中野友加里 1985年8月25日、愛知県生まれ。2010年に現役を引退、社会人生活を送っていたが、昨年から再びフィギュアスケート界での活動を始めた

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日本フィギュアスケート2019-2020総集編(10)

 今シーズン、アリョーナ・コストルナヤ(ロシア)の演技を「4回転ジャンプより衝撃的だった」と言う中野友加里さん。4回転時代を迎えたフィギュアスケートはどこに進むのか。前回の女子に続いて、男子のトップ選手たちのジャンプとスケーティングの技術について語ってもらった。

 4回転ジャンプにおける男子と女子の違いは、ひと言でいえば「高さ」です。女子は「幅」で跳ぶ選手が多いですが、男子では、どちらかと言えば「高さ」がある選手が4回転を跳んでいます。そして以前は、男子の4回転ジャンパーは、少年から青年になって体つきが変わり、筋力が備わって、その力で4回転を跳べるようになるというケースが多かったように思います。今は女子と同様、ジュニアの選手も平気で4回転を跳び始めています。

 鍵山優真選手も佐藤駿選手も、ジュニアながら、高さのあるジャンプを跳んでいます。おそらく先輩スケーターである羽生結弦選手らのビデオを何回も見返したりして勉強しているのでしょう。やはりいいお手本が身近にあるというのは大きいと思います。

 お手本にはなるけど、羽生選手のジャンプは真似しようと思ってもなかなか真似することができないものです。滑らかにスルスルスルっと跳びにいってしまい、プログラムの流れも音楽も壊さない。ジャッジが点数をつけるのを忘れてしまうのではないかと思うぐらいのプログラム構成です。

 私は現役を引退して10年になりますが、実はこの10年の変化ということで一番感じているのは、音楽の解釈、表現面、演技に対するパフォーマンスの能力が高くなったことです。10代からそういったものを磨いている選手が増えたことは、演技構成点が年々上がっていることでもわかると思います。

 スケーティングの技術も向上しています。ルールが変わったことで、スケーティングの技術をプログラム全体の中から取り出して見抜くことが難しい時代になったのですが、厳しいルールにのっとって、つなぎのステップをやりながら、しっかりとスピードを出して、そのなかでジャンプを跳びにいく。基礎となるスケーティングの技術がしっかりしていればこそ、できるのだと思います。

 その点でも羽生選手は第一人者です。

 四大陸選手権のショートプログラム『バラード第1番』は、すべての流れを壊さずに演技全体をまとめるという意味で、すばらしかったと思います。バイオリンよりもピアノのほうが音を拾うのが難しいものなのですが、ピアノの音色を崩さずに、ひとつひとつの要素をこなしていく。そのひとつひとつに見入ってしまう、パッケージ感があるプログラムでした。スケーティングが美しく、ジャンプもすばらしいのですが、それぞれが別個にあるのではないところで高い評価を得ているのだと思います。

 一方、ライバルのネイサン・チェン選手(アメリカ)は、やはり踊りに目を見張るものがあります。アジア系の人はダンスがうまくないと思われがちですが、そんな定評を完全に覆しました。身体がどうなっているんだろうと思うぐらいの細かいリズミカルな動きを、指先まで神経を行き届かせて見せてくれます。それをこなしながら、多種類の4回転ジャンプを跳ぶのが彼の強さでしょう。

 そのジャンプは、ちょっと体操を連想させるところがあります。彼がもともと体操をやっていたことと関係があるのかもしれませんが、腕の締め方などにそれを感じます。

 宇野昌磨選手も、多種類の4回転を跳べることが高得点を出せる原動力です。コーチがいない状態で始まった今シーズンは激動の1年だったと思いますが、もともと持っている能力は高いので、今後も優勝争いに絡んでくるのは間違いありません。

 宇野選手のジャンプは、高さではなく、幅のあるジャンプです。スピードがある選手なので、勢いあまって回りすぎることがありますが、そのスピードをうまく利用して、流れを止めることなく跳ぶことができれば、大きな加点がつきます。スピードが落ちない彼のジャンプは見栄えがして、ジャッジも点数を出しやすくなります。

著者:辛仁夏●文 text by Synn Yinha