清水エスパルス ピーター・クラモフスキー新監督インタビュー(2)
(※インタビューは就任発表直前に行なわれたものです)

 J1を制した横浜F・マリノスで昨シーズンまでヘッドコーチを務めた、ピーター・クラモフスキー氏をインタビュー。このインタビューのあと、新シーズンから清水エスパルスの監督を務めることが発表された。長年コンビを組んだ、横浜FMのアンジェ・ポステコグルー監督との関係や、日本サッカーに対する印象などを訊いた。


自身のサッカー観や日本について語る、ピーター・クラモフスキー氏

──アンジェ・ポステコグルー監督との出会いについて、教えてもらえますか?

「私がまだ選手だった頃の2004年に彼と出会い、すぐさまその教えに魅了された。プレーする側としても、本当に楽しめるものだったんだ。自分もこんなスタイルのフットボールを教える側になりたいと思い、ほどなくして指導者を志した。アンジェはこのスタイルを20年前から信じ続けている。おそらく指導者の道を歩みだした時から、同じフィロソフィーを抱いているのだと思う。私は彼の補佐として、このユニークなスタイルを最も近くで目にしてきた。本当に幸運だよ。今ではそれが血肉となっている」

──あなたの少年時代のアイドルは?

「私の両親はマケドニア出身で、その影響で東欧のフットボールをよく観ていた。いちばん好きだったのは、1990年に欧州チャンピオンズカップ(欧州チャンピオンズリーグの前身)を制したレッドスター(旧ユーゴスラビア)だ。その頃の私はストライカーだったので、ダルコ・パンチェフが大好きだった。マケドニア出身のFWは、その欧州制覇にも貢献していた」

──あの頃のレッドスターには、パンチェフ、シニシャ・ミハイロビッチ、ロベルト・プロシネツキ、ヴラディミル・ユーゴビッチなど、優れたタレントが揃っていました。そして、多くの試合で複数得点していたように、攻撃に特長を持ったチームでした。

「観ていてすごく面白いチームだった。特大の才能に恵まれた選手たちが揃ったチームは、欧州中の強豪を次々に倒し、大陸の頂点に立った。しかもメンバーはほぼ全員、ユーゴスラビア人だった。あの偉業は、今でも鮮明に覚えているよ。

 ただし、フットボールは進化し続けている。当時のレッドスターは観ていて楽しいチームだったけれど、それは主に個々の輝きによるものだったと思う。一方、現在のフットボールでは、個人能力だけで成功を収めることはできない。

 もちろん私も、欧州のトップレベルのフットボールを観ている。近年では、バルセロナやバイエルン、リバプール、そしてマンチェスター・シティらが、フットボールを大きく進化させてきた。そうしたチームのよい部分を自分の指導に取り入れることもある。けれども、アンジェと私が率いたマリノスは、どこかを真似たわけではない。彼が長年培ってきた哲学とメソッドに、ほかのモダンフットボールチームのよい部分を組み合わせてできたチームと言える」

──横浜FMはマンチェスター・シティの姉妹クラブですが、昨シーズンのとくに終盤戦は前線からの激しいプレスが冴え渡り、どちらかというとリバプールに近い印象を受けました。

「そうかもしれないけど、私はほかとは比較しない。もちろん、いい意味でね。世界中のフットボールを見ているが、このマリノスと似たチームはどこにもないと思う。アンジェ・ポステコグルーのオリジナルだ。ずいぶん前から、彼はこのスタイルを掲げ、信じ、貫いてきた。そして豪州でも、クラブと代表で成功を収めてきた。今のマリノスのフットボールにも、彼の哲学が反映されている。コーチだった私やほかのスタッフ、そして選手たちは、それを心から信じ切っていた」

──あなた自身のフィロソフィーを教えてもらえますか?

「選手たち、指導陣、そして観ているファンも楽しめる攻撃的なフットボール。重視するのは、スピード、リズム、テンポ、スキル、ハードワーク、チームスピリットなど。いかなる困難に直面しても、その信念を貫くことが大事だと考えている」

──プロのフットボールの指導者として、最もすばらしいことはなんでしょうか?

「すべてだよ。何よりも好きなことを仕事にできているのだから、自分は本当にラッキーだ。それは私だけでなく、フットボールを職業にしている人に共通する思いだろう。プロの指導者の生活も大好きだ。毎日のトレーニング、芝生の匂い、試合の緊張感、ファンの大声援──。最高の職業に感謝している」

──Jリーグと日本のサッカーの印象は?

「スキルフルでスピーディーな選手やチームが多いよね。日本はアジアの盟主として、この地域を牽引してきたわけだが、実際に来て、その理由がわかった。育成年代では、高校サッカーが広く受け入れられており、私も彼らのプレーに心を動かされることがある。大学サッカーも盛んだし、小学生や中学生の競技人口も多い。もちろん、クラブのアカデミーも充実している。このように、日本にはすばらしい土台がある。

 だからこそ、そのトップレベルであるJリーグや日本代表のレベルが高いのだと思う。個人的には、日本代表はW杯で優勝してもおかしくないと思っている。次ではなくとも、そう遠くない将来に」

──日本で生活を始めておよそ2年が過ぎました。日本にはどんな印象を持っていますか?

「美しい国だ。人々は親切で私のような外国人を快く受け入れてくれる。人々は他者を敬い、どこも清潔で、すばらしい文化がある。私は以前から、いつか日本で仕事をしてみたいと思っていた。だからアンジェがマリノスからオファーを受けて、一緒に日本に行こうと言われた時は、念願が叶ったと小躍りしたよ。

 実際に生活を始めると、その想像さえも超えるすばらしい日々が待っていた。私の2番目の子どもは日本で生まれた。私の家族にとって、日本は第二の故郷になった。いや、その娘にとってはオーストラリアよりも馴染みのある国だね」

ピーター・クラモフスキー
Peter Cklamovski 1978年10月16日生まれ、オーストラリア・シドニー出身。2008年にギリシャのパナハイキFCで指導者のキャリアをスタートさせ、その後オーストラリアのクラブや世代別代表チームのコーチや監督を歴任。2018年より2シーズン、横浜FMのヘッドコーチを務めた。12月に2020年シーズンから清水エスパルスの監督となることが発表された。

著者:井川洋一●取材・構成 text by Igawa Yoichi