石川真佑は敵将も認める「日本の宝」。低身長を補う対応力がすごい

石川真佑は敵将も認める「日本の宝」。低身長を補う対応力がすごい

 バレーボール女子のワールドカップ(W杯)で苦戦が続く日本に、差し込むひと筋の光のような選手がいる。今季、初めて代表に選出された19歳のアタッカー・石川真佑(東レアローズ)だ。


全日本デビューのW杯で活躍する石川

 初戦のドミニカ共和国戦でいきなり代表デビュー。ピンチサーバーとして全4セットで出場した。1万人を超える大観衆の中でのプレーに、「最初、コートに立ったときはすごく緊張した」と初々しく笑った。それでもサーブで相手を崩し、自ら相手のスパイクをレシーブしてブレイクポイントを奪うなど、強心臓ぶりを見せつけた。

 イタリア・セリエAでプレーする、男子代表エースの石川祐希(パドバ)を兄に持つ。強豪の長野・裾花中から東京・下北沢成徳高に進み、高校時代は1年生から主力として活躍。全国制覇も経験し、進んだVリーグ1部の東レでも1年目から出場機会を得るなど、実力は折り紙つきだ。

 だが、大会前には「目指していたけど、この舞台に立てると思っていなかった。自分でもびっくり」と明かすほど、サプライズのメンバー入りだった。7月の世界ジュニア選手権と、20歳以下の日本代表が主体で臨んだ8月のアジア選手権を制する原動力となり、ともに最優秀選手に選ばれたことで、W杯直前の8月末に招集されたのだ。

 身長171cm。アタッカーとしては新鍋理沙(久光製薬スプリングス/173cm)と並んでチームでもっとも小さい。しかし、プレーのスケールはとてつもなく大きい。

 世界に衝撃を与えたのは第2戦のロシア戦だった。劣勢の第1セット途中から出場すると、終盤にレフトからスパイクを決めて代表初得点をマーク。ここからが圧巻だった。身長190cm以上の大型選手がずらりと並ぶロシア相手に一歩も引かない。レフトから強打をたたき込めば、バックアタックでも得点を重ねる。ブロックの間を抜いたり、脇を抜いたり、指先に当ててブロックアウトを奪ったり……。44本を打って19本を決めた。

 スパイク決定率は43.1パーセント。試合後は「自分が思っているトスじゃなかった時に、そのまま打ってしまってブロックされてしまうことがあった。そういう時に、もっと瞬時に(いい)判断ができたら」と反省ばかりを口にした。しかし、「自分が思っているトス」が来た時にはイメージ通りに決められる、という手応えもつかんだという。それは、ロシアのセルジョ・ブザート監督に「石川は若いが、リーダーだ。日本の宝だと思う」と言わしめるほどの存在感だった。

 先発した次戦の韓国戦では、攻守での非凡さを見せた。8月のアジア選手権で対戦していたこともあり、韓国のエースである金軟景(キム・ヨンギョン)は「(石川の)特徴を把握していた」という。確かに、ブロックにかかったり、レシーブに上げられたりすることは、ロシア戦よりも多くなった。

 しかし、思わずうなったシーンがある。第1セットの15−17での場面。金軟景がインナー(アタックライン付近)に打ち込んだ強打を、石川が上げた。そして、すぐに大きく開いて助走を開始。切り返しの攻撃で上がってきたトスを金軟景に力強く打ち込み、レシーブをはじいて得点した。

 同様のプレーが1度だけでなく何度もあった。守備から攻撃への切り替えの速さ。そして、十分な助走を確保することで力強く打ち込むことができるスパイク。石川の非凡な点は、まさにここである。第4セットの20−24という相手のマッチポイントで回ってきたサーブでは、強気に攻めてデュースに持ち込む足がかりを作り、精神的なタフさも光った。試合はセットカウント1−3で敗れたが、チーム最多の17得点を挙げて気を吐いた。

 ひとつひとつのプレーの完成度が高いだけでなく、突出しているのは相手への対応力だ。中田久美監督は「高いブロックに対しての打ち分け方が非常にうまい」と石川を評する。ただ、本人に言わせれば、高いブロックを相手にするのはもともと得意ではなかったという。世界ジュニア選手権で、ロシアやイタリアなど海外勢の高くそびえるブロックに対峙し続けたことで、身につけた能力なのだ。

 石川は言う。

「最初は何本も止められていた。どうやって点数を取ろうかと迷いもあった。でも、試合を重ねていくごとに、高いブロックの指先だったり、相手の脇を狙ったりというのを意識していました」

 第4戦のカメルーンには勝利したものの、中国戦はセットカウント0−3で惨敗。世界トップの相手は「自分が思っていたよりも、まだ高いブロックだった」と振り返る。途中出場した第2セットで、初めて放ったスパイクはブロックに阻まれた。

 だが、ここで終わらないのが石川の対応力だ。「1本目を打った時より、少し高い位置で捉えるようにして、もう少し上のほうを狙って打っていました」と涼しい顔で言う。1本目のスパイクで感覚をつかんで即座に対応。直後に打った2本目は指先に当ててコート後方にはじき飛ばした。第2セット終盤からの出場だったにもかかわらず、巧みにブロックをはじくなどして奪ったスパイク得点はチーム最多に並ぶ7点。前回女王、リオ五輪覇者にもっとも手を焼かせた。

 底知れぬ可能性を秘める19歳。苦境の日本を救うのは、この選手かもしれない。

著者:柄谷雅紀●取材・文 text by Karaya Masaki


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