「ミス」と「失敗」は同じもの?

これまで、「ミス」や「失敗」について、「新しいものを生み出したり、クリエイティブに仕事をしていくうえでは避けられないもの」という話をしてきました。そして、「その後に的確に対処すれば、飛躍にもつながる」とお伝えしてきました。


このようにお話しすると、あたかも、「ミス=失敗」というようにとらえられるかもしれませんが、私自身は、実は、ミスと失敗とは「違うもの」としてとらえています。

簡単にいえば、ミスが「刹那的なこと」というニュアンスなのに対し、失敗はもう少し長い目でとらえた、「ある程度の時間経過を含むこと」というニュアンスです。

「あの挑戦は失敗だった」

と言われれば、多くの場合、挑戦したけれど、何らかの理由でうまくいかなかった、と解釈され、「失敗」はその一連の取り組みに対する評価となります。一方、

「あの挑戦はミスだった」

と言われれば、取り組みの内容はさておき、挑戦したこと、挑戦すると決めたその一点がよくなかった、と解釈されることが多い、という具合です。


さらにいえば、失敗は本連載で紹介した手順を踏むことで撲滅、あるいは成功への糸口にすることができますが、ミスの中には、やらかしてしまったが最後、心から謝罪する以外に、どうにもできないこともあります。

たとえば工場での組み立て工程をイメージしてみてください。いつもの通りに4本のねじを順番に締めたら組み上がる部品なのに、うっかり3本目のねじを締め忘れてしまいました。気付かずに製品に組み込まれたときには問題が起こりませんでしたが、使用している間にその部品が外れ、事故になってしまいました。

このときの「うっかり」は、失敗かミスか、と言われれば、「ミス」です。ミスはこのように、通常の決まった手順があり、その通りに行なっていたら何も問題が起きなかったはずなのに、何かの理由があってその手順通りに行なわれなかったことで起こる問題についても使います。

ただ、この例の場合、この「ミス」をきちんと検証し、対策を練ることで、二度と繰り返さないための仕組みづくりができます。その一連を振り返ったものが、「失敗」というわけです。


英語で言えば、ミスは“to err” が近いでしょう。野球でよく使うエラー(error)の動詞形です。野球のエラーでは、普通に守備をすれば簡単に捕球、あるいは送球できたのに、ボールをつかみ損ねたり暴投をしてしまったときにエラーが記録されます。

難しいバウンドのボールの捕球、あるいは無理な体勢からの送球で失敗しても、エラーにはなりません。つまり、簡単なことをやり損ねて状態が悪くなるのがミス、というわけです。

ちなみに、英語の“to miss” を日本語にすると、「逃した」「○○が周りに(い)なくて寂しい」などとなり、意味が違うので気を付けてください。


このように、失敗とミスは似ている言葉のようで、ニュアンスがまったく異なります。ミスをミスのままにせず、きちんと振り返って失敗に昇華させ、成功への足掛かりへとしていきましょう。ただし、ミスと失敗の境界は場合によっては非常にあいまいで、ときに主観的な要素も含みます。


著=飯野 謙次