お世話のしかたや病気・けがのホームケアは、赤ちゃんの健康を守るために、家族みんなが正しい知識を身につけておく必要があります。数多くの赤ちゃんの治療に携わってきた、慶應義塾大学医学部・小児科教授の高橋孝雄先生に、最新の医学的根拠に基づく、今の常識について教えてもらいました。

衣類の着せ方や環境づくりなど、今と昔の考え方が変わったお世話について

昔に比べて住環境が格段によくなっているので、薄着で風邪をひく心配はほぼありません。
「海外と比べて、日本のおむつはずれのスタートはゆっくりな印象です。日本では、おむつはずれは赤ちゃんの発達に合わせて進める、というのが今の考え方になっていますね」(高橋先生)

【昔】厚着させないと風邪をひく

【今】厚着だと体内の熱が放熱されないため、なるべく薄着が基本

家屋の気密性やエアコンの性能が低かった時代は、室温が下がると赤ちゃんの体がすぐに冷えてしまうことがありました。赤ちゃんの体温調節が未熟なのは昔も今も変わりませんが、今は住環境やエアコン機能が向上したので、夏は涼しく冬は暖かい環境に整えられます。
「昔のように厚着をさせたり、布団をかけすぎたりすると、体内の熱が放散されず体温が上昇。汗が冷えてかえって体を冷やしてしまうこともあります」(高橋先生)

【昔】足が冷えるから室内でも靴下をはかせる

【今】住環境がよくなり、はだしが一般的に

住環境が今よりよくなかった時代は、赤ちゃんの体が冷えないように室内でも靴下をはかせていました。
住環境が整っている今は、素足で床をつかむ感覚を養える、転倒を防止するなどの面から、室内でははだしがすすめられています。

【昔】布おむつのほうが早くおむつがはずれる

【今】おむつの種類は、おむつがはずれる早さと無関係

布おむつは排せつしたときに不快を感じやすいため、早くおむつがはずれるといわれていました。
しかし、おむつが布か紙かで、はずれる時期に違いはないようです。また、今は無理にはずすよりも、赤ちゃんの成長や発達を待つという考え方になっています。

【昔】1才を過ぎたのにおむつをはいているのはおかしい

【今】子どもの成長や発達が整ってからでOK

昔は布おむつが主流だったため、洗濯の手間をなくすために、1才前後におむつをはずす家庭が多かったようです。
「おむつはずれの考え方は国によっても違いますが、今の日本では、無理して早くおむつはずれを始めるのではなく、子どもの成長・発達が整った時点でスタートするのがいい、という考え方になっています」(高橋先生)

【昔】たくさん日光浴をさせたほうがいい

【今】日かげで30分くらい日光浴するのを目安に

主にビタミンD不足で発症する「くる病」予防で、日光浴が推奨された時代がありましたが、紫外線の浴びすぎは、体によくないことがわかっています。
「とはいえ、日光浴によってビタミンDが生成・活性化するため、日光浴をまったくしないのもダメ。最低でも1〜2日に1回は、日かげで30分程度日光浴することを心掛けましょう」(高橋先生)

【昔】あんよの練習のために歩行器を使う

【今】歩行器でたくさん歩いてもあんよは促されません

赤ちゃんのあんよを促すというふれこみで、1970年代に歩行器がブームになりました。
しかしその後、歩行器でたくさん歩いても、赤ちゃんが早く歩き始めるわけではないことが、研究で明らかになりました。「欧米では、歩行器に乗っていた赤ちゃんの転倒事故などが30年くらい前から指摘され、危険な遊具とされています。親が見守っていてもけがをすることがあるので、使うのは控えましょう」(高橋先生)

【昔】あせもの予防にはベビーパウダーを使うのがいい

【今】あせも予防に必要なのは、こまめな着替えと皮膚の清潔

あせもを予防するには、汗をかいたらこまめに着替えることと、皮膚を清潔に保つことが重要。そしてスキンケアの一環として、暑い時期も保湿が欠かせません。ローションタイプの保湿剤で、肌の乾燥を防ぎましょう。
ベビーパウダーはあせも予防にはなりませんが、サラサラして皮膚と皮膚の摩擦が減るので、心地よく感じると考えられています。
「ベビーパウダーを使うときは、使い方に注意を。たくさん使うと皮膚の汗腺をふさいで、あせもを悪化させてしまいます。粉タイプは大人の手のひらに薄く広げ、赤ちゃんの肌を軽くなでるくらいにすると、薄くつけることができますよ」(高橋先生)

【昔】体はガーゼでこすって汚れを落とす

【今】泡立てた洗浄料でやさしく洗って

ガーゼでこするのは、デリケートな赤ちゃんの肌には刺激が強すぎ。しっかりと泡立てた洗浄料を使い、ママやパパの手ですみずみまでやさしく洗ってあげて。
でも、手で石けんの泡を落とすのは大変なので、お湯をたっぷり含ませたガーゼで、洗い流すのはOKです。

病気になったりけがをしたときのお世話の考え方、今と昔で違うこと

発熱や嘔吐(おうと)・下痢などの体調不良や、けがをしてしまったときのケアの方法、予防接種・ワクチンの考え方などは昔とかなり変わっています。
「子どもの病気やけがなどについて相談できるかかりつけの小児科医を持つ、というのが、今の考え方です」(高橋先生)

【昔】風邪をひいているときはおふろには入らない

【今】風邪をひいていても元気そうなら入浴を

自宅におふろがなく、銭湯やご近所の家に「もらい湯」に行っていた時代の名残のようです。赤ちゃんの湯冷めを心配してそういわれたのでしょう。今は風邪をひいていても、赤ちゃんが元気で回復に向かっているのなら、おふろに入れてもOKという考えに。鼻詰まりはおふろの湯気でラクになることがあります。
ただし、長湯は体力を消耗してしまうのでNG。手早く洗ってサッと上がってください。

【昔】ワクチン接種より病気にかかったほうがいい

【今】ワクチンで防げる病気はワクチンで防ぐのが基本

水痘、麻疹(ましん)、風疹(ふうしん)、おたふくかぜは、一度かかれば大人になるまで続く免疫が得られるため、昔は幼少期にかかっておいたほうがいい病気といわれていました。
しかし、おたふくかぜによって聴力障害が起こるなど、感染症には深刻な合併症があり、最悪の場合は死に至ることもあります。
「これらの病気が悪化した場合、病院側の感染制御の理由から、入院できる病院が限られてしまいます。お子さんの健康を守るために予防接種はきちんと受けましょう」(高橋先生)
ワクチン接種は病気を広げないためのマナーでもあります。

【昔】ワクチン接種を受けた当日はおふろに入れない

【今】接種後1時間もすれば、普段通りの生活で問題なし

以前は「接種後はおふろ禁止」という指導が行われていましたが、医学的根拠はないので、接種当日におふろに入っても大丈夫です。
ただし、接種後30分は病院にとどまって様子を見るか、医師とすぐ連絡をとれるようにしておきます。
「副反応はあとから出ることもあるので、予防接種をした日は、長時間の外出はおすすめできません。自宅で遊んであげましょう」(高橋先生)

【昔】高熱によって脳に後遺症が出るから解熱剤を使う

【今】必要な場合以外は解熱剤を使わない

昔は高熱そのものが脳に後遺症を残し、男の子では生殖機能が落ちるといわれていたので、すぐに解熱剤を使う人が多くいました。しかし、発熱は体の防御反応で、高熱が脳や生殖機能に影響することはありません。解熱剤は医師の指示のもとで使いましょう。

【昔】耳に水が入ると中耳炎になる

【今】水が入っても蒸発するだけ。中耳炎にはなりません

昔は中耳炎が慢性化して、鼓膜(こまく)に穴が開いたままの人が多くいました。そのため、汚れた水から感染を起こすことがあったのです。
しかし、鼓膜が健康なら耳に水が入っても一昼夜で蒸発し、中耳炎にはなりません。入浴中に赤ちゃんの耳に水が入ってもあわてないで大丈夫です。

【昔】すり傷は消毒をする

【今】消毒薬は使わず水道水で流し、清潔にしておく

以前は、傷口に消毒薬をかけて雑菌を除去する方法が、応急処置の基本でした。しかし、消毒薬は傷を治す細胞まで殺してしまうことがわかったので、今は使いません。傷口を水道水で流し、清潔にしておきましょう。

【昔】頭を打ってもたんこぶができるくらいなら、受診しなくて大丈夫

【今】頭を打ったあと、様子がおかしいときは受診して

頭を打ってもたんこぶができたら重症ではない、という昔の考えは間違い。頭を打ったあと、ぐったりしている、複数回吐く、たんこぶが大きい、意識がないなど、いつもと様子が違うときは必ず受診してください。

監修/高橋孝雄先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

ばあば・じいじだけでなくママやパパも、思い込みや習慣などで、間違ったケアをしていることがあります。これを機会に、お世話や病気・けがの対処法について、確認してみてください。

高橋孝雄先生
(慶應義塾大学医学部・小児科教授)
Profile 
医学博士。専門は小児科一般と小児神経。1982年慶應義塾大学医学部卒業。1988年から米国マサチューセッツ総合病院小児神経科に勤務。ハーバード大学医学部の神経学講師も務める。1994年より慶應義塾大学小児科で、医師、教授として活躍。6月25日に著書「子どものチカラを信じましょう 小児科医のぼくが伝えたい 子育ての悩み解決法」(マガジンハウス)が刊行。