広島期待のドラフト1位ルーキー・森下暢仁が、6月21日にプロ初登板となるDeNA戦で7回無失点8奪三振の衝撃デビューを飾った。はたして森下は”ホンモノ”なのか。森下のピッチングは5人の解説者の目にどのように映ったのだろうか。


プロ初登板で7回無失点と好投した広島のドラフト1位ルーキー・森下暢仁

◎森繁和氏

 第一印象は、まとまっているなということです。自滅するイメージが湧かないから、首脳陣にしてみれば、試合をつくってくれるという安心感はあると思います。これまでも広島は大卒の即戦力投手を積極的に獲得してきましたが、森下も彼らと同じ系譜で、1年目から結果を求められるでしょうね。

 ピッチングを見て思ったのは、同じ明治大出身の中日の柳(裕也)のように、タテのカーブが効果的で、上体を反らしながら投げるから腕が真上から出てくる。

 バッターというのは、横の変化にはある程度対応できるのですが、タテの変化は距離感の取り方が難しく、すごく苦労します。森下は真上から投げ下ろし、しかもタテの変化球が得意ですので、バッターからすればものすごく厄介な投手です。

 ただひとつ、個人的に気になるのが左手(グラブをはめた手)の使い方。投げる時に固定していて、うまく使えていない。それでもあれだけのボールが投げられるのは彼の才能だと思うんだけど、もっと左手は暴れてもいいと思う。

 おそらくコントロールを重視して、この投げ方にしていると思うのですが、全体的にまとまりすぎて、打者に与える恐怖心がないような気がします。だから、もうちょっとだけでいいので、荒っぽい投げ方にしてもいいと思いますね。

◎川口和久氏

 よく大学・社会人から入った選手は”即戦力”と言われますが、本当に戦力として使えるのは、じつはそれほど多くありません。いいものは持っているけど、荒削りという投手が結構いて、これでは一軍レベルで使うのは難しいんです。アマチュアならアウトコースに150キロ近いボールを投げられたら、そうは打たれないと思います。でも、プロはそれだけでは通用しない。どれだけ恐れずにインコースを投げられるかが大事になってきます。

 そういった点で、DeNA戦でプロ初先発を果たした森下のピッチングは圧巻のひと言です。打者の左右に関係なくインコースを突けていましたし、高低でも勝負できていた。タテのカーブが特徴的ですが、カットボール、チェンジアップなど、すべての変化球がカウント球として使えるし、勝負球にもできる。1年目でこれだけのピッチングをできる投手は少ないと思います。

 不安があるとすれば、あの投球フォームでスタミナが持つのか……ということです。森下の投げ方は、左足を上げてから、上体を反らすようにして背筋に体重を乗せて投げます。そうすることでボールに力が伝わり、角度もつく。

 その一方で、あのフォームは背筋と腹筋のバランスが重要で、どちらかが弱くなるとボールが浮いて抜けやすくなり、シュート回転しやすくなる。それに球の出どころが見やすくなるリスクもある。そうなるとボールにばらつきも出るし、バッターからすれば打ちやすくなります。とくに夏場、どれだけコンディションを整えて投げられるかでしょうね。そこをクリアできれば、2ケタは確実だと思います。

 あと、森下はバッティングもすばらしい。開幕戦でチームメイトの大瀬良(大地)と阪神の西(勇輝)がホームランを放ちましたが、森下も十分期待できる。投げてよし、打ってよし、顔もよし。言うことなしです!(笑)

◎斎藤雅樹氏

 ストレートはいいし、変化球もいいし、コントロールもある。緩急の使い方もうまく、プロで勝てる投手の要素をすべて持っているピッチャーだと思います。

 とくにすばらしいと感じたのは、タテヨコだけでなく、奥行きを使ったピッチングができること。森下の場合、大きく曲がるタテのカーブがありますが、打者や状況によって落とす位置を変えている。ストライクゾーンを平面にとらえるのではなく、立体的にとらえています。正直、ルーキーでこういうピッチングができること自体驚きですが、それだけ全球種に自信がある証拠でしょう。

 だから、ピッチングに余裕がありますよね。打たせて取るピッチングもできるし、いざという場面では三振を狙いにいける。このままシーズン終了までローテーションを守ることができれば、2ケタも十分にあり得ます。

 あえて不安要素を挙げるとすれば、体力でしょうね。大学生は春と秋しかリーグ戦がなく、1年を通して投げたことがない。しかも今年は交流戦もオールスターもなく、メリハリがない。そのなかでどうしても疲れは出てくると思うのですが、その時にどれだけのピッチングができるか。

 ピッチャーというのは、調子がいい時なんてほとんどないですから。調子が悪いなかでどれだけ試合をつくれるかが、これから重要になってくる。そうしたことは、投げていくうちに覚えていきますから、とりあえず今はケガをせず、1年間投げることを目標にしてほしいですね。

◎西山秀二氏

 プロデビュー戦のDeNA戦を見ましたが、すべてが完璧でした。スピード、キレ、コントロール、そして度胸……ルーキーのピッチングではなかったですね。そのなかでも印象的だったのが、変化球の精度の高さです。

 森下の場合、タテのカーブのイメージが強いですが、カットボール、チェンジアップもすばらしい。しかも使い方がうまいですよね。たとえば、カットボールは左打者のインコースを突いたかと思えば、外からストライクゾーンに入れることもできる。デビュー戦は會澤(翼)のリードもよかったと思いますが、それに応えられる森下が立派ですよね。

 開幕前の練習試合で打ち込まれたましたが、あれも今になって思えば、いろいろと試していたような気がします。使えるボール、使えないボールを判断していたのかなと。いずれにしても、開幕までにしっかり修正してくるわけですから、修正能力の高さも特筆すべき点です。

 おそらく「プロでもやっていける」という思いはあったと思いますが、DeNA戦のピッチングで自信が確信に変わったのではないでしょうか。

 心配な点は、あれだけいいピッチングをして勝てなかったこと。プロには”勝ち運”のない投手っているのですが、それにならないか不安です。昔、黒田(博樹/元広島)もそういう時期があって、苦労したことがありました。いいピッチングをしているわけですから、実力は誰もが認めるのに、勝ち星だけがつかない。

 昨今、勝ち星がすべてじゃないという風潮もありますが、やっぱり先発投手として投げるからには勝ちたいですよね。とにかく、まずは1勝。そうすれば、これからも自分のペースで投げられると思いますし、自ずと勝ち星もつくと思います。

◎藪恵壹氏

 新人王の最有力候補だと思います。じつは昨年のドラフト前、明治大で彼の取材をしました。ピッチャーとしての考え方がしっかりしていますし、ボールもすばらしい。阪神が指名したらいいなと思っていたら、広島の一本釣りでしょ(笑)。打力のあるチームですし、順調に勝ち星を積み重ねていくと思います。

 持ち味は、タテに大きく割れるカーブ。右投手であれだけブレーキのあるカーブを投げるピッチャーは少ないですから、それだけでもすごく貴重な存在です。しかもストレートは150キロを超えてきますから、打者にとってあのカーブはすごく”邪魔なボール”になってくる。バッターというのは差し込まれたくないですから、速いボールを意識するのですが、あのカーブがあるからどうしても迷いが生じてしまう。とにかく配球パターンが豊富ですので、的を絞るのが大変なピッチャーだと思います。

 森下のピッチングのイメージは、プロで活躍しはじめた頃のマエケン(前田健太/現・ツインズ)とダブります。タテのカーブを有効に使ったピッチング、コーナーいっぱいに決める制球力、ボールのキレ……どれをとっても一級品。近い将来、カープのエースとして活躍してくれるはずです。

著者:スポルティーバ●文 text by Sportiva