やりたいことが分からず悩む! 自身喪失の「北京賢人」哀歌/最高の生き方⑫

「北京賢人」たちの悩み──賢人でさえ、自分が何がやりたいのかわからない

私の親しい友人に、中国で某大富豪のファミリーオフィスの投資責任者をしている女性がいる。彼女は北京大学を卒業後、若くして著名投資ファンドの経営チームに抜擢され、そこからヘッドハンティングされて著名ファミリーオフィスでの投資活動の陣頭指揮をとっている。


あまりの聡明さに、私は彼女を北京の賢人、略して〝北京賢人〟と呼んでいるのだが、中国は人口も多いだけあって、賢い人も当然ながら多い。

そして日本の明石賢人や、インドネシアのジャワ賢人より、社会変化のスピードが急激なだけに、生き方に悩んでいる人も多いようである。そんな彼女が、同じく北京大学卒業で、北京在住のエリート投資家二人を連れて、私の家に遊びに来たときの話だ。


これほど賢い北京賢人たちはしかし、自分が何をやりたいか、自分にとって大切な価値がまったくわからないというのである。というのも、彼女の親の世代は中国がまだ貧しかったため、とにかく食べていけるようにいい学校に行っていい会社に入ることが至上命題であった。しかし豊かな時代に生まれた子供たちは、それらが自分を幸せにしないことだと感じるようになる。


また中国では古来の孔子思想などは文化大革命で壊されてしまい、宗教も哲学も学ぶ機会が少ないので、何が普遍的に大切な価値観か、見失っている人が多いというのだ。

さらに中国は、西欧諸国が200年、300年かけて実現した社会・産業構造変革を数十年の間に経験したので、農業社会から工業社会、IT社会への変化スピードが速すぎて、〝何を信じて生きるべきか〟という社会の価値観が急速に変化したというのである。


こう聞くと、別に北京だけでなく、東京でもソウルでもシンガポールでも、〝聡明でエリートキャリアで成功しているように見える人々〟の悩みは結局のところ、同じようなものが多いことがわかる。

この北京賢人たちは、ひたすらお互いに「あなたにとって大切な価値は何か」とたずね合っていたわけだが、これはとりもなおさず、他の国々の〝生産性高く競争に勝利してきた賢人〟たちが、自分の目標やそれを設定する根拠となる価値観に関して、何に価値があると信じて生きるべきか、自信がないことの表れであろう。


先ほど登場したアロガントラロピテクスの進化レベルならば、そもそも自分がなぜ生きているのかや、何が正しいのかなど自分の行動原理を内省するほど脳が発達していない。よって(私も含めた)〝アホの特権〟である〝悩みが無い〟という状態で、価値の有無はさておき、それなりに幸福感に満ちていたりする。

ところが〝賢人〟の段階に進化すると、多くの情報を感知して理解ができるだけに、「自分はなぜこんなことをやっているのだろう?」と、自分自身の行動原理を再考するようになるのだ。


そもそも人間は他の動物と同じく、食べること、敵から逃げること、余裕があれば子供を育てることだけを考え、目的にするのに精いっぱいであった。

「どう生きるべきか」「何をしたいのか」などという、存在目的を問う大きな問いは、ライオンや象、ゴリラやチンパンジーが〝本当にやりたいこと〟や人生の意義を考えないのと同様、人類は長らく考えなくてよかったのだ。

しかし、生活に余裕と余剰時間が生じ、寿命も格段に延び、社会が急速に変化した結果、「本当にやりたいことは何なのか」「何のために生きているのか」という、終わりなき自問に苦しむようになったのである。


(StudyWalker・ムーギー・キム)


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