東京五輪世代
ポジション別スター候補(8)
セカンドストライカー

 かつて、「背番号10」というポジションがあった。FWの背後で自由に華麗にボールを運び、鮮やかにラストパスを送る。有り余る才能が故に、守備や規律から解放される、聖域的ポジションだ。しかし戦術の革新は、その権威をはく奪した。

「規律正しく動き、守備に参加し、周りを補助し、組織の一員となれ」

 そんな指示は、背番号10の流儀とは相いれなかった。そういう意味で、アルゼンチンのフアン・ロマン・リケルメは、最後のナンバー10と言えるかもしれない。戦術と折り合いをつけるのは難しく、指揮官と衝突することもしばしばだった。しかし、ひとたびゾーンに入ると、時代を画すような技巧の数々を見せたのだ。

 ただし、彼らは絶滅したわけではない。


スペインU−23代表のミケル・オジャルサバル(レアル・ソシエダ)

 0トップ、もしくはセカンドストライカーという形で、生き残っている。ファンタジスタでありながら、ストライカーとしての才覚に恵まれ、フィジカル、タクティクスの両面で順応できる。元イタリア代表のフランチェスコ・トッティはその第一人者だった。前線のプレーメーカーとしてダイナミックな攻撃を可能にし、屈強を見せながら、決定力も誇った。

 リオネル・メッシも、0トップの”有段者”のひとりだろう。走行距離は極端に少ないが、ピッチのどこにいても適応できる。右サイドをスタートポジションに、中盤に落ちてゲームをつくる形が多いが、自分に人を集め、左サイドを一気に破るパスは絶品で、ジョルディ・アルバとのコンビネーションは出色。何より、シーズン50得点は問答無用である。

 フランス代表のアントワーヌ・グリーズマンも、前線でドリブル、パス、シュートとあらゆる点でクオリティの高さを見せる。しかも彼は走力に長け、守備のスイッチも入れられる。戦術適応力の高さで独自のポジションを作っている。

 東京五輪世代で、「背番号10」を革新させる選手とは――。

 スペインU−23代表の0トップとしてプレーするのが、ミケル・オジャルサバル(22歳、レアル・ソシエダ)だ。

 オジャルサバルは、得点力とプレーメイクセンスの両方を兼ね備える。左利きでテクニカルなプレーは持ち味のひとつだが、ファンタジスタにありがちな脆さはない。筋骨隆々で下半身の重心が安定し、コンタクトプレーの中でも技術を出せる。

「必ず、世界に出る選手だ。身体的に強いだけでなく、ピッチの中で生きる賢さを持っている」

 レアル・ソシエダで20年以上、育成部長、強化部長、セカンドチーム監督、戦略担当などを務めたミケル・エチャリは、オジャルサバルが18歳でトップデビューを飾る前から太鼓判を押すほどだった。

 リーガ・エスパニョーラで、オジャルサバルは2017−18シーズンが12得点、2018−19シーズンが13得点、そして今シーズンは11試合を残してすでに8得点と、着実にゴール数を増やしてきた。スペイン国王杯ではレアル・マドリードを打ち負かし、決勝に進出する躍進に貢献。大きく羽ばたく直前だ。
 
 東京五輪には参加しないが、ポルトガル代表ジョアン・フェリックス(20歳、アトレティコ・マドリード)は、現代版の「背番号10」の典型と言える。密集地帯でも、平然と優雅なボールプレーを見せる。単純にコントロール&キックに優れ、相手の裏をかくアイデアも豊富。そのうえで、昨シーズンは10代にしてポルトガルリーグで15得点を記録するなど、仕留める力がある。

 今シーズンはベンフィカからアトレティコに移籍し、守備への要求のせいか、真価を発揮するには至っていない。しかしカウンターを発動する姿は圧巻。ボールを持ち上がり、駆け抜ける姿は美しく、ひとりでゴールまで持ち込める。

「まだフィジカル的な課題を残している」

 ディエゴ・シメオネ監督はそう言う。課題は90分間、あるいは連戦をやり切る体力面か。

 日本人で0トップとしての適性を持っているのはリバプールに移籍した南野拓実だろう。細身に見えても体は強く、コンタクトの中で入れ替わって、シュートまで持ち込むパワーがある。また、クロスでボールを呼び込む感覚も抜群で、背は高くないが、ヘディングでゴールも狙える。特筆すべきはシュートを打つ意志で、その猛々しさは森保ジャパンでも際立つ。

 南野は東京五輪世代ではないが、オーバーエイジ枠で招集するのもひとつの手かもしれない。

 南野に近いのが、西川潤(18歳、セレッソ大阪)だろう。アンダー世代では、存分に非凡さを示している。バルセロナが触手を伸ばすのも、なんら不思議ではない。左利きのアタッカーとして、日本人では久保建英(18歳、マジョルカ)に次ぐ才気だ。

著者:小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki