2020年クラシック候補たち
第15回:アブレイズ

 競走馬の生産牧場として、過去に2頭のダービー馬を出しているノースヒルズ。今年も、3歳牡馬クラシック第1弾のGI皐月賞(中山・芝2000m)を制したコントレイルを送り出し、3頭目のダービー馬輩出なるか、大きな注目を集めている。

 そのノースヒルズから、今年は3歳牝馬クラシック、GIオークス(5月24日/東京・芝2400m)での戴冠を狙える馬が出てきた。栗東トレセンの池江泰寿厩舎に所属するアブレイズ(牝3歳/父キズナ)である。


フラワーCを快勝し、オークスに挑むアブレイズ

 年明けの3歳になってから、それも今からおよそ3カ月前にデビューしたばかりの同馬。3歳牝馬にしては珍しく、初陣は2000m戦の3歳新馬(2月2日/京都・芝2000m)に臨んだ。

 牡馬混合のレースだったが、アブレイズはその一戦を難なく勝利。好スタートから5、6番手を追走し、直線では逃げ馬の外に持ち出すと、力強く伸びてゴール板を先頭で駆け抜けた。

 デビュー戦とは思えないような、鮮やかなレース運びで快勝したアブレイズは、2戦目でいきなり重賞に挑戦。GIIIフラワーC(3月20日/中山・芝1800m)に出走した。

 外枠発走ながら、ここでも積極的に出ていって好位2番手につけると、直線入り口で早め先頭に立った。前半1000mが1分を切るタイトなレースだったが、鞍上の藤井勘一郎騎手のゴーサインにしっかり反応。急な坂もグイグイと駆け上がっていって、そのままトップでフィニッシュした。

 他の馬たちも後方から一気に仕掛けてきたが、アブレイズの脚は最後まで鈍ることはなかった。4分の3馬身差という着差以上の強さを見せつけての、見事な重賞制覇だった。

 デビュー2連勝を遂げたアブレイズはその後、牝馬クラシック一冠目となるGI桜花賞(4月12日/阪神・芝1600m)はパス。オークス一本に絞って調整され、無敗のまま大舞台での栄冠獲得を目指すことになった。

 そんなアブレイズについて、厩舎スタッフたちも高く評価している。なかでも、ストロングポイントとして強調するのは、レースセンスの高さだ。その点について、関西競馬専門紙のトラックマンが詳しく伝える。

「陣営は、とにかくアブレイズのレースのうまさを絶賛。『スタートがよくて、すんなり2、3番手につけられるのが強み』と話しています。

 また、若駒の場合、スタートで前に行こうとすると、勢いがついて引っかかってしまうことが多いのですが、同馬は『先行しても、すんなりと折り合える』とのこと。まだ子どもで、フワッとした部分も残っているようですが、逆にそれがプラスに作用して、レースで引っかからない要因になっているとか」

 関東への長距離輸送については、前走ですでに経験済み。カギになるのは、初体験となる2400mの距離だが、陣営はそれについても、さして心配はしていないようだ。先述のトラックマンが続ける。

「折り合いがつきますし、これまでのレースで見せた走りからも、『距離は大丈夫だと思う』とスタッフ。左回りについては未知数ですが、父キズナ、母父ジャングルポケットという血統から、東京・芝2400mという舞台への適性は高そうです。(陣営としては)不安よりも、楽しみのほうが大きいのではないでしょうか」

 翌週のダービーに挑むコントレイルの前に、アブレイズが生産牧場ノースヒルズに初の牝馬クラシックのタイトルをもたらすのか。大いに注目である。

著者:河合力●文 text by Kawai Chikara