子どもがやってはいけないことや、してほしくないことをしたとき、どのようにしかったらいいのか悩むときもあるかもしれません。
子どもの発達に詳しい臨床心理士の帆足暁子先生に、上手なしかり方について聞きました。

「怒る」はダメ、「しかる」はOK。しかることはしつけに必要?

子どもがいたずらをしたとき、どのようにしかるのが正解なのでしょうか。
帆足先生は、「ダメなときはダメとしかっていい」と言います。

「“しかるのはよくて怒るのはダメ”などという話もあります。でも、いくら大人が区別しても、子どもからすると、どちらも同じ。全部怒られている印象を受けるのではないかと思います。実際のところ、しかっているときの親は、だいたい怒っていますよね…。
しかるということ自体必要ないという考え方もありますが、注意をするという意味だとしたら
1.感情的にならない
2.おだやかに説明する
3.短い文章で説明する
の3つを念頭におきましょう」(帆足先生)

感情的にならず、簡潔に穏やかに説明するのが原則。

しかるときに気をつけるべきことは、感情的にならないことだとか。

「人間の脳は、人から怒りをぶつけられると恐怖を感じるようにできています。すると、生存本能が働き、戦うか逃げるかを選ぼうとします。このときにあれこれ説明しても、パニック状態の子どもの脳は何も受け入れません。怖くしないと、しつけにならないのではないかと思うかもしれませんが、それは逆効果。だから、感情的にならず“これは危ないからやめてね”と冷静に説明すると、脳は落ち着き、理解する方向に向かいます。ポイントは長々と説明しないこと。シンプルな短文のほうが伝わりやすいです」(帆足先生)

とはいえ、つい感情的に怒ってしまうときもあるかもしれません。

「そういうときは、子どもにきちんと謝ることが大事です。“今、ママはイライラしていて怒ってしまった。あなたはそこまで怒られることをしていない”と説明するのです。大人より子どものほうが包容力があるから、ちゃんと謝るとみんな許してくれるはずですよ」(帆足先生)

一度だけでは伝わらない。ダメなことは何度でも繰り返し伝えて。

一度言ったことは理解してほしいのに、何度しかっても同じことをする、という悩みを抱えているママもいるかもしれません。

「前も言ったのに…とがっかりするときもあるかもしれませんが、何度も繰り返すことが大事です。というのも、脳には、一度だけの経験は忘れてしまうから。何度も何度も繰り返し伝えることで“これは大事なことなんだ”と脳がわかって定着し、本当の記憶につながっていきます。ここは割り切って、覚えてくれるまで何度も伝えていきましょう」(帆足先生)

年齢は関係なく、対等な人間として接することが大事。

3歳と5歳では、理解力が異なるから、しかり方も変えたほうがいいのではないかと考えがちです。でも、その必要はないといいます。

「年齢でしかり方を変える必要はありません。それよりも大切なのは、子どもを一人の人間として尊重し、真剣に向き合うこと。子どもだからとごまかすと、すぐ見抜かれてしまいます。ダメなことはダメとけじめをつけ、でもあなたは大事な存在だと伝えることが大切です。すると、子どもは自分が尊重されると感じ、親の言うことに耳を傾けようとしてくれます」(帆足先生)

ママたちのしかり方の悩みや気がかりに、帆足先生がアドバイス

子どもに何度注意しても同じことをする、危ないことをわかってもらえないなど、しかり方に悩むママやパパは少なくありません。どうしたらうまく子どもにわかってもらえるのか、帆足先生に聞きました。

年少の息子ですが、何度言っても人の嫌がることばかりします。

【ママの気がかり】
年少の息子は、片づけも着替えもごはんを食べるのもヤダヤダと、まったくやろうとしません。人の嫌がることばかりするので何度も注意しましたが、直りません。

【帆足先生アドバイス】
ひょっとすると、ママはきちんとしたタイプ、お子さんはのんびりタイプと、少しペースが異なるのかもしれません。お子さんからすると、やろうとしたときにママにあれこれ言われ、嫌になっている可能性もありますね。
きっといつもヤダヤダではなく、機嫌のいいときもあるはず。それがどんなときなのか観察して、まずは、お子さんといい関係が作れるときのパターンを見つけてみましょう。
お子さんを理解しようとかかわり方を変えていくと、お子さんも「ママは自分をわかろうとしてくれるんだ」とポジティブにとらえてくれるようになります。
関係性が変わってくると、少しずつママの言うことに耳を傾けてくれるようになるでしょう。

ダメなこと、危険なことを理解してもらうにはどうしたらいい?

【ママの気がかり】
もうすぐ4歳になる息子は、危険だと言っても何度も同じことをします。はさみを人に向けてはダメと言っても遊んでいる途中に人に向ける、お店のなかを走らないと言ってもすぐ走ってしまい、手をつなぐことも嫌がります。しかるのも疲れました。

【帆足先生アドバイス】
きっと好奇心旺盛なお子さんなんでしょう。でも、危険がともなうと、緊張続きでママも疲れてしまいますね。
お子さんには、「●●したらダメ」というより、「こうして欲しい」と具体的に言ってみてはどうでしょう。
はさみであれば「人に向けたらダメ」ではなく、「こっちを持って渡してね」という指示のほうが伝わりやすいです。
また、もう4歳であれば「お買い物に行くけど、お店で手をつなぐか、お留守番するかどっちにする?」と本人に選択させるのもいいですね。
もしお店で手をつながず、走ってしまったら、「残念でした!おうちに帰りまーす」と残念そうに言って、面倒でもいったん家に帰ってお子さんを置いていきます。そのとき、どんなに泣いても連れていきません。
「選択したことには責任がついてくる」という経験を繰り返しさせることで、「決まりごとは守らなくてはいけない」とインプットされていきます。ルールはルールだと徹底させましょう。そのときは大変かもしれませんが、成長するにつれ、確実に楽になっていきます。

お話・監修/帆足 暁子先生 取材・文/齋田多恵、ひよこクラブ編集部

子どもたちに「何が幸せ?」って聞くと多くの子どもが「ママが笑っているとき」と答えると帆足先生は言います。
「笑えるくらい幸せなときが子どももママもハッピーなはず」です。子どもを怒鳴ったり、子どもに怖い思いをさせることから得られるものはありません、脳が委縮するだけです。冷静におだやかにやってはいけないことを伝えれば子どもは理解してくれるはずです。


帆足 暁子(ほあしあきこ)先生
Profile
臨床心理士・一般社団法人「親と子どもの臨床支援センター」代表理事。専門は乳幼児発達臨床心理学、保育臨床、子育て相談、子どものメンタルヘルス。ほあしこどもクリニック副院長として約20年、子育て相談やこころの相談で子どもや親と向き合ってきた実績を持つ。その他、保育者との事例研究会を毎月継続して開催するとともに、保健センターでの虐待発生予防事業等にも携わる。保育者、保健師等を対象とした研修会・講演会を全国で行っている。

※文中のコメントは口コミサイト「ウィメンズパーク」の投稿からの抜粋です