厳選!2歳馬情報局(2020年版)
第2回:アークライト

 関東のトップトレーナーとして、長年活躍してきた藤沢和雄調教師。たくさんの名馬を育て上げ、GIタイトルも数多く手にしてきた。

 タイキシャトルでは、フランスのGIジャック・ル・マロワ賞(フランス・芝1600m)を制覇。ゼンノロブロイでは、GI天皇賞・秋(東京・芝2000m)、GIジャパンC(東京・芝2400m)、GI有馬記念(中山・芝2500m)を制して、「秋の古馬三冠」を達成した。

 そして、レイデオロでついにGI日本ダービー(東京・芝2400m)を勝利。悲願のダービートレーナーとなった。

 そんな名伯楽が、再来年の2月には70歳の定年を迎え、引退することなる。つまり、今の2歳世代がクラシックに挑む最後の世代となるわけだが、藤沢調教師が花道を飾るに相応しい期待の素質馬がふんだんにいる。なかでも、6月中のデビューに向けて調整されている1頭が、大きな注目を集めている。

 アークライト(牡2歳/父ディープインパクト)である。


姉ハープスターと同様の活躍が期待されているアークライト

 同馬が脚光を浴びるのは、7つ上の姉にハープスターがいるからだ。

 ハープスターは、新馬戦、GIII新潟2歳S(新潟・芝1600m)と、強烈な末脚を繰り出して2連勝。一躍「クラシック候補」と騒がれた。

 その後、断然人気となったGI阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神・芝1600m)では惜しくも2着に敗れるが、年明けの前哨戦、GIIIチューリップ賞(阪神・芝1600m)を圧勝。単勝1.1倍という人気に見事に応えた。

 迎えたクラシック第1弾、GI桜花賞(阪神・芝1600m)でも単勝1.2倍という圧倒的な支持を得た。そして、その人気どおりの圧巻の走りを見せつけた。18頭立ての最後方からレースを進めながら、直線に入って驚異の切れ味を披露。強豪ライバルたちを蹴散らして、一冠目を手にした。

 続くGIオークス(東京・芝2400m)では、ヌーヴォレコルトにクビ差及ばず、2着に敗れた。それでも、夏場のGII札幌記念(札幌・芝2000m)では、3歳牝馬の身でありながら、当時古馬最強だったゴールドシップを一蹴。あらためて能力の高さを証明した。

 そうして、秋には日本の3歳牝馬としては、異例の挑戦を果たす。世界最高峰のレース、GI凱旋門賞(フランス・芝2400m)に臨んだ。結果は6着に終わったが、ともに挑んだ日本馬の中では、最先着を果たした(ジャスタウェイ=8着。ゴールドシップ=14着)。

 以降は勝ち星に恵まれなかったものの、鋭い末脚で多くのファンを魅了したハープスター。その全弟となるアークライトへの期待が高まるのも無理もない。

 アークライトは、すでに藤沢厩舎に入厩し、デビューへ向けての準備を重ねている。同馬に関わるスタッフの感触はどうなのか、関東競馬専門紙のトラックマンがその様子を伝える。

「初陣は、6月21日の2歳新馬(東京・芝1600m)か、27日の2歳新馬(東京・芝1800m)になりそうです。馬体重が530㎏ほどと大きい馬ですが、『乗り込みは順調』とのこと。『見栄えのいい馬体で、パワーに秀でたタイプではないか』とスタッフは話しています」

 牧場時代からもともと評価の高かった1頭。当然、デビュー戦では人気を背負うことになるだろうが、スタッフからはこんな声も聞こえるという。先述のトラックマンが続ける。

「パワータイプのため、『まだビュッと切れる脚を使うイメージが湧かない』とのこと。この時期の新馬戦は、スローの瞬発力勝負になりがちですが、その展開にどこまで対応できるのか、少し不安そうでしたね。現状、少し体を持て余して走っている部分もあるようで、調教を重ねてどう変わるのか、注視したいと思います」

 まだ良化途上の段階という印象だが、血統や素材のよさを考えれば、能力があることは間違いない。調教を進めていくことで、急速な成長も望めるはず。実戦となれば、姉譲りの切れ味を発揮してもおかしくない。

 そもそも名伯楽・藤沢調教師も期待する1頭である。姉同様、クラシックを騒がせる存在となるのか、デビュー戦での走りに注目したい。

著者:河合力●文 text by Kawai Chikara