「平均点の高い馬」

 GI高松宮記念(3月29日/中京・芝1200m)における有力馬の一頭、ダノスマッシュ(牡5歳)について、関西の競馬専門紙記者はそう評した。

 なるほど、言い得て妙である。

 スピード、瞬発力、それに精神面も含めて、A級馬としての優れたものは備えている。ここまで重賞4勝と結果を残しているのも、その優れた能力ゆえだろう。


悲願のGI制覇を狙うダノンスマッシュ

 だが、それほどの能力を持ちながら、GIでは結果を出せていない。この馬が最も得意とするスプリントGIでも、だ。

 昨年の高松宮記念と、GIスプリンターズS(中山・芝1200m)で、ダノンスマッシュは、いずれも単勝2倍台の1番人気に支持された。しかしながら、高松宮記念は4着、スプリンターズSは3着と、期待に応えられなかった。

 高松宮記念では、最後の直線で、一瞬「伸びるか」と思わせながら、結局伸び切れずに屈した。スプリンターズSでは、最後にものすごい勢いで伸びてきたが、すでに勝負が決したあとだった。

 GIIIでは鮮やかな勝利を飾るのに、GIではその”鮮やかさ”が影を潜め、逆に”もどかしさ”が目立ってしまう。

 よくGIを勝つ馬とは、「どう乗っても勝てる」という強い馬か、そうでなければ、スピードにしろ、瞬発力にしろ、能力的に何かひとつ、「抜けている」と感じさせるものを持っている馬、と言われている。

 その点、ダノンスマッシュは、A級馬としての要素を万遍なく持っているものの、反面、どれひとつとして”抜けている”というほどのものは持っていない。

 ゆえに、GIに手が届かない、いわゆる”GI級”に甘んじている、ということなのかもしれない。

「平均点が高い」――というのは、競走馬にとって、必ずしも褒め言葉とはならないのである。

 まもなく行なわれる高松宮記念。ダノンスマッシュには”3度目の正直”が期待されているが、その見通しは、決して明るいとは言えない。

 前走では、GIIIオーシャンS(3月7日/中山・芝1200m)であっさり勝利を飾っている。ただし、レース間隔や舞台は別として、前走でGIII戦を快勝して、勇躍GIへというステップは、昨年の高松宮記念、スプリンターズSと同じ。GIIIの”快勝”が、GIの結果に結びつかないのが、この馬なのである。

 それでも、望みがまったくないわけではない。先の専門紙記者が言う。

「昨年の高松宮記念は、ミスターメロディが勝ちましたが、能力的なものだけでなく、馬場とか、枠順とか、能力以外のさまざまなものが味方をしたレースでした。内枠が有利の馬場で2枠3番という好枠を引いて、道中もずっと、馬群の内でうまく立ち回っていた。それが、最後の伸びにつながりました。

 片や、ダノンスマッシュは7枠13番と外側の枠を引いて、終始外、外を回らされた。ミスターメロディと枠順が逆であれば、結果は違っていたかもしれません。

 今年も、上位何頭かの実力は拮抗。混戦模様にあります。ダノンスマッシュも、昨年のミスターメロディのように、あらゆるものがうまくかみ合えば、勝っても不思議ではありません」

 ダノンスマッシュの鞍上は今回、三浦皇成騎手が務める。

 この騎手もまた、若くして頭角を現し、その腕は高く評価されているが、いまだGI勝利はない。2着が2回、3着が7回と、惜しいところで終わっている。

 GIを勝てそうで勝てない馬と騎手。期待するのは、このコンビがターフで引き起こす”化学反応”か。

著者:新山藍朗●文 text by Niiyama Airo