2月に入り、梅の香がほのかに匂う頃となりました。今、梅も咲く静嘉堂文庫美術館(東京都世田谷区)では、「磁州窯(じしゅうよう)」をテーマにしたやきものの展覧会を開催しています。白化粧(しろげしょう)と黒釉(こくゆう)に代表される装飾技法の数々から、静嘉堂ならではの所蔵品を余すところなく鑑賞することができます。

2020年は「鉅鹿」発見から100年

今年2020年は、近代における宋磁蒐集の契機となった「鉅鹿(きょろく)」遺跡と磁州窯の陶器の再発見からおよそ100年にあたります。磁州窯とは、10世紀以降現代まで日用の器を大量に生産した民窯(民間の窯)です。白化粧、黒釉、掻落…モノクロを強調した表現をはじめ、鉄絵・赤絵、三彩・翡翠釉など、様々な技法を用いた表現豊かな陶器がこの窯から生まれました。本展では、静嘉堂文庫美術館所蔵の磁州窯とその周辺(磁州窯系)の陶器、宋磁の美の極み「曜変天目(稲葉天目)」などの名品が惜しげもなく展示されています。キャッチコピーの「白黒つけるぜ!」は、静嘉堂文庫美術館の気合いのあらわれです。鑑賞者も、白黒はもちろん色彩に光…様々なやきものの表現を受けてたちつつ、味わいたいですね。

「黒釉線彫蓮唐草文瓶」 磁州窯系 金〜元時代(13〜14世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】
「黒釉線彫蓮唐草文瓶」 磁州窯系 金〜元時代(13〜14世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】


磁州窯と磁州窯系の違いとは?

作品名の次に「磁州窯」または「磁州窯系」と記されていますが、この違いは何かと言うと…。
「磁州窯」…磁州窯で焼かれたと分かっているもの。
「磁州窯系」 …磁州窯で焼かれた作品と同様の技法を用いているが、窯の特定ができないもの。または近隣の窯で焼かれたもの。
ちょうど放送中のNHKの朝ドラ「スカーレット」でも、土によってやきものが変化することが表現されていますが、やきものに欠かせないのは、「良い土と良い水である」と、言われています。窯のある場所によって作風が変わるということですね。磁州窯のやきものの再発見から100年の間、多くの研究者がこれは磁州窯、こちらは磁州窯系…と一つひとつ吟味して保存してきた姿が浮かびます。それを今、間近に見ることができるのは奇跡のようですね。

「三彩白地搔落束蓮文枕」磁州窯系 金時代(12〜13世紀) 静嘉堂文庫美術館所蔵
「三彩白地搔落束蓮文枕」磁州窯系 金時代(12〜13世紀) 静嘉堂文庫美術館所蔵

見逃したくない、同時代の美

同時代に他の窯で焼かれた美しい作品も少しご紹介しましょう。
まずは、青磁と並んで宋磁を代表する白磁の名品、重要文化財「白磁刻花蓮花文輪花鉢」です。こちらは定窯で焼かれた作品です。
定窯は白磁の名産地であり、その特徴は柔らかく温かみのあるアイボリーホワイトの釉色と、薄い器に片切り彫りで刻まれた流麗な文様です。こちらは縁起が良く好まれた蓮の花をモチーフにし、清らかな白と優しい輪郭により、まるで観音さまの手のひらのような豊かさを感じる作品です。本作は茶の湯の水指として、加賀藩主前田家に伝わった品です。ぜひ、この繊細にして優しい器に癒されてください。

「白磁刻花蓮花文輪花鉢」定窯 北宋〜金時代(11〜12世紀) 重要文化財 静嘉堂文庫美術館所蔵
「白磁刻花蓮花文輪花鉢」定窯 北宋〜金時代(11〜12世紀) 重要文化財 静嘉堂文庫美術館所蔵

宮廷専用の陶磁器を生産していた窯を官窯と言い、南宋時代には首都に置かれていました。南宋の官窯では、青磁のみが生産され、宮廷に納められていました。中でも本品は、南宋官窯青磁を代表するといわれる名品で、この澄んだ青緑色に貫入(釉薬のヒビ)が特徴的な作品です。色彩の優美さに、見るたびに綺麗だなぁと見惚れてしまいます。

「青磁鼎形香炉」 南宋官窯 南宋時代(12〜13世紀) 静嘉堂文庫美術館所蔵
「青磁鼎形香炉」 南宋官窯 南宋時代(12〜13世紀) 静嘉堂文庫美術館所蔵

概要 他

展示だけでも十分楽しいですが、庭園を有する美術館ですので散策もおすすめです。展覧会関連イベントも目白押しですので参考にしてくださいね。
【概要】
―「鉅鹿」発見100年― 磁州窯と宋のやきもの
会期:2020年1月18日(土)〜3月15日(日)
[休館日:毎週月曜日(ただし、2月24日は開館)、2月25日(火)]
開館時間:午前10時〜午後4時30分(入館は午後4時まで)
会場:静嘉堂文庫美術館 SEIKADO BUNKO ART MUSEUM
(〒157-0076 東京都世田谷区岡本2-23-1)
入館料:一般1,000円、大高生・高校生および障害者手帳をお持ちの方(同伴者1名含む)700円、中学生以下無料 ※20名以上の団体は200円割引
問い合せ先:03-5777-8600(ハローダイヤル)
<イベント情報>
・講演会「磁州窯と磁州窯系諸窯、そしてその影響の軌跡」
講師:守屋雅史氏(神戸松蔭女子学院大学教授)
2月22日(土)午後1時30分開演 定員120名
※当日開館時より整理券配布(1名様につき1枚)
・静嘉堂コンサート「100万人のクラシックライブ」
3月7日(土)午後2時開演予定 定員100名 事前申込み制
※詳細は公式サイトをご参照ください
・列品解説
午前11時〜:2月29日(土)
午後2時〜:3月12日(木)
【参考・引用】
プレスリリース
プレス内覧会時ギャラリートーク
聚美vol.34 特集「鉅鹿」発見100年ー磁州窯と宋のやきもの