東京五輪世代
ポジション別スター候補(1)
ゴールキーパー


スペインU―23代表のウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)

 世界的な視点に立つと、オリンピックのサッカーは微妙な位置づけになる。世界最高峰の戦いはあくまでワールドカップ。そこで五輪は、「U―23にオーバーエイジ枠3人」という出場条件で、着地点を見つけた。しかしFIFA主催ではなく、実は選手に対する拘束力もない。”若手の最高峰を決める大会”という位置づけだとしても、南米やヨーロッパにおける”ユース年代”は20歳、もしくは21歳以下までを指す。

 また、東京五輪にどのような選手が世界から集まるのか、それは現時点ではまったくわからない。新型コロナウイルスの影響で不透明という面も多分にある。サッカー界も、かつてない不穏な状況にあるのだ。

 しかし、だからこそ、現時点でU―23(東京五輪は1年延期で、U―24の大会になる)の若手たちが、これからのサッカー界の希望とも言える。五輪では開催国の日本、ヨーロッパのスペイン、フランス、ドイツ、南米のブラジル、アルゼンチンなどの新鋭がしのぎを削ることになる。

 アフターコロナに輝けるプレーを見せる選手とは――。ポジション別に、東京五輪世代の最有力若手選手を分析しよう。

 優れたゴールキーパーは、強いチームとイコールで結ぶことができる。

 今シーズンのチャンピオンズリーグでベスト16に進んだチームは、いずれも世界トップクラスのGKを擁する。リバプール(アリソン)、バルセロナ(マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン)、レアル・マドリード(ティボー・クルトワ)、アトレティコ・マドリード(ヤン・オブラク)、バイエルン(マヌエル・ノイアー)、パリ・サンジェルマン(ケイロル・ナバス)、ユベントス(ヴォイチェフ・シュチェスニー)などだ。

 かつてスペイン代表のイケル・カシージャス、イタリア代表のジャン・ルイジ・ブッフォンの2人は、代表ではもちろん、それぞれレアル・マドリード、ユベントスのGKとして覇権を争った。

「GKが天職だと思ったから、FWに嫉妬したことはない」

 そう語っていたカシージャスは、優れたGKの資質をこう答えていた。

「自分の場合、何が起こっても動じず、落ち着いて見える空気を意識的に出そうとしてきた。GKも人間だからミスはあるが、泰然として振る舞う姿を、敵にも味方にも見せる。さもなければ、付け込まれるからだ。ディフェンスのミスにしても、試合中に愚痴ってもプラスにならない。GKは自分の感情を制御し、素早く次の守りに集中することが大事だ」

 もっとも、その境地に達するのは時間が必要だろう。GKはルーキーには厳しいポジションだ。経験がものをいうだけに、若い選手は未熟さが出てしまう。事実、年を取ってから円熟味を感じさせるGKは多い。

 東京五輪への出場予定国で、GKとしての優れた資質を感じさせる選手が2人いる。

 ひとりはスペインU―23代表のウナイ・シモン(22歳、アスレティック・ビルバオ)だ。

「(正GKだった)ケパ(・アリサバラガ)を売却(チェルシーへの移籍金は約100億円とされる)しても困らない」

 ビルバオの関係者には、その算段があったという。昨シーズンまでセカンドGKだったシモンが、今シーズンはレギュラーとして好守を連発している。泰然自若とし、不必要に動かず、正しいポジションを取れる。大きな体躯だが、反応は俊敏。間合いを詰めるスピードも素早く、倒れた後の回復動作も速い。

 今シーズン第26節、ビジャレアル戦で見せたセービングは、実にシモンらしかった。至近距離からのシュートに対して、少しも恐れず、両手を大きく広げ、全身を壁とし、最後は顔面で守り切っている。顔を正面に向け、頑なに背けず、そこをボールがかすめてシュートが逸れる。これに似たシーンはいくつも見られ、鉄の度胸と勇敢さで、ゴールに立ちはだかっている。

 もうひとりは、フランスU―23代表のアルバン・ラフォン(21歳、ナント)だろう。

 2015−16シーズン、ラフォンはトゥールーズで、リーグアン史上最年少の16歳310日でのデビューを飾った。GKにとって10代でプロ経験を積むのは難しいことだが、才能が突出している証左だろう。3シーズン、レギュラーとしてプレー。昨シーズンはセリエAのフィオレンティーナに移籍し、正GKとしてゴールマウスを守ってさらに成長した。

 ただ、今シーズンは同年代のポーランド代表GKバルトウォミェイ・ドロンゴフスキ(22歳)が復帰し、チーム内でのポジション争いが激化。そこで、期限付き移籍でナントへ新天地を求め、着実に試合数を重ねている。

 ラフォンは身長193cmと大型で手足も長く、リーチを生かしたゴールキーピングを見せる。パワーも満点で、パンチングは確実にリスクを回避。指先でコースを変えるような神がかったプレーで失点を防ぐシーンも少なくない。

 2人のほか、この世代には前述したラフォンのライバル、GK大国ポーランド出身のドロンゴフスキ、レアル・マドリードがパス(保有権)を持つウクライナ代表アンドリー・ルニン(21歳、スペイン2部オビエド)、有力クラブが食指を伸ばすブラジルのイバン(23歳、ブラジル2部ポンチ・ブレッタ)らがいる。イバンはブラジルU―23代表で、東京五輪が移籍への足掛かりになるかもしれない。

 シモン、ラフォン、イバンはともに身長190cmを越える。にもかかわらず、蜘蛛のように俊敏に動くことができる。GK大型化の流れはますます進みそうだ。




著者:小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki