5月中旬、第26節から再開したブンデスリーガ2019−20シーズンは、1試合を残すのみとなった。

 約2カ月間の中断期間をはさんでも、大迫勇也の所属するブレーメンの調子は上向かず、絶体絶命のピンチのまま最終節を迎える。順位は自動降格圏の17位。6月27日の最終節はホームでのケルン戦となる。

 現在16位(ブンデス2部3位との入れ替え戦進出)のフォルトゥナ・デュッセルドルフとの勝ち点差は2で、得失点差は4下回っている。つまり自力での残留はなく、ケルンに勝利したうえで、同時刻に行なわれるフォルトゥナ対アウクスブルクの結果に運命を託すことになる。


前節マインツ戦では今季6点目のゴールを決めている大迫勇也(ブレーメン)

 大迫は、再開直後の5月中の3試合は途中出場だったが、6月に入ってからは、ここまで5試合で先発。第31節パーダーボルン戦に続き、前節のマインツ戦でも得点を挙げている。

 そのマインツ戦、ブレーメンの専門サイト『ダイヒシュトゥーベ』は大迫にチーム内最高の2.5点(1〜6で最高が1)をつけ、「(フロリアン・)コーフェルト監督からの賞賛を確認することができた」と評した。最終節の対戦相手が大迫の古巣ケルンだということもあり「頼れるのは大迫だけ」とも書いている。

 そのケルンは2017−18シーズン、1部最下位に沈んで2部に降格。当時、大迫はブレーメン移籍を早々と発表し、落ち着いた状態でロシアW杯に臨んだ。ロシアで活躍できたのは、次のチームを決めるためにアピールしなければならないという精神的なプレッシャーから解放されたこともひとつの要因だったと、本人が認めている。

 今シーズンのケルンは当時とは違い、1部残留をすでに確定させているが、大迫にとっては大事な最終節を因縁のチームと戦うことになったわけだ。

 仮にブレーメンが敗れて2部に落ちた場合、大迫は移籍が濃厚だとされている。クラブは深刻な財政難に見舞われており、年俸の高い選手は抱えておけないという事情がある。

 今季の大迫はここまで6得点。大迫にとっては、ケルン時代の2016―17シーズンに7得点挙げているのがドイツでの最多得点で、それに迫る数字ではある。振り返れば、この6月を含め、好調な時期もあった。とはいえ、この得点数が示すように、シーズンを通してチームを牽引する存在だったとまでは言えないのも事実だ。

 もっとも、チームには他にこれといった得点源がなく、ミロト・ラシカの7得点に次ぎ、ダフィ・クラーセンと大迫がチーム内2位の得点数。そしてこれこそ、ブレーメンの得点数がリーグで下から2番目の36点にとどまっている原因だろう。

 今季の大迫は、シーズン前半戦が終わるころから、メディアやサポーターの批判にさらされてきた。必要な時に得点できず、丁寧なプレーがどこか消極的に見えることもあったのかもしれないが、その執拗さは奇異に映るほどだった。

 雲行きが怪しくなり始めたのは、12月8日の第14節パーダーボルン戦からだ。0−1で敗れたこの試合で、大迫は58分に交代。『ダイヒシュトゥーベ』には「屈強なディフェンダー相手の対人プレーに問題がある」と、いかにも日本人への紋切り型と思える批判が載った。

 ここからチームはバイエルンに6−1、マインツに0−5、ケルンに1−0と4連敗。この間、大迫に対して『ダイヒシュトゥーベ』は「頑張ったがほとんど競り負けていた」「機能していない」、地元紙『ヴェザークーリエ』も「プレーもままならない。ボールロストが多い」と戦犯扱いだった。

 ただ、大迫本人はそういった地元メディアにほとんど目を通さず、気にしていなかったようだ。試合後のミックスゾーンで、日本の記者から、地元メディアで批判されていることを前提にした質問が飛んでも、「そもそも何も知らないので」と、どこ吹く風だった。海外でプレーするなら、メディアの批判をいちいち気にしてもメンタルがもたなくなるだけ。動じない大迫を見て、胸をなでおろしたものだ。

 再開後は2得点したこともあり、メディアの大迫への評価、信頼は上がっている。第32節は、すでに優勝を決めていたバイエルン相手に0ー1で敗れたが、『ダイヒシュトゥーベ』は大迫をベストプレーヤーに選んでいる。

 同時にその記事は、ネット上で大迫への中傷が尽きないことにも言及している。それらは「なぜ使われ続けるのかわからない」「耐えられない」「さよなら」といった感情的なものだった。

 同サイトによれば、ネット上で大迫へ不当な評価が下されていることは、コーフェルト監督も把握しているのだそうだ。コーフェルト監督はバイエルン戦後、それに対して「その評価を変えたい」と言い、オンラインカンファレンスでは「彼がどれだけ前線で仕事をしたか。一切、文句はないよ」と話している。

 意気に感じるくらい、指揮官はシーズンを通して大迫への信頼を口にしてきた。ケルン戦で、古巣相手に活躍してその信頼に応え、根深い批判を蹴散らすことができるか。チームを入れ替え戦に導く大迫の活躍に期待したい。



著者:了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko