MLBのキャンプが再開された現地時間4日、田中将大(ヤンキース)はチームメイトの打球を頭に受けたが、幸い今のところは後遺症もなく、大事には至ってはいないようだ。

 打球が当たれば、大怪我をするだけでなく、命を落とすこともある。1970年には、マニー・モタ(当時ドジャース)の打ったファウルが、観戦していた14歳の少年を直撃。この少年は、4日後に亡くなった。昨年5月にも、アルバート・アルモーラJr.(カブス)の打球が、観戦していた5歳の少女に直撃するという痛ましい事故があった。幸い少女は一命をとりとめたが、この悲劇を受けて、各球場で観客席のネットを拡張する動きが出ている。

 2007年には、当時ロッキーズ傘下の2Aで一塁コーチを務めていたマイク・クールボーが、頭に打球を受けて35歳で死去した。彼は95〜96年に阪神でプレーしたスコット・クールボーの弟だ。クールボーの事故を受け、コーチャーズ・ボックスではヘルメットをかぶることが義務付けられた。
  それほど普及はしていないものの、投手用にも頭部を保護するキャップは存在する。14年にアレックス・トーレスが初めてかぶった保護キャップは、分厚いパッドが周囲を取り巻いていたのでかなり大きく、「スーパーマリオの帽子のようだ」と選手から不評を買っていた。

 ただ、近年は進化を遂げ、前面内側にパッドを挿入した保護キャップが登場。見た目は普通のキャップと変わらず、ピッチャー強襲のライナーを危うくかわした経験のあるコリン・マキュー(現レッドソックス)や、打球を頭部に受けて頭蓋骨骨折の重傷を負ったことがあるマット・シューメイカー(現ブルージェイズ)などが着用している。さらに、試作品として、上部のないサンバイザーのようなヘルメットも作られている。

 投手の場合、バットに弾き返された打球が自身に達するまでの時間は、観客や一塁・三塁コーチよりも短い。田中を襲ったスタントンの打球は、112マイル(約180.2キロ)だったという。頭に重みが加わることで投球フォームに狂いが生じる恐れはあるが、適応は可能なはずだ。田中に限らず、すべての投手は防護キャップをかぶるべきではないだろうか。惨事が起きてからでは遅すぎる。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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