冬の山は危険なイメージが付きまといます。周囲の人を安心させるためにも、せめて万全な気象条件を選んで登りたいものです。今回、冬というには早すぎますが11月の燕岳に登って、これなら天気の面でのリスクは少ないだろうという条件を考えました。これからの季節の山行に役立てていただければ幸いです。

まずは現在の天気を把握しよう

夏でも冬でも、天気の予想にはまず現在の状況を把握することが重要です。今回は2020年11月1日(日)、日帰りで燕岳の山頂を目指します。合戦尾根の登山口、中房温泉までの路線バスが運行する最後の週末です。
出発2日前の10月30日(金)は西高東低の気圧配置でした。寒気の影響で日本海には筋状雲が発生し、北陸から北海道では冷たい雨が降りました。北アルプスは雨ではなく、雪が降り積もったことが推測されます。翌31日(土)になると高気圧が移動性になって本州付近にやってきました。北陸以北の日本海側でも日中は天気が回復して快晴の青空が広がったので、多くの登山客が入山したようです。前日に降った雪で、谷川連峰の仙ノ倉山では初冠雪が観測されています。


登山ができる天気か考えよう

天気予報を地上天気図、高層天気図を見比べながら、11月1日の天気を予想しましょう。晩秋以降の登山ではそもそも登山に適した天気なのかの判断が重要です。天気次第では入山しないという選択肢も含めて、夏以上に柔軟な行動を心がけましょう。

まずtenki.jpサイト内の『山の天気』で、燕岳やふもとの気象情報を見てみます。『山の天気』ではふもとの街の天気予報や、山岳付近の数値計算結果を掲載しています。1日の燕岳のふもとの大町市ではおおむね晴天が続き、風も弱いようです。ただ、この予報はあくまでふもとの天気予報であって、山頂の予報ではありません。山頂の様子を推し量るヒントになるものが数値計算結果です。それによると山頂に近い3100m付近の風速は午前9時で9.1m/s、午後3時には11.7m/s、翌日にはさらに風が強まる予想でふもととは傾向が異なることが示唆されています。天気の傾向をさらに詳しく知るために、高層天気図を確認しましょう。

地上の高気圧と対応している500hPaのリッジは1日9時の段階ですでに日本の東にあり、西からはトラフが近づいてきています。リッジが離れていくため地上の高気圧の中心は東に抜けて、日本列島は高気圧の後面に入っています。気温の予想を見ると、西から近づくトラフは中心に-39℃の強い寒気を持っています。

寒冷前線のだいたいの場所は、等温線や相当温位線の集中帯から推定できます。相当温位の予想図を見ると、夜にかけて寒冷前線は沿岸部に達することはなさそうですが、前線の前方にも湿り気が広がっているのがやや気になるところです。700hPaの湿り域が日本海に広がって夜には沿岸部にかかりそうです。前線が接近する前に、日本海側では雲が広がってくるかもしれません。また、前線の南側では南西の風が強まります。数値計算結果による風の強まりは、この南西風を表現しています。
以上のことから、11月1日は天気の崩れはなさそうですが、次第に雲が多くなり、寒冷前線が近づくにつれて南西風が強まることが予想されます。翌2日には寒冷前線の通過に伴って風向が西から北西に変わり、寒気移流が強まることで冬の荒天になりそうです。
晴れるかどうかという指標と同じくらい、寒気移流が強くないか、また風が強くはないかを確認しておくことが重要です。移動性高気圧の前面では、北西からの季節風が残るため日本海側の山岳では平地に比べて風や雪が長引くことが少なくありません。陸風が吹く夜間は一時的に天気が回復しても、陸風がやむ日中はガスに包まれ視界も悪くなりがちです。一方、移動性高気圧の後面では次第に巻雲などの上層雲が目立つようになりますが、風が弱く、さらに風向きが南よりになるため日本海側の山岳で天気が回復します。冬の山では、ただ高気圧を待つというよりも、今回のような高気圧の直下〜後面を狙うとより安全です。