国内女子ツアー開幕戦のアース・モンダミンカップは、最終日を月曜日に順延して行われ、最終決戦は昨年の賞金女王・鈴木愛と、賞金ランキング115位の渡邉彩香のプレーオフに持ち込まれた。

 プレーオフ1ホール目の舞台は、最終18番パー5。両者ともにティショットを左のラフに打ち込んだが、確実にボールをアイアンでフェアウエーに出した鈴木に対し、渡邊は積極果敢に3番ウッドを手にする。豪快なスイングで打ち出されたボールはグリーン手前の花道をキープ。そこからピン左上4メートルの距離につけた。

「得意なスライスラインを残したかったので、あえてピンの上につけました」

 先に鈴木がバーディパットを外すのを見た後、ゆっくりとアドレスに入る。カップの左を狙ってストロークしたボールはラインに乗り、カップに向かって転がっていく。パターを持った左手を高々と上げた瞬間、ボールはカップの中へ沈んでいった。15年の樋口久子ポンタレディスでツアー3勝目を飾って以来、実に5年ぶりの勝利となった。
 「ここ数年はずっと不調だったので、もう勝てないのかと思っていました」と渡邉は言う。ツアー屈指の飛距離を武器に、15年には年間2勝を挙げ、賞金ランキング6位となった。翌年のリオ五輪日本代表の座も手にするかと思われたが、あと一歩届かなかった苦い思い出がある。

「その頃に、持ち球のフェードボールをストレートボールに近づけようとしたんですが、それがスイングの迷いにつながりました」。いつの間にかドライバーイップスに近い状態になり、打てば曲がるという悪循環に陥っていた。気がつけば、18年にシード権を手放し、昨年は30試合に出場してわずか7試合でしか予選通過できなかった。「予選通過どころか、今日はいくつ叩くんだろうという気持ちでティオフする毎日でした」。自分に対して激しい怒りを覚えたり、涙があふれそうにもなったが、「試合でしか身につかないこともある」と信じ、どれだけ予選落ちが続いてもひたすらエントリーし続けた。
  もちろん、渡邉なりに打開策を探していた。それまでコーチに習うことがなかったが、昨年6月から中嶋規雅コーチに教わり始め、秋口から本格的なスイング改造に着手した。さらに、同じ時期にメンタルトレーニングも始めたという。

「鈴木颯人さんという方で、著書を読んだのがきっかけでお話を聞きにいくようになりました」

 サーフィンの選手へのアドバイスで、サーフボードの上に立ったら落ちたくないと思うのではなく、立ち続けることを意識するべきだという内容だった。「そのことを鈴木さんに話したら、ゴルフも同じ。曲げたくないと思わずに、ボールに対してハードヒットを心がけろとアドバイスされました」。以来、曲がることへの不安は消え、昔のように大好きなドライバーを思い切り振れるようになった。
  ドライバーショットに自信を持ち始めたことで、昨年の最終予選会も19位で突破した。手応え十分で今季を迎えたが、開幕戦が約4か月遅れても影響がないことを証明するかのように、この試合ではドライバーショットが好調だった。最終日も、勝負どころの16、17番でドライバーを振り切り、連続バーディにつなげ、鈴木に追いついた。

「リオ五輪の代表を逃した悔しさを晴らしたいとずっと思っていました。東京五輪とはあまりにもかけ離れた位置にいますが、来年に延期になったことで、もしかしたらがあるかもしれません。今後も一生懸命に頑張ろうと思います」

 あきらめた夢に向かってもう一度歩き出すことを誓った渡邉。1勝だけでは完全復活とは言えないだろうが、大型プレーヤーとして期待されていた選手が地獄まで落ち、そこからはい上がってきたのは事実。どこまで夢に近づけるのか今後も注目していきたい。

取材・文●山西英希

著者プロフィール/平成元年、出版社に入社し、ゴルフ雑誌編集部所属となる。主にレッスン、観戦記などのトーナメントの取材を担当。2000年に独立し、米PGAツアー、2007年から再び国内男子、女子ツアーを中心に取材する。現在はゴルフ雑誌、ネットを中心に寄稿する。

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