キャンプ初日のブルペンを視察した辻発彦監督が思わず唸った。

「いいね。キャンプまでにしっかり体をつくってきたと聞いている。力みも感じられず、イケそうかなという感じは受けた。スピードやキレも徐々に出てくると思う。左だし非常に楽しみ」

 2年連続でリーグワーストのチーム防御率4点台、最多失点を喫している投手陣の立て直しこそが、リーグ3連覇と悲願の日本一へ向けた課題であるということは明らかだ。そんななか、ドラフト2位左腕・浜屋将太の好調さは、指揮官にとっても大きな収穫だった。


開幕一軍を目指す西武のドラフト2位ルーキー・浜屋将太

 浜屋は樟南高(鹿児島)で3年の夏に甲子園に出場。その後、社会人の三菱日立パワーシステムズへ進み、3年目には最速148キロの直球と「絶対の自信がある」というスライダーを武器に都市対抗出場に大きく貢献。同年秋の日本選手権では2試合に先発するなど、チームの大黒柱として活躍した。

 また、ドラフト前に組まれたDeNAとの練習試合では2回5失点とプロの圧力に屈したが、アレックス・ラミレス監督から「ポテンシャルの高さを感じる投手だ」と賞賛された。

 キャンプ第1クール最終日には「まとまっていて、コントロールもいい。マウンドさばきもベテランみたいだ」と指揮官の評価はさらに上昇し、第2クールでは早くも打撃投手として打者と対峙。迎えた打者は2年連続本塁打王の山川穂高だった。

 全球ストレートとはいえ、右中間フェンス直撃の一打を食らうなど、超一流の打棒を見せつけられた。

「社会人の時にあんな打球を飛ばされたことはなかった……」

 そう言って浜屋は頭を掻いたが、西口文也投手コーチは「先発でも中継ぎでもいける」と高評価。開幕一軍へ、猛アピールを続けている。

 高校時代からボールのキレは突出していた。畠中優大(中央大)との左腕Wエースとして挑んだ高校3年夏の鹿児島大会では、登板5試合中4試合で2ケタ奪三振を記録。体重50キロ代(当時)の小さな体から驚異のスタミナを披露し、チームを甲子園へと導いた。

 甘いマスクとは裏腹に、とてつもない負けん気の強さを持ち合わせている。高校時代に浜屋を取材した当時のノートにはこう書き記している。

<見た目は華奢だが、球の強さ、空振りの取れる球質は出色。相手打者は左右に関係なく、バッティングにならない>

 当時は「この見た目とボールのギャップが最大の武器になり得る」と断言するスカウトもいた。そして今、あの時の投球スタイルそのままに、プロでのキャリアをスタートさせた浜屋。しかし、本人は慎重な姿勢を崩そうとしない。

「自分には”えげつない”ボールがありません。だから、”間(ま)”を崩したり、変化球で打たせて取るのが本来の投球スタイルだと思っています。社会人に入って2ケタの奪三振率を記録しているとはいえ、高校時代のようにイメージどおりに奪える三振が少なくなり、今はボールを手元で動かして打たせて取る投球にシフトしています。これから対戦するのはプロの打者。三振なんて、そう簡単に取れるものではありません」

 浜屋の出身地である鹿児島県大崎町は、西武がキャンプを張る宮崎・南郷から車で90分ほどの距離にある。小学生時代に所属したソフトボールチームで西武のキャンプを訪れたことがあり、看板選手だった岸孝之や涌井秀章(ともに現・楽天)の投球を食い入るように見ていたという。

 あれから10年が経ち、浜屋は子どもたちから羨望のまなざしを受けるプロ野球選手になった。

 アマチュア時代と同じようにキレ味鋭いボールで奪三振の山を築くのか、それともテクニックを駆使して打者を翻弄するのか。どんなスタイルであれ、チーム防御率最下位からの脱却を目指す西武投手陣にとって、浜屋は大きな戦力になることは間違いない。

著者:加来慶祐●文 text by Kaku Keisuke