2020年春の0〜2歳児の認可保育施設の利用申込者数のうち、募集枠を上回った割合(超過率)は、首都圏27市区で平均21.8%に上ったことが東京新聞の調査で分かった。自治体に1次選考の状況をアンケートし、集計して算出した。申込者の総数は9万2388人で、2万131人が募集枠を上回った。全体の2割強が1次選考で認可保育施設に入れない計算だ。希望者の多い認可保育施設への入園は依然として厳しい状況が続いている。【あなたの暮らす街の状況は? 記事の後半で、東京23区と首都圏の政令市、県庁所在地の市ごとの0、1、2歳の「入りにくさ」を紹介しています】 

国は2020年度末に「待機児童ゼロ」目指すが… 

 東京23区と首都圏の政令市、県庁所在地の市の31市区にアンケートし、千葉と宇都宮、前橋の3市と千代田区以外の27市区から回答を得た。超過率が高いほど認可保育施設に「入れない」割合が多く、0%は数字上、全申込者が施設に「入れた」ことを意味する。

図解 各自治体の、認可保育所の申込者のうち、募集枠を超えた人数の割合

 政府は来年3月までに「待機児童ゼロ」にする目標を掲げている。

 1次選考で認可保育施設に入れなかった人でも、2次選考や認可外施設への入園で預け先が決まれば、待機児童にはカウントされない。しかし、入園希望者が最も多い認可施設は首都圏ではまだ足りておらず、「待機児童ゼロ」への道のりは遠い。

2歳児で大きい地域差 中野区は65%

 調査結果を年齢別で見ると、育児休業明けで申込者が多くなる1歳児では、超過率0%の市区はなかった。平均は28.8%で、最高は品川区の51%、最低は相模原市の8.6%。

 2歳児は平均27.3%だが、地域差が大きい。相模原など11市区が0%の一方、川崎など10市区は30%以上で、最高の中野区は65%だった。中野区の担当課長は「認可外施設に入る人もいて、最終的な待機児童はそこまで多くならないとみている」と説明した。

 0歳児は平均9.8%。6市区が0%で、このうち相模原市と豊島、板橋、足立、葛飾の4区は0歳児と2歳児で0%だった。最高は43%で江戸川区。

「自治体は量だけでなく”保育の質”を上げて」 

 保育園を考える親の会の普光院亜紀代表は「自治体の整備状況は1つの目安になるが、きちんとした事業者が運営しているか、外遊びはできているかなど中身も重要。自治体は量だけでなく、保育の質を上げる取り組みにも力を入れて」と求めた。

「ここまで受け皿がないとは…」 入りにくさの地域格差、年齢別の傾向は?

 0〜2歳児の認可保育施設の申込者数のうち、どれくらい募集枠からこぼれるか(超過率)を自治体に調査した東京新聞恒例の保育アンケート。その結果からは、地域格差や年齢別の「入りにくさ」の傾向などが見えてきた。保育園を造ったり、自治体独自の制度を設けて受け皿を増やしてはいるが、この春も「子どもを預けられない」という保護者の嘆きが聞こえてくる。
今春、「保活」をした女性。0歳の子どもの預け先は決まった

今春、「保活」をした女性。0歳の子どもの預け先は決まった


北区の1歳児 自転車圏内の17施設すべて落選 

 「ここまで受け皿がないとは…」。長女(1つ)の認可保育施設の入園を申し込み、落選した東京都北区の美容師の女性(29)は嘆く。共働きでフルタイム勤務。自転車で通える範囲の17施設に申し込んだが、1次、2次選考のすべてで落とされ、なんとか隣の区の認可外施設に空きを見つけた。

 北区の1歳児の超過率は17.4%。27市区平均の28.8%よりはマシだが、女性は「駅から遠いなど、仕事との両立が難しいところしか空いていないと感じた。利用者の立場に立って整備してほしい」と訴える。

タワマン増加エリア「保育需要に追いつかない」

 タワーマンションの建設ラッシュで、共働きの子育て世帯が増える中央区。大規模開発時に保育施設を造るよう民間に求めているが、0〜2歳児平均で4割近くが1次選考で認可施設に「入れない」。都心のため、土地や物件がないのが悩みで、小林寛久・保育計画課長は「保育需要に追いついていない。公有地の活用などあらゆる手で整備していく」と話した。

 品川区もマンション建設による子育て世帯の流入で、区の見込みより申込者が増えた。転園希望者を含んではいるが、1、2歳児ともに50%を超え、2人に1人が「入れない」計算だ。

江戸川区は0歳児が狭き門 保育ママ制度で対応

 江戸川区は0歳児の超過率が43%と高い。30余りある区立保育所が0歳児保育を行わず、受け入れは私立に限られているからだ。当然、狭き門になる。茅原光政・保育課長は「認可施設ではないが、一般家庭などで子どもを預かる区独自の『保育ママ』制度があり、0歳児はそちらで保育している」と説明した。

 「集計していない」とした千代田区には、こんな事情が。同区は幼稚園に併設した0〜2歳児対象の独自の認可外施設を、認可施設と同等とみなして募集している。そのため、あくまで認可に入れるかどうかを問う本紙調査では数字を得られなかった。

 このような独自制度は自治体の工夫の表れでもあるが、わかりづらさにもつながる。独自制度がある区で「保活」をした自営業の女性(37)は「施設の種類が多く、自治体によって制度や選考基準が違う」と、こぼす。情報発信についても「ネットには古い情報しかなく、自治体で公開の仕方や内容もばらばら」と改善を求めた。

今春、「保活」をした女性。0歳の子どもの預け先は決まった

中には「落ちたい」人も 内定辞退と育休制度の矛盾

 実は、申込者の中には「落選したい」人もいる。保育所に入れなかったことを証明する「入所保留通知書」がないと、育児休業を延長できないからだ。この育休制度の矛盾が、自治体担当者を悩ませる。

 2017年の法改正で、育休の延長期間が拡大され、原則子どもが1歳までの育休を、保育所に入れなかった場合など、段階的に2歳まで延ばせるようになった。育休期間中は、雇用保険から育児休業給付金が支給される。自治体によっては選考前の申込者に育休延長が目的かを確認し、選考時に調整している。

 江戸川区では、こうした育休延長目的の人が昨年度、100人以上いたという。目黒区は内定辞退者が150人を超え、その中には育休延長が目的だった人も一定数含まれているとみる。

 別の区の担当者は「親も形式的な申し込みをせざるを得ないが、内定辞退者が多いと、保育行政が煩雑になる。本当に入りたい人が入れず、本末転倒」と、制度の見直しの必要性を訴えた。

調査方法

 今回の調査では、待機児童が多い東京23区と首都圏の政令市(さいたま、千葉、横浜、川崎、相模原)、県庁所在地の市(水戸、宇都宮、前橋)の31市区にアンケートを送付。0〜2歳児の各年齢について、1次選考での認可保育施設の募集人数と申込者数を尋ね、超過率(小数点第2位を四捨五入)を算出した。一部の市区の回答は、転園希望の申込者を含む。