聴き手を置いてけぼりにしない

良いプレゼンの必要条件は、伝えたいことが正しく聴き手に伝わることと、その過程で聴き手に不要なストレスを与えないことです。十分条件は、聴き手の共感や納得が得られること。この2つの条件がそろえば、おのずと良いプレゼンになることでしょう。

スライド内の文字数が多い。話の内容がスライドと合っていない。専門用語が多い。疑問を喚起したもののその疑問に答えないまま次に進む――これらはすべて、聴き手にとって不要なストレスになります。

良いプレゼンをするための心構えとして、忘れないでいてほしいことは、聴き手にとって親切であろうとすることです。

やるべきことや整理すべきことが多すぎて、「自分には難しそう……」とプレゼンを敬遠される人もいるかもしれませんが、まずこの心構えを持つことから始めてみてください。

プレゼン準備の基本ステップ

聴き手を置いてけぼりにしないプレゼンにするには、やはり準備が必要です。準備の基本ステップを見ていきましょう。


プレゼンの準備となると、往々にして、ステップ3-2の「どのように伝えるか考える」から着手してしまいがちです。具体例を挙げると、スライド作成のための資料集めや情報収集といった作業が当てはまります。

「どのように」から準備を進めたスライドでのプレゼンは、誰に向けて何を伝えたいのか、いまひとつはっきりしないものになる恐れがあります。

プレゼンの目的は、聴き手に理解、共感され、望む行動をとってもらうことです。

そのためにまずすべきことは、ステップ1の「目的を押さえる」こと。プレゼンを行う目的とは何かを考える必要があります。これは、クリティカル・シンキングにおけるイシュー(論点)を押さえることと同様です。

次にすべきことが、「聴き手を理解する」こと。相手はどんな人で何をどこまで知っているのか、どんなことを聞きたいのか、逆に聞きたくないことは何か、など聴き手をさまざまな角度から分析します。

ステップ1、2を踏まえてから、最後にステップ3「聴き手の導き方を決める」に入ります。このステップでは、必要なストーリーラインや具体要素を考え、プレゼンを構成していきます。

こうしたステップを丁寧に踏めるようになれば、プレゼンの途中で立ち往生したり、緊張して余裕がなくなったり、ということが少なくなるはずです。

逆に言うと、緊張してしまうプレゼンとは、喋りやすいスライドを用意できていない自分の準備不足であるとも言えます。相手の頭の中を考え抜き、それに対した答えを資料に落とし込むことで、余裕をもったプレゼンが可能となるでしょう。

成功体験を積む



最後に、プレゼンに対する苦手意識を振り払う上で大事なことをお伝えしたいと思います。

それは「自分のプレゼンの良かったポイントを言葉にすること」です。

僕は受講生へのフィードバックを拾うとき、最初に「今のプレゼンの良かったところって何? もっと良くなるところってどこ?」と尋ねるようにしています。

決して「いまのプレゼンどうでした?」とオープンには聞きません。基本的にはダメ出しのコメントしか上がってこないからです。これでは落ち込んでますますプレゼンが嫌いになるだけです。

改善点はどう尋ねるか。「今のプレゼンの、もっと良くなるところはどこ?」と投げかけるのがコツです。「良かったポイント(=Goodポイント)」と「もっと良くなるポイント(=Opportunityポイント)」と言い表すだけで、プレゼンに対して前向きな気持ちになれますよね。

「プレゼンをやって褒められた」という成功体験を積むことが大事なのです。

もうひとつ重要なのが「場数を踏むこと」。これも、単に「場慣れしろ」というわけではありません。

「目的を押さえる」「聴き手を理解する」といったプレゼンの上流工程から意識して場数を踏んでいけば、「話し方」や「スライドの見せ方」のような下流の工程は後からついてきます。

正しいステップを踏んで、プレゼンの回数を積み重ねていきましょう。


語り=西口 敦、構成=水本 このむ