気を吐いた。バレンティンだって32本塁打を放っており、この3人で101本塁打。その脇を固めるベテランの青木宣親、雄平も3割近い打率をマークするなど、打線はリーグ屈指の破壊力を誇った。

 だが、3年後を考えた場合、はたしてどれだけの選手が残っているのか。言い換えれば、西浦直亨、廣岡大志、奥村展征、太田賢吾、塩見泰隆、濱田太貴、宮本丈、中山翔太といった選手が、どこまでバリバリのレギュラーとして活躍できるかが最大のカギになる。今はベテラン勢が奮闘してくれているが、野手の選手層は決して盤石ではない。数年先を考えれば、野手だって喉から手が出るほどほしい。

 とはいえ、今のヤクルトを見れば、どう考えたってほしいのは”投手”だ。まず、ここ3年間のドラフトで獲得した投手と、今シーズンの成績を見てみたい。

2016年度ドラフト
寺島成輝(履正社→ドラフト1位)3試合0勝0敗/防御率2.25
星知弥(明治大→ドラフト2位)10試合1勝3敗/防御率8.53
梅野雄吾(九産大九州→ドラフト3位)66試合1勝2敗4セーブ/防御率3.56
中尾輝(名古屋経済大→ドラフト4位)12試合0勝1敗/防御率8.36
菊沢竜佑(相双リテック→ドラフト6位)登板なし

2017年度ドラフト
大下佑馬(三菱重工広島→ドラフト2位)28試合0勝2敗/防御率5.17
蔵本治孝(岡山商科大→ドラフト3位)8試合0勝0敗/防御率9.24
金久保優斗(東海大市原望洋→ドラフト5位)登板なし
沼田拓巳(石川ミリオンスターズ→ドラフト8位)登板なし

2018年度ドラフト
清水昇(国学院大→ドラフト1位)10試合0勝2敗/防御率5.79
市川悠太(明徳義塾→ドラフト3位)登板なし
坂本光士郎(新日鐵住金広畑→ドラフト5位)15試合0勝0敗/防御率4.15
鈴木裕太(日本文理→ドラフト6位)登板なし
久保拓眞(九州共立大→ドラフト7位)16試合0勝0敗/防御率5.73

 現時点で梅野がチーム最多登板と戦力として活躍したが、なにより痛いのは、このなかでローテーションの一角として期待できそうな兆しを見せてくれた投手がいないことだ。このままでは近い将来、シーズン100敗も現実味を帯びてくる。とにかく、今のヤクルトをなんとかしてくれる投手が必要だ。

 高校生は、星稜の奥川恭伸(やすのぶ/投手/右投右打)しかいない。しかし、4〜5球団の競合になる可能性は大だ。ならば、明治大の森下暢仁(まさと/投手/右投右打)という手もありだが、こちらも間違いなく競合する逸材である。

 ならば、一気に社会人の伏兵・JFE西日本の河野竜生(かわの・りゅうせい/投手/左投左打)の単独指名に方向転換するのもありだと思う。「弱気」と言われようが、1年目から確実に使える投手を獲るしかない。それが今年のヤクルトの”基本姿勢”である。

 河野は 身長174センチと上背こそないが、テイクバックが見えにくいフォームから最速151キロのストレートを投げ込んでくる左の本格派だ。とにかく試合をつくれる投手で、大崩れしないのが最大の魅力だ。全盛期の和田毅(ソフトバンク)を彷彿とさせる。

 河野を獲得すれば、同じく左投げの高橋奎二だって刺激を受けるはずだし、先輩の意地を見せてくれるはずだ。そうした相乗効果も期待したい。

 今年はドラフト制度が少し変わり、2位以下の指名方式が変わった。それまでセ・パ交流戦で勝ち越したリーグに指名の優先権が与えられていたが、今年から交流戦の成績に関わらず、今年はセ・リーグ、来年はパ・リーグと1年おきに優先権を得られることになった。つまり、今年の2位指名はセ・リーグ最下位のヤクルトからとなるのだ。

 そこで2位で指名したいのが、JR東日本の太田龍(投手/右投右打)だ。身長190センチの大型右腕で、河野と同じ高卒3年目の選手である。チームのシステマタイズされたプログラムで育成され、3年間で実戦力を培った。145キロ前後のストレートに、勝負球のフォーク。間違いなく先発ローテーションを任せられる逸材である。

 もし太田がどこかの球団に1位で指名されたら、東芝の岡野祐一郎(投手/右投右打)や大阪商業大の大西広樹(投手/右投右打)のどちらかを獲得したい。派手さはなくても、試合をつくれる確かな技術を持った投手たちである。

“長期展望”はもちろん大切だろうが、今のヤクルトに必要なのは目先の戦力である。正直、選手が育つのを待っている時間はない。とにかく、攻撃陣が元気なうちに投手陣を整備しておかないと、すぐに暗黒時代はやってくる。

 逆に投手陣さえ整えば、Aクラスはおろか、優勝だって夢じゃない。それがヤクルトというチームの魅力でもあるのだが……いずれにしても、今年のドラフトは1年目からバリバリ投げられる、そして試合をつくれる投手を徹底的に獲得すべきだ。

著者:安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko


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