「クレヨンしんちゃん」は1992年にスタート。嵐を呼ぶ5歳児・野原しんのすけの活躍を描いたストーリーが、お茶の間に反響を巻き起こしてきた。

最近でも、「ドクターX」や「科捜研の女」などテレビ朝日の人気番組との遊び心たっぷりなコラボ展開のほか野原家の愛犬・シロがスーパーヒーローとなって世界を救う作品「SUPER SHIRO」も配信されるなど(※2019年10月よりAbemaTV、ビデオパスで独占配信)、“しんちゃんワールド”は、ますます進化を遂げている。 

そんな大人から子どもまで幅広い世代に愛され続けている「クレヨンしんちゃん」の三代目監督・ムトウユージ氏に、作品に対する思いや、今まで挑戦してきたことなどを聞いた。

2019年10月より土曜昼4時30分の枠に移動となったアニメ「クレヨンしんちゃん」(毎週土曜昼4:30-5:00、テレビ朝日系)。

■ ムトウ氏「パワーアップはしています(笑)」

――放送枠が変わりましたが、何か変化はありましたか?

基本的には、枠が変わったから何か変えた、ということはないですね。ゴールデン枠ではできないことも「よし!いろいろ攻められる」という意識の変化はあったかもしれません。

日常を描いているからこそ、急にスーパーマンになるわけにもいかないですけど、しんちゃんがお尻を使って鉄棒で大回転してみたり、おならをしたらパンツが破けちゃったり、ささいなところでパワーアップはしています(笑)。

――20年以上携わられていて、これまでどんな変化が「クレヨンしんちゃん」にあったのでしょうか?

時代の変化もあって、「ぞうさん」は出せなくなりましたし、キャラクターの言葉の言い回しもその時代の話し方を入れたりしています。

そのほかの変化で言うと、風間くんがスマートフォンを使用していたり、時代の物も5歳児なりの取り入れ方をしています。

――作品の中も時代によって進化していくのですね。

そうですね、今の「クレヨンしんちゃん」は2020年をテーマにしている作品である、ということが軸になっています。35歳のヒロシと29歳のみさえと、5歳のしんのすけ、そして0歳のひまわりが過ごしている2020年の日常を描いていければなと思います。

■ 挑戦し続けてきた「クレヨンしんちゃん」

――印象に残っている“時代を反映した”ことは?

テレビが地デジに代わる時に、野原家では地デジ移行が間に合わなかったというエピソードが一番印象的ですね。地デジカも出しましたし(笑)。風間くんの声を担当している真柴(摩利)さんが地デジのコマーシャルでナレーションを務めていて、その時のせりふを全てお借りして、本編で使用したことがあります。…真柴さん苦笑していましたけど(笑)。

――パロディー要素はほかにも?

いろいろ挑戦してきましたね。今はできないですけど、代表的な作品だと「名探偵コナン」(日本テレビ系)もやりました。目のハイライトもコナンくん風にして、音楽も「名探偵コナン」っぽい曲を作ってもらいました! でもよく聞けばいつもの「クレヨンしんちゃん」の曲なんですよ。

おケイ役の高山みなみさんはコナンの声をやっているので、「コナンに似ているようで、似ていない声」でとリクエストし、ナレーションをしてもらいました。

――「名探偵コナン」以外には?「探偵物語」の松田優作さんのまねをヒロシがしたり、金田一耕助のまねをみさえがしたりと、これまでいろいろなことを試してきました。僕は金田一シリーズとか、松田優作さんが大好きなので、作品に取り入れて遊んでいました。「怒られるかな?」とも思ったんですけど、案外怒られなかったです(笑)。

――作品に対してはどのように向き合っていますか?

コンプライアンス的な問題で、前まで当たり前に表現できていたことが表現できなくなったりする苦しい状況は確かにありましたし、時代の流れも反映していくと、しんちゃんも波にのまれてしまうかもという不安もありました。

そのことを逆手にとった表現を考えることで、「これはいいのか?」「ここまではギリセーフなのか?」というボーダーラインを自分で試していました。

――ボーダーラインはどこで判断しますか?

とりあえずコンテでネタを描いてみてから、プロデューサーに「これ、いけるかな?」と相談して、そのボーダーを決めています。僕の中のポリシーは、「思い浮かんだものを一回、描いてみる!」というところにあるので、通らなければ通せるボーダーまで直したり、別のネタを考えたりしています。

■ ムトウ氏「しんちゃんだけは飽きない」

――作品を作ることを楽しんでいるのですね。

ギャグアニメなので、自分が楽しんで作ることで、見ている人も楽しんで見ることができると思っています。「あ!これ面白いな」と思い付いたことを、時間が許される限り入れるということをよくやっていますね。自分の中のフラストレーションも発散できますしね。

――「クレヨンしんちゃん」が国民的アニメとして愛され続ける理由は?

一言で言えば、「キャラクターが生きている」というところでしょうか。「下ネタをやってもカワイイ」という一連の流れが、しんちゃんというキャラクターの“かわいさ”だったりするんです。

ほかにもしんちゃんのパンツが破けてしまって、そのパンツを一緒に買いに風間くんやマサオくんが付き添ってあげているというところが、彼らの友情が出ていて “かわいい”と感じるところなのだと思っています。

――最後にメッセージをお願いします。

20年以上携わって生きていますけど、僕はまだしんちゃんの全てをつかみ切れていないです。そこをずっと飽きないで楽しんでいくことが、僕のぶれない所だと言い切れます。普通だったら、長く続けると半年か一年で、飽きてしまうことがあると思うんですけど、しんちゃんだけは飽きないんです。

これからも、しんちゃんと二人三脚で、皆さんに笑いや感動、面白さを伝えていきたいです。(ザテレビジョン)