夏本番。薄着で出歩く機会が増える中、気になるのが虫刺されだ。今年は新型コロナウイルスの影響で、換気のため窓を開ける機会も多い。ただ、「たかが虫刺され」と油断すると、痛みや高熱などに襲われる場合も。予防や、刺された際の対処などをまとめた。

かゆみ・腫れはアレルギー反応の一種

 愛知県内の女性公務員(30)は、毎年夏になると、虫刺されに悩まされる。原因は主に蚊やノミ。刺されると赤く腫れ、ぷっくりと水膨れができる。時には、かゆみが1週間近く続き、寝付けないことも。「体質と思うが、つらい」と話す。

 藤田医科大医学部皮膚科学教授の杉浦一充さん(51)によると、虫刺されによるかゆみや腫れは、アレルギー反応の一種だ。蚊の場合、血を吸う時に注入される唾液の成分を、人の体が異物と認識することで起きる。

2タイプ 子どもに多いのは「遅延型」

 反応には、二つのタイプがある。刺されると、数十分でかゆみや腫れなどの症状が出て数時間で治まるのが「即時型」。刺されて1〜2日後に症状が現れて1週間程度続くのが「遅延型」だ。一般的に子どもは遅延型が多く、年齢を重ねるにつれて即時型が出てくる。

 大事なのは、かかないこと。傷がついて治りにくくなったり、肌を刺激から守ろうと過剰に分泌されたメラニン色素が沈着して黒い痕になったりするからだ。特に子どもは、かき傷から黄色ブドウ球菌や溶連菌などが入り、水ぶくれやかさぶたが周囲に広がるとびひを起こす可能性もある。

かゆみを抑えるためには、冷やすこと

 刺されたら、流水や保冷剤などで患部を冷やし、かゆみを抑えることが必要だ。症状が軽い場合は市販のかゆみ止めを塗るのもいい。効果の高いステロイドを含んだものも市販されている。症状が強いなら、皮膚科で薬の処方を受けたい。

 虫刺されを防ぐには、肌の露出を控えるのが一番だが、ディートやイカリジンといった虫が嫌う成分が入った虫よけスプレーも効果がある。最近はディートの濃度が30%、イカリジンが15%という高濃度の製品も多い。ただ、ディートは生後6カ月未満には使えないなど注意が必要だ。

危険なツツガムシ 死に至る場合も

 気を付けたいのは、毒針で刺し、毒を皮膚に注入するハチだ。じんましんや呼吸困難など複数の症状が急激に出るアナフィラキシーショックが起きる恐れがある。市販の毒吸引器で毒を吸いだし、反応がひどい場合はすぐ受診したい。

 もう一つ、山歩きなどで注意が必要なのがダニの一種、ツツガムシ。高熱や発疹が出て死ぬこともあるツツガムシ病は、ツツガムシが媒介する感染症だ。杉浦さんは「虫刺されと侮らず、予防は入念に」と呼び掛ける。

高熱や水疱は「蚊刺過敏症」の恐れ

 蚊やブユに刺された後、38度超の高熱が出たり大きな水疱(すいほう)や潰瘍ができたりする場合、「蚊刺(ぶんし)過敏症」であることも。国内での発症は年間数十人で、刺されるたびに、症状が現れる。

 原因は日本人の成人の9割以上が体内に持つEBウイルス。白血球成分の一種、NK細胞やTリンパ球が体内でEBウイルスに感染すると、これらが異常に増加。この状態で刺されると過剰反応を起こす。20歳までに発症する例が多い。

何カ月も痕が残る…ウイルス感染も

 蚊刺過敏症の診療ガイドライン策定の責任者も務めた名古屋大大学院医学系研究科ウイルス学教授の木村宏さん(60)によると、症状が出るのは主に国内に広く分布するヒトスジシマカに刺された時。予防接種などによる刺激でも同様の反応が出る場合がある。

 NK細胞やTリンパ球が増えると、血球貪食性リンパ組織球症や悪性リンパ腫などから死に至る場合も。白血球を入れ替える骨髄移植が有効とされる。木村さんは「刺された痕が何カ月も消えないなどしたら、EBウイルス感染を疑い皮膚科医に相談を」と訴える。

[元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年8月4日]