あっこれ、だめなやつだ。


焦りを通り越して、心の奥から悲しみがうわぁっと押し寄せきて、目に涙が溜まって来た。

こんな簡単な質問なのに、東大の最終試験にまで来て、こんなところで終わるの?

ここまで頑張っただけでも東大受験をしてよかった……そう思ってたけど。

せっかくチャンスをもらえて、せっかくここまで来たからには、やっぱり東大に合格して夢を追いかけたい。

涙が、もう落ちる。

ちょっと待って、でも


子どものお受験ですら泣いたら不合格なのに、受験生の中では比較的オババな私が最高学府の口頭試問で、怒鳴られたわけでも意地悪されたわけでもなく、ただ分からないってだけで泣くとかMAJI地獄じゃん。

涙が落ちる寸前、とっさに鼻を掻くふりをして親指で涙をぬぐい、言いたいこと(ほぼ再放送)を東大教授(D)に伝えた。


下手すりゃ、ほじりながら喋ってると思われるリスクがあるけど、はなほじBBAより、泣いたBBAとして名を残す方がよっぽど嫌だ。

東大教授(D)の質問と、私の再放送の回答×3のせいで時間が押したせいか、ほじり後すぐに進行の人が次にまわした。

ほっとしたけど、


あのレベルであんなに突っ込まれるなんて……もう合格できる気がしない。

もうその場にいるのがしんどくて、早く終わってくれと心の中で連呼していた。

次の東大教授「えー……と」


これもめちゃくちゃ早口。

私の発表をすごく簡潔にまとめてくださったり、実験はこうするといいよ、とかアドバイスをくださったり。

”はい” ”ありがとうございます” ”頑張ります”としか言いようのない質問だった。

これって点数になるのかしら……と思いつつラッキーだと思った。

そして最後の東大教授の番がきた。

この東大教授は私の研究計画書の社会問題を”皮肉った部分”に反応してくださって、ものすごくいい感じだと思った。

この言葉を聞くまでは。


あとで調べたら私の研究に関連した書籍を出してる有名な教授だった。

ねた……?


それは皮肉? それとも洒落た言い回し?

心臓が止まりかけた。


文・イラスト=ただっち