4月中旬から、練習を再開しているドイツ・ブンデスリーガ。リーグ再開に向けて、行政からの指導どおりに各クラブが少人数で、対人距離を確保できるトレーニングを行なっている。4月30日には、アンゲラ・メルケル首相を含む政府や各州の州首相らが会議を開き、ブンデスリーガの再開決定は5月6日に持ち越されたことも伝えられている。だが、1部、2部の選手、スタッフに行なわれた検査で、10人に陽性反応が出るなど、予断を許さない状況だ。


練習再開に動いているブンデスリーガ。写真はバイエルンのトレーニングの様子

 リーグ戦の再開が現実味を帯びてくるなか、デュッセルドルフやアウクスブルクが、規則破りの1対1を含むトレーニングを行ない、ほかのクラブから批判を浴びるなど、徐々に勝敗を意識するクラブも出てきているようだ。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、経済的にも将来の見通しが立たず、融資を必要とするクラブが複数あることも伝えられている。こういったなか、現在の日本人選手たちの所属クラブのこの1カ月の動向はどうだったのだろうか?

 もっとも明るい話題となったのは、遠藤航のシュツットガルトへの完全移籍だろう。4月28日には、自身からもSNSを通じて発表している。

 今シーズン序盤は出場機会に恵まれなかったが、クラブ内で大きな発言力がある元ドイツ代表マリオ・ゴメスが「(遠藤は)チームのベストプレーヤーのひとり」と評価し、推薦したことでチャンスを掴んだ。アンカー、ダブルボランチの一角、サイドバックやセンターバックでも起用され、欠かせない選手として評価を上げていた。

 チームは、4月から6月まで選手の給料の30%にあたる300万ユーロ(約3億6000万円)カットに同意し、クラブスタッフの給与にあてがわれている。そのなかで、遠藤の170万ユーロ(約2億円)の買取オプションの行使に至ったということは、クラブ側も来季以降の活躍を確信していると読み取れる。そして、現在ブンデスリーガ2部で2位のシュトゥットガルトは、昇格すればカットされた給与の20%が各選手に支払われるそうだ。

 フランクフルトの鎌田大地と長谷部誠も、比較的ドイツメディアに名前が取り上げられた選手だ。

 鎌田は、ヨーロッパリーグ(EL)でのハットトリックの活躍もあり、フランクフルト屈指のテクニシャンとしての地位を固めつつある。その一方で、彼が自分自身について話すことは少なかった。そのため、4月上旬にクラブの公式インタビューが出ると、地元メディアにも鎌田の人となりを伝える記事が取り上げられ、家族思いの一面なども紹介された。

 今季を振り返りながら、鎌田は「プロキャリアで、ここまで試合が多かったシーズンは経験したことがなかったので、身体的にも成長できました」「まだ欧州サッカーに慣れてきたと言うには早すぎますが、よい方向に進んでいると思います」と語り、手応えを掴んでいるようだ。

 一方、これまでチームの主力として活躍してきた長谷部は、今夏で契約が切れるため、去就が取り沙汰されている。「1年契約を延長」と報道されたり、引退の可能性を伝えるドイツメディアもあるなか、5月2日には、フランクフルトの公共放送局が行なっている『フランクフルトの2000年代のトップ20』の9位に長谷部が選ばれた。このランキングは、『ビルト』『キッカー』『フランクフルター・アルゲマイネ』など、各メディアのフランクフルトの番記者が選出する。

 長谷部は、1部残留やポカール(ドイツカップ)優勝、ヨーロッパリーグ準決勝進出など、近年のハイライトの中心にいたひとりだ。とりわけ、リベロとして正確無比なパスワークでチームを牽引した姿が取り上げられている。クラブの歴史に足跡を刻んだ日本人として、人々の記憶に残りつづけるはずだ。

 フランクフルトは資金繰りに困っている話題は出ていないが、4月から6月30日まで、選手、監督および責任者たちの給与の20%カットが決まっている。

 また、度重なるケガを乗り越えてピッチに戻って来た喜びをドイツメディアに取り上げられたのは、ザンクトパウリの宮市亮だ。4月15日に地元メディアの記者陣とのインタビューに答えている。今季は大きなケガもなく、攻撃陣で不動の地位を築いた。

 武器であるスピードもチーム内外で広く認知されていて、今季はすでに7アシストを記録。だが、ゴールはわずか1得点にとどまっており、本人にとっても気になる点だったようだ。

 宮市は、現在の少人数のトレーニングでほかの攻撃陣と共にシュート練習が多く組まれるグループに割り当てられており、「ゴール前でのプレーを改善するために時間を使えている」とシーズン再開へ具体的なイメージを掴めている様子を見せた。

 今季の安定した活躍で、新型コロナウイルスの影響にも関わらず市場価格を60万ユーロ(約7200万円)から80万ユーロ(約9600万円)まで上昇させた宮市。契約は2021年まで残っており、クラブも移籍させる意思はないようだ。

 こちらも、チームは4月27日に6月30日までの給与のカットで経営陣と合意。カットの額は選手によって異なり、高額の給与を受け取っている選手は最大で30%カットされる見込みだ。

 ハノーファーの原口元気は、昨年11月にケナン・コチャック監督が就任して以来、絶大な信頼を得ている。成績こそすぐに上がらなかったものの、チームが改善に向かっているのは見てとれた。4月21日には、同監督が2023年まで契約を延長。原口自身とチームの調子が継続して上がっていけば、原口は不動のレギュラーの地位を維持できそうだ。

 3月下旬、新型コロナウイルス陽性反応の選手が出たことで、選手は2週間の自宅待機となった。その間、クラブの公式サイトでは14人の選手に1日ずつその日の様子をインタビューする企画があり、原口は最終日に登場。トレーニングのほかは家族と過ごし、英語の勉強などに時間を費やしていることを話した。

 ハノーファーの選手や監督、首脳陣たちも給与カットでクラブと合意している。4月から6月までの給与を最大20%、合計でひと月あたり30万〜40万ユーロ(約3600万〜4800万円)の給与をカットする。ここで節約された全額が、クラブスタッフの給与として支払われる。

 現在、最も厳しい立場にあるのはブレーメンの大迫勇也だ。昨季までエースとして君臨したマックス・クルーゼの後釜として、攻撃陣を牽引する役割が期待されていたが、今季はリーグ戦4ゴール。それだけに、得点不足で降格圏(18チーム中17位)にいる現状のスケープゴートとされている面もある。

 昨年9月中旬、大迫が太モモのケガで6週間戦列を離れると、チームの成績は一気に停滞した。12月にはバイエルン戦の1−6の大敗を含む4連敗。残留争いから脱出することが難しくなった。後期に入ると大迫はスタメンの座から外れてしまい、ポカール3回戦のドルトムント戦で輝きを放っただけだ。

 もともと、資金的に余裕がないブレーメンは、コロナ禍がなくとも降格の際には経営規模の縮小を計画していた。そういったなかで代表クラスの主力選手の大量移籍の可能性も報じられており、大迫もそのリストに入っているようだ。

 クラブはすでに融資を受ける準備を進めており、仮に今シーズンが中止になったとしても、今年の秋までは給与などの経費を支払える状態にあるという。それに加えて、具体的な数字は明らかにされていないが、選手、監督、首脳陣は給与カットに同意している。

 チームに残るにしろ、他クラブからのオファーを待つにしろ、大迫にはチームを勝利に導き、残留に貢献することが求められる。リーグ再開後に悪い流れを断ち切れるかどうかが、今後のキャリアの明暗を分ける。日本代表を救ってきたアタッカーの真価が問われる数カ月になるだろう。

著者:鈴木達朗●文 text by Suzuki Tatsuro