過去7シーズン連続でプレーオフから遠ざかっているニューヨーク・ニックスは、今年3月に元代理人のレオン・ローズを新たな球団社長に抜擢し、6月24日にはバスケットボール界で幅広い人脈を持つ“ワールド・ワイド・ウェス”ことウィリアム・ウェスリーをエグゼクティブ・バイスプレジデント兼シニア・バスケットボール・アドバイザーに任命。古豪復活に向けて着々と動き出している。

 現在は新たなヘッドコーチ(HC)を探しており、その候補にはトム・シボドーやケニー・アトキンソン、マイク・ウッドソン、現在ロサンゼルス・レイカーズでアシスタントコーチ(AC)を務めるジェイソン・キッド、今季途中から暫定HCを務めるマイク・ミラーやベッキー・ハモン(サンアントニオ・スパーズAC)といった名前が挙がっている。

 6月17日(日本時間18日、日付は以下同)に『SNY』のインタビューに応じたローズは、新HCとの契約について「我々は7月の中旬から下旬、7月の終わりには決めることになると見ている」と話していたことから、慎重に吟味していることが窺える。
  数いる次期HC候補のなかでも、ウッドソンはチームが最後にプレーオフへ進出した2012−13シーズンに指揮を執っていた人物だ。

 11−12シーズン途中からマイク・ダントーニHC(現ヒューストン・ロケッツHC)の後を継いで指揮官となったウッドソンは、翌12−13シーズンに、ニックスをイースタン・カンファレンス2位の54勝28敗(勝率65.9%)という好成績に導いた。

 このシーズンのニックスは、カーメロ・アンソニー(現ポートランド・トレイルブレイザーズ)とアマレ・スタッダマイアーの周囲にキッドやタイソン・チャンドラー(現ロケッツ)、カート・トーマスといった百戦錬磨のベテランを配置。バックコートとウイングにはレイモンド・フェルトンやイマン・シャンパートにJR・スミス、ロニー・ブリューワーといったロールプレーヤーがおり、若手とベテランがうまくブレンドされたロースターで勝ち星を伸ばした。
  だがこのチームの特徴は、なんと言ってもカーメロのパワーフォワード(PF/4番)起用だろう。ウッドソンはアマレをベンチスタートにし、ポイントガードのフェルトンとキッドをバックコートに、チャンドラーをセンター、スモールフォワードにはディフェンダーのシャンパートまたはブリューワーを配置するスターターを形成。水を得た魚のように伸び伸びとプレーしたカーメロは、このシーズンに平均28.7点で自身唯一の得点王となったほか、平均3ポイント成功数では自己最多となる2.3本を沈めた。

 6月24日に掲載された『SNY』の記事の中で、ウッドソンは当時についてこう振り返っている。

「カーメロは多くの4番よりもちょっと小さかったから、ディフェンス面で必要であればカバーすることになると思っていた。でも彼はディフェンスでも踏ん張ってくれたんだ。そしてオフェンス面では、4番のカーメロをガードできる選手はいなかった。1人もね。そのことは我々も把握していたのさ。だからこそ、彼は4番というポジションで活躍できたんだ。そしてあのチームは数多くの勝利を手にすることができた」
  カーメロの4番起用のほか、得点力のあるスタッダマイアーとスミスをベンチスタートにしたことも成功の一因と言えるだろう。多くの攻撃機会を得たことでカーメロはキャリア2番目のFG試投数(平均22.2本)を記録するとともに、マッチアップ相手のPFをスピードやスキルで攻略し、高得点を稼いだのである。

 もっとも、カーメロは2008年の北京オリンピックや12年のロンドンオリンピックなど、国際舞台でPFとして活躍してきた実績はあった。12年8月2日のナイジェリア戦ではわずか14分の出場で3ポイントを83.3%(10/12)の高確率で決め、37得点の大暴れを見せたこともあった。

 前指揮官のダントーニHCは当時、アメリカ代表のACを務めていたため、ウッドソンはダントーニからカーメロについていずれ4番で起用するプランを聞いていたと受け取ることもできる。

 いずれにせよ、カーメロをはじめとする選手たちの信頼を勝ち取り、ウッドソンはニックスで近年最後とも言える成功を収めたのだから、もっと評価されていいのかもしれない。ウッドソンが再びニックスで指揮を執るかは別問題だが、カーメロにとってキャリアベストのシーズンを演出したことは間違いない。

文●秋山裕之(フリーライター)

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