Jリーグの新たなシーズンの幕開けを告げるFUJI XEROX SUPER CUP。9人連続PK失敗という”珍事”も起こるなか、昨季天皇杯王者のヴィッセル神戸が、同J1王者の横浜F・マリノスを下して初優勝を遂げた。

 最終的にPK決着で明暗が分かれる結果にはなったが、互いが3点ずつを取り合うシーソーゲームは、新シーズン最初の公式戦にしては質が高く、単純に見ていて面白い試合だった。両チームともに、今季J1で優勝争いに加われるだけの実力があると、示すことができたのではないだろうか。

 さて、そんな好ゲームの前座として行なわれたのが、NEXT GENERATION MATCH。日本サッカーの将来を担うユース年代の選手たちが出場したその試合で、”兄貴分”に負けず劣らずの戦いを見せたのが、横浜FMユースである。


日本高校選抜に快勝した横浜F・マリノスユース

 この試合、日本高校サッカー選抜(以下、高校選抜)と対戦した横浜FMユースは、3−2で勝利。試合終盤こそ、高校選抜の猛攻に押し込まれる時間もあったが、40分ハーフの試合全体を通じて、概ねボールを支配し、ゲームをコントロールしながらの勝利だった。

 もちろん、横浜FMユースが日常的に活動しているクラブチームであるのに対し、高校選抜は、先の全国高校サッカー選手権大会が終了したあとに、各高校から選手が集められた、急造の選抜チームだという差はある。

 だが、その一方で、高校3年生がほとんどを占める高校選抜に対し、すでに新チームになっている横浜FMユースはすべて高校1、2年生。学年的に言えば、高校選抜のほうが”格上”である。

 それを考えれば、横浜FMユースが自らの実力を示す、価値ある勝利だったのは間違いないだろう。

 とはいえ、重要なのは試合結果ではない。勝敗以上に興味深かったのは、横浜FMユースの戦いぶり。それが、昨季J1を制したトップチームに通じるものだったからである。

 ピッチ上の選手たちが流動的にポジションを動かしながら、相手ディフェンスの間に立ってパスをつなぐ。テンポよくパスをつないで敵陣に攻め入り、もしボールを失っても、素早い攻守の切り替えですぐにボールを奪い返しにいく。そんな一連のプレーは、トップチームの戦いを見ているかのようだった。

 象徴的なのが、前半32分の先制ゴールである。

 GK寺門陸からパスを受けた右センターバックのDF木村恵風が、プレスに来た相手選手をうまくかわして縦にボールを持ち出すと、フリーで上がってきた右サイドバックのDF成田翔紀へパス。この時点で、右サイドでの数的優位を作り出した横浜FMユースは、成田から右サイドハーフのMF久保龍世へとつなぎ、最後は、ニアゾーンへ走り込んだトップ下のMF中村翼が久保からのパスを受け、得意の左足でシュートを決めた。

 最後尾のGKからでもパスをつなぎ、センターバックであろうとも、しっかりと攻撃の組み立て役を担う。それはまさに、昨季J1で何度も見た、横浜FMの得点パターンそのものだった。

 巧みなボールコントロールと状況判断で先制点の起点を作った、木村が誇らしげに語る。

「立ち上がりから、相手の左MFが自分のところを狙って食いついてくる感覚があったので、そこを自分が抜いてサイドバックがフリーになれば、うちのサイドは速いので、そこで崩し切れると思っていた。自分はユースから(横浜FMに)入ったが、後ろから(攻撃の形を)作るっていうのは、入った時からずっと徹底されている。やっぱりトップチームのサッカーを近くで見ていて、それを意識しながらやっているからこそできるっていうのはあると思う」

 今の時代、Jクラブのユースチームは、その多くが技術を重視したサッカー(簡単に言えば、パスサッカー)を志向している。

 ところが、ユースチームでは勝負ばかりにこだわることなく、技術優先で選手を強化・育成しながら、トップチームでは同様のスタイルを貫けない(守備を固める現実的な戦いを選択するなどの)ケースがしばしば見受けられる。

 トップチームではよりシビアに結果が求められる以上、必ずしも理想ばかりにこだわってはいられないという事情はあるにしても、これではユースチームの選手たちに対し、自分たちがやっていることが本当に正しいのだという説得力に欠けてしまう。

 だが、横浜FMでは、トップチームが極端なまでにボールを支配し、ゲームをコントロールし続ける攻撃的なスタイルでJ1を制したことで、「(ユースチームの)自分たちにとっても自信になる」と木村。「やっていることは間違ってないんだと思えたし、優勝する場面を目の前で見て、やっぱり自分たちもこういうサッカーをしたいなと思った」と語る。

 横浜FMユースを率いる筒井紀章監督もまた、「僕らはトップチームの選手を輩出することに重きを置いている」と言い、こう続ける。

「トップチームのような攻撃的なサッカーをアカデミーでも目指している。そうすることで、少しでも技術のレベルアップや、判断レベルが上がることにつながるはず。トップチーム(のサッカー)を意識してやりたいし、選手たちもトップチームを身近に感じていると思う」

 実際、昨年トップチームの練習にも参加したという木村は、「コミュニケーション力がすごいというか、みんな普段からよくしゃべる。それが、チームの連係につながっているのかなと思った」と、強さの秘密を実感。その経験を生かし、今年からプレミアリーグEASTに昇格したユースチームでも、「(昇格した)最初の年だけど、優勝して、高円宮杯ファイナルに出て、そこでも勝って全国の一番上を取りたい」と意気込む。

 加えて、そこでは当然、結果だけでなく、内容的にも「トップチームと同じようなサッカーで(優勝したい)、という気持ちもある」。

 アンジェ・ポステコグルー監督の下、「アタッキング・フットボール」を掲げ、シーズン終盤は相手をねじ伏せるような圧倒的な強さを見せつけ、J1の頂点に立った昨季の横浜FM。自らが信じるスタイルを貫いた末の戴冠は、次代を担う若い選手たちにも、間違いなく好影響を与えている。

著者:浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki