里崎智也が語るYouTubeと今季のプロ野球 後編

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、4月24日開幕を目指すことになった今季のプロ野球。いまだ見通しが立たない厳しい状況のなか、各チームは無観客の練習試合を行ない、来たるべき日に向けて調整を進めている。

 開催時期の協議が続いている東京五輪の影響を含め、これまでにない複雑な日程で進むだろうシーズンで、活躍が期待される選手は誰なのか。千葉ロッテマリーンズの正捕手として活躍し、2006年の第1回WBCでも日本代表の世界一に貢献した里崎智也に、注目選手を挙げてもらった。

 前編に続き、聞き手は人気YouTubeチャンネル『Satozaki Channel』でアシスタントを務める袴田彩会(あやえ)アナ。里崎が「奇跡のパートナー」と認める袴田アナがさまざまなことを聞き出すうちに、話は熱い「捕手のリード論」に移っていった。


西武の正捕手として、昨シーズンのリーグ優勝に貢献した森友哉

袴田 前編では『Satozaki Channel』についてお話ししましたが、今回は里崎さんの今季の注目選手について伺おうと思います。今年のキャンプ、オープン戦などを見て、気になった選手はいますか?

里崎 僕の古巣であるロッテから言うと、3年目の安田(尚憲)ですね。昨シーズンはファームで安打、本塁打、打点のイースタン・リーグ3冠王(116安打、19本塁打、82打点)に輝きました。1軍では2018年の17試合しか出ていませんが、今年は出場機会を増やしてほしいです。

袴田 どういった形で起用されそうでしょうか。

里崎 首脳陣が1軍レギュラーでの起用を考えているかはわかりませんが、使うならどこを守るのか。いずれにせよ、僕は若い選手をDHで使うことには反対です。DHに固執してしまうと、ずっとDHでいくしかなくなるので。DHのないセ・リーグの話ですけど、昨シーズンは同期の村上(宗隆・ヤクルト)がファーストのレギュラーを獲得して、36本塁打を打って新人王を獲得しましたしね。

 安田と日本ハムの清宮(幸太郎)、村上は同級生で、3年前のドラフト時の知名度の高さでは清宮、安田、少し離れて村上の順番だったと思います。それが今では、村上、清宮、だいぶ離れて安田に変わりました。村上は絶対的なレギュラーで、清宮も昨シーズンは1軍で81試合に出て実績も残し始めている。安田がそれをどう感じて、どんなプレーを見せてくれるのか楽しみです。

袴田 安田選手をキャンプやオープン戦で見て、里崎さんも「今年はいけるな」という感じがあったんですか?

里崎 開幕前の段階で、シーズンも活躍するかどうかは誰が見てもわかりません(笑)。ただ、巨人の岡本(和真)を2018年のキャンプで見た時のような衝撃はなかったですね。その時の岡本は、フォームのバランス、ミートポイント、スイング、打球の強さ、打球方向がすばらしかった。村田修一(現・巨人2軍コーチ)も球団を離れた年でしたし、「これは花開くんじゃないか。イケるんじゃないか」と思いました。いいスタートを切れるかだけが心配でしたが、開幕から好調で3割30本100打点を達成して大ブレイクしましたね。

袴田 安田選手も、その域に近づいているんですか?

里崎 僕の目から見ると、現時点ではまだまだです。どうしても粗っぽさが目についてしまいます。勢いはあるので、それを失わずに安定感が増してくれば、という希望を込めて名前を挙げました。

袴田 他に、ロッテの注目株を挙げるとしたら?

里崎 やはり佐々木朗希ですね。ここは、袴田さんも想定内でしょ(笑)。

袴田 もちろん、スルーすることはないと思っていました(笑)。

里崎 今シーズンは、少なくとも1回は登板の機会があると思います。まだキャッチボールしか見たことがありませんが、やっぱりポテンシャルはあると感じますよ。ただ、プロで大事なのは「耐久性」と「再現性」。1年間、ケガなく万全の体調を保てるのか。疲れていても自分の持っている力を十分に出せるのか、というところですね。

 そのふたつの能力があるかどうかは、実際にシーズンを戦い抜いてからじゃないと判断ができません。F1の世界でも、工場ではガンガン回って馬力があるように見えるエンジンが、実際にマシンに積んだレースでもそれが再現できるのかはわからないじゃないですか。コーチ陣もその点をよく見極めながら育てていってほしいです。

袴田 ロッテ以外の球団で注目している選手はいますか?

里崎 育成3年目で支配下選手契約を結んだばかりの、ソフトバンクのリチャードでしょうか。生でバッティングを見た時には、まだ荒っぽさがありましたけど、当たったらどこまで飛んでいくのかわからない期待の長距離砲です。

袴田 主力クラスの選手ではいかがですか?

里崎 ソフトバンクの柳田(悠岐)と広島の鈴木(誠也)が、「令和初の三冠王」になれるかに注目しています。柳田はケガさえなければ可能性は高いでしょう。鈴木に関しては、打席に入る前にどれだけランナーを溜められるかですね。昨シーズンは、田中(広輔)が不調だったのをはじめ、3番打者までが十分に機能しませんでした。そこがクリアされたら、三冠王が見えてくると思いますよ。

袴田 三冠王は2004年(当時ダイエーの松中信彦)から出ていませんから、16年ぶりの快挙に期待がかかりますね。次に、里崎さんの専門分野でもある捕手の注目選手を教えてください。

里崎 新星という点ではちょっと見当たりません。昨シーズンを振り返ると、西武の森(友哉)が僕の自論のまんまの活躍をしてくれましたね。僕が考える名捕手の条件は、「打つこと」と「勝つこと」。リードは関係ありません。実際に森は、キャリアハイの23本塁打、打率.329で首位打者を獲得してMVPに輝き、チームのリーグ優勝に大きく貢献しました。

 2年連続でチーム防御率はリーグ最下位ですけど、「リードが悪い」と言ってリーグ優勝捕手の評価を下げられませんよね。この意見に賛同してくれる人は少ないんですが、結果に表れていますから。

袴田 それは『Satozaki Channel』でも何度も主張されていますね。今年の元日に配信した回で、投手の「沢村賞」のように、里崎さんの独自の基準(※)で捕手の「里崎賞」を発表しましたが、その2019年度の受賞者である広島の會澤翼選手も”打つ捕手”のイメージが強いです。
(※)「年間の出場試合数が半分以上」「打席数200打席以上」「本塁打10本以上」「打率2割5分以上」「盗塁阻止率3割以上」「パスボールが3つ以下」「オールスター出場」の7項目

里崎 会澤のリードをとやかく言う人もいますが、リードの良し悪しは勝ったかどうかでしか評価できません。会澤は、石原(慶幸)と併用される時期もありましたけど、2018年までチームをリーグ3連覇に導いた捕手です。2019年にBクラスに落ちたからといって、その実績を無視してリード批判をするのはナンセンスですよ。

袴田 捕手は結果で評価をすべき、ということですね?

里崎 そうでなければ、「0−10で負けたけど、今日は投手が悪かった。リードは抜群だった」、もしくは「ノーヒットノーランで勝ったけど、これは投手の力。リードはポンコツだった」という意見が出てこないとおかしい。でも、そんなことを言う人は絶対いませんよね。

 捕手にも、勝つ以外の評価基準を設けてほしいんですよ。投手のクォリティースタート(先発投手が6イニング以上を投げて、自責点3点以内に抑えた記録)のように、捕手が何回マスクを被って何失点ならOKといったような。

袴田 ただ、里崎さんはリードを批判してはいけない、というわけではなく、それには勉強が必要だともおっしゃっていますね。実際に昨年9月くらいから、「捕手のリードを批判するなら勉強してね!」という動画も5本配信しました。

里崎 その動画でも言いましたけど、前提として「配球」と「リード」は別です。打者の得意なコース、球種別の対応、打球方向の特徴など、あらゆるデータに基づいて事前に決める攻め方が「配球」。だから、まずはどの打者が打席に入っても、「このコース、この球種が有効」といったことがパッと出てくるように、データが頭に入っていないといけない。

 それでも、実際の試合ではその「配球」どおりに投げても打たれる場合と、「配球」とは違っても抑えられる場合がありますよね。それが捕手の「リード」なんです。実際に対戦して、「今日は得意なコース、球種のボールにタイミングが合っていないな」といった判断をして、それを要求できるかどうか。映像でも、よく見ていれば打者の反応はわかるので、ファンの方もそこを見極められるようになったら、「なんで今日のこの打者に対して、このボールを要求したのか」というリード批判をしてもいいと思いますよ。

袴田 でも、さすがに12球団全員の打者の傾向を頭に入れるのは……。

里崎 確かにプロ仕様でしたね(笑)。ならば、自分が応援しているチームの打者、スタメンの選手の特徴だけでもしっかり頭に入れてほしいです。その上で、打者の調子や打席ごとの変化などを見抜いて、他チームの捕手のリードに疑問を持つことができたら、初めて”一人前”だと思います。

袴田 なるほど。私も今シーズンは「配球」を勉強して、捕手の「リード」に気づけるよう注目して試合を見ようと思います!

著者:寺崎江月●取材・文 text by Terasaki Egetsu