リアルな妊活の様子が描かれている!と評判のweb漫画をご存じですか?
その名も『妊活夫婦』。不妊治療経験者である著者の駒井千紘さんにお話しを聞きました。
駒井さんが“『妊活夫婦』で伝えたかったこと”をお届けします。

あるあるがいっぱい! 話題の『妊活夫婦』著者が振り返る 不妊治療のリアル #4
※参考:「妊活たまごクラブ 不妊治療クリニック受診ガイド 2020-2021年版」

不妊治療の大変さを知ったことが『妊活夫婦』誕生のきっかけ

──『妊活夫婦』を描こうと思ったきっかけは?

●駒井千紘さん(以下駒井) 私自身、基礎体温や排卵日もわからないところから妊活を始めましたけど、不妊治療の実態って、当事者以外まったく知らないですよね。基本的な不妊治療の知識不足もそうですし、経済的負担、頻繁な通院、成功率の低さについても。そういう状況を少しでも変えたかったんです。私は時間の制約が少ないフリーランスで、カナダ人の夫の理解もありましたし、比較的クリニックも通いやすい環境でした。でもほんっとうに大変だった! もし会社員で、夫が古風な考えだったら……と想像すると、女性の負担が多すぎる! そう感じたのが大きな動機ですね。

──駒井さんは妊活開始から妊娠判定まで約2年かかっています。

●駒井 タイミング法から始めたことはよかったのかも。夫とは普段から子どもや妊活についての話をしていて、協力的でもありましたし。それなのに、私より子どもを欲しがっていた夫が原因不明の非閉そく性無精子症と診断されて……。日本人男性のマインドだと、体面があるから離婚しようとかになりがちじゃないですか。だから「子どもが生まれなくても、離婚はしないからね」って慰めたんです。でも夫の返事は「離婚なんてするわけないだろう」。それで「この人は信用できるな」と思ったから、不妊治療を続けられたかもしれません。でも日本人男性が、見栄を張らなければならない心理もわかるんです。仕事の大変さや責任感もあるのに、泣けないのを『妊活夫婦』では描けてよかったです。

――不妊治療は時間だけでなく、金銭面でも負担が大きかったはず。続けられたモチベーションは?

●駒井 夫をお父さんにさせたい気持ちですね。夫を幸せにしたかった。ひと通り、できるだけしたうえで授かれなかったら、自分も夫もあきらめられるかな、と考えていました。

『妊活夫婦』を通じて不妊治療への偏見をなくしたい

──『妊活夫婦』を通じて駒井さんが読者に伝えたいメッセージを教えてください。

●駒井 不妊治療=高齢の印象などがあったせいか、3年前の連載開始当初は不妊治療に偏見を持つ読者もいました。でもそれは正しくないんですよね。高齢になれば不妊のリスクが高くなるので、妊活は早めに始めたほうがいいのは確かですが、『妊活夫婦』の幸田夫婦や私のように若くても不妊になる人はいます。

それに日本だと若くて仕事に慣れていないころは半人前みたいな風潮がありませんか? 会社員だった当時、後輩が妊娠しました。彼女はつわりが重かったのに、若手だからと周囲に気を遣って苦労していたのを目の当たりにしたことがあって。一方で30代半ばの友人は、現在会社に報告せずに不妊治療をしているそう。いつ不妊治療が終わるかわからないのに、不安定な働きかたをすると思われたら戦力外と見なされるから、会社に報告するのは勇気がいりますよね。言うメリットよりもデメリットのほうがきっと大きい。でも仕事を辞めると治療費が払えない。板挟みです。

今の日本は若いうちに妊娠・出産がしにくい社会背景があります。それで妊娠・出産を先延ばしにして年齢を重ねてから不妊治療をすると、今度は「若いころに何も考えずにいたからでは?」とか、一方的な見方をされることも。『妊活夫婦』は妊活そのものだけでなく、それにまつわる人間関係などのエピソードも描いています。漫画を通して不妊治療が簡単ではないこと、不妊治療への偏見を減らしていきたいですね。

駒井さん妊活ヒストリー

28歳から2年にわたった駒井さんの不妊治療をプレイバック。
駒井さん自身の経験を反映した『妊活夫婦』のひとコマや描き下ろしのイラストともにお送りします。

●駒井さん23歳


東京で出会ったカナダ人男性と、結婚を前提に交際をスタート。
今ほど英語がうまくしゃべれなかった駒井さん。交際当初はうまく言語コミュニケーションがとれないこともあったとか。

●駒井さん27歳

イラストや漫画の仕事をするべく独立。

●駒井さん28歳


栄子同様、駒井さんも基礎体温や排卵日をよく理解していないところから不妊治療をスタート。

妊娠検査薬はフライングチェック


タイミング法を試みていたころは、生理予定日前に妊娠検査薬でのフライングチェックがおなじみに。
「薄い線のようなものが見えると一喜一憂していました」

PMS、排卵日の不調、生理不順のため受診

★駒井さんのキモチ
女性によくある症状と診断され、改善にはピル服用か妊娠か、と決断を迫られる。
「2〜3年飲まないと効果が出ないピルは、子どもが欲しい私たちには非現実的。そこで子づくりと入籍を決め、同時期にタイミング法を始めました」

入籍


「彼の家族に写真を見せたとき、インパクトが欲しかった」とご主人は和洋折衷スタイルで、入籍記念の撮影。

夫の精子数が0!

非閉そく性無精子症の可能性との診断。

原因不明の非閉そく性無精子症の診断を受け、Micro-TESEを提案される

★駒井さんのキモチ
「さすがに前向きな夫も、その診断にはショックだったよう。しかもMicro-TESEを行っても精子の回収率は30%程度。確率の低さに手術にしり込みし、次のステップまで少し時間がかかりました」

●駒井さん29歳


駒井さんのご主人に提案されたMicro-TESE。手術法のすさまじさにあぜん。この手術だとなかなか決心できないのも納得。

精子を数個確認。顕微授精が可能と判断され、不妊専門クリニックへ転院

★駒井さんのキモチ
精子が見つかったことで、Micro-TESEではなく顕微授精を行うことに。
「術前に体外受精と顕微授精の説明会に夫婦で行きました。夫は自分のこととして受け取ってくれず、『もうちょっと協力的になってよ』と思いました(笑)」

●駒井さん30歳


駒井さん30歳

最初の採卵

★駒井さんのキモチ
麻酔なしで低刺激採卵を行う。年齢もまだ若く、ホルモン状態も問題ないので、それなりの数は取れるだろうという医師の判断だったものの、採卵は3個。
「しかも未熟卵が1個、受精失敗が1個、胚分割停止が1個で結果は全滅。甘い期待が裏切られて少し自信がなくなりました」

2度目の採卵


「たくさん採れた喜びもつかの間、受精や培養過程で脱落していく受精卵。なかなかうまくいかないものだなぁ、と」。
見通しが楽観的だったぶん、その落差でよけい落ち込んだそう。

★駒井さんのキモチ
アンタゴニスト法で行う。7個採卵で、未熟卵が1個、受精失敗と分割停止が各2個、7分割胚凍結と胚盤胞凍結が各1個という結果に。7分割胚を移植。
「移植したものの、着床不全や不育症など、どんなトラブルが起きるかわからない状況。だから全然安心できませんでした」

陽性判定


「最初の血液検査の結果だけでは妊娠の実感わかず。胎嚢、心拍と確認できたことで、赤ちゃんができた、とうれしくなりました」

★駒井さんのキモチ
「妊娠判定、血液検査の結果だけで夫は産まれたくらいの喜びようでしたが、私はまだ不安で……。胎嚢、心拍が確認でき、徐々に実感がわいてきました。不妊治療の経験から、出産は当たり前ではないことがよくわかったので、両親に報告したのは安定期に入ってから。とにかく一日一日を無事に乗り越えることが目標で、妊娠したことは最低限の人にしか伝えませんでした。不妊治療は妊娠することがゴールになりがちですが、妊娠してからも不安を一つ一つつぶしながら生きていく感じでした」

●駒井さん31歳・出産


長男は帝王切開で出産。
「夫は生まれた瞬間から息子にベタぼれ(笑)。私は、やっとひと安心って気持ちが大きかったです」

●駒井さん33歳・次男の自然妊娠が判明、出産


聡いお兄ちゃんとマイペースな弟くんと、性格はまったく異なるものの、仲よし。
「このままずっと仲のいい兄弟でいてほしいです」

★駒井さんのキモチ
第二子はどうすべきか、凍結している受精卵をいつ戻すか、と夫婦で話し合っている最中でのまさかの自然妊娠。
「一度は無精子症と診断されたのに、なぜ?とクエスチョンマークでいっぱい。今でも理由は判明していません」

『妊活夫婦』

32歳の幸田栄子は、夫・一郎と結婚2年目で妊活を開始するもなかなか妊娠できず、不妊治療をすすめられる。「うっすら陽性」「はじめての採卵」「仕事か治療か」など不妊治療あるあるをリアル&コミカルに描き、共感を呼ぶ。comicoほか、Kindle版も好評発売中。

著者:駒井千紘さん

メーカーで商品企画を経験後、独立して漫画家·イラストレーターとなる。自身の約2年にわたる不妊治療の経験を投影した『妊活夫婦』が評判を呼ぶ。現在comicoで『妊活夫婦』第二章を好評連載中。二児の母。

●漫画/駒井千紘 ●文/津島千佳


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