毎年夏に公演が行われている「2万人の鼓動 TOURSミュージカル『赤毛のアン』」。2020年の主演、アン・シャーリー役にモーニング娘。OGの田中れいなが決定した。田中は2019年公演に続き、2年連続でのアン・シャーリー役となる。

18年続く本ミュージカルでは、過去、神田沙也加、島谷ひとみ、美山加恋、高橋愛、上白石萌音らがそれぞれのカラーで同役を演じており、昨年は田中も誰にも代えがたい“赤毛のアン”を送り届けた。

数多くの舞台、ミュージカルで主演、ヒロインに就き、演技、歌唱ともに評価の高い彼女だが、「赤毛のアン」は「今まで以上に必死でした」と振り返る。昨年の体験、涙があふれたというファンレター。“2年目のアン”に向ける意気込みを聞いた。

■ 心を打たれた一通のファンレター

――2年連続でアン・シャーリー役。うれしいお知らせですね。お気持ちはいかがですか。

田中れいな:もちろん、とてもうれしいです。エステーさんの「赤毛のアン」はきっと来年もあるだろうけど、それが私だとは思っていなかったんですね。だから昨年は、「これが私の最初で最後の『赤毛のアン』だ」って、そういう気持ちで舞台に立っていたんです。今年に入ってお知らせを頂いて、びっくりしたし、本当にうれしかったです。

――2年目で、もう不安はない感じですか?

田中:不安はないですが、昨年とは違った「大丈夫かな…」が出てきているところです。「赤毛のアン」が終わって1年、いろいろなお仕事をさせていただいて、たくさんの出会いがあって、“田中れいな”もちょっとは成長しているんですよ。

昨年はとにかくがむしゃらに、自分が思うアンを全力で演じましたけど、今年は1年の成長を踏まえて、昨年を超えるアンをお見せしないといけない。そういうプレッシャーを感じています。

――昨年は全国8都市を巡り、10公演を行いました。振り返って、どんな思い出がありますか?

田中:うわぁ、思い出ありすぎです(笑)。まず一番うれしかったのが、公演期間中に子どもたちからお手紙をもらったこと。「赤毛のアン」はファミリー向けなので、子どもたちもたくさん見に来てくれて、ファンレターをくれる子もいるんです。

一生懸命書いてくれたんだなっていうのが分かるお手紙で、その中に「『赤毛のアン』が大好き」という子からの一通があったんです。「今まで見た『赤毛のアン』の中で、今回のアンが一番好きです」と書いてあって…、泣きました。

私のファンではないんですよ。「今回、アンを演じた田中さんへ」とあって、たぶん、“元モー娘。田中れいな”というのを知らない子。そんな子が私のアンを見て、「田中さんみたいな『赤毛のアン』に出られるような女優さんになりたいです!」って書いてくれていたんですよ。「え!? 女優? れーなのこと、女優って言ってくれるの!」って、感動でしたね。

――それはうれしいですね。

田中:私のお芝居がちゃんと届いているんだって、うれしかったし、パワーをもらったし、もっと届けられるようにと意識も一段と高まりました。

■ 珍しく歌で苦戦。頭はパンク寸前に

――稽古や本番の思い出はどうですか?

田中れいな:稽古は1カ月半くらい。それまでの出演作ではだいたい2、3週間だったので、「あ、けっこうあるな」と。案外平気かもと思っていたんです。でも、私以外のキャストさんは今まで「赤毛のアン」に参加してきた方々で、私は主役のアンなのに、スタート地点が皆さんより低かったんですよね。

それは当たり前のことなんですが、私は遅れを取りたくないと思う性格なんです。足手まといにもなりたくない。だから、今まで以上に必死になりました。最低限、合流初日から台本を外せる(手放せる)ようにしておこうって。

――最低限のラインが高いですね。

田中:そうですか?(笑) “ミザンス付け”と言って、場位置を付ける立ち稽古があるんですが、普通だと数日から1週間くらいでミザンス付けに入るんです。でも、「赤毛のアン」では合流2日目でミザンス付け、3日目でもう通し稽古だったんですよ。「無理やろ!」と思ったんですけど、なんとか通せて、覚えてきて良かったなって思いました。

――普段、台本はどのように覚えられるんですか?

田中:私は耳で覚えるタイプで、昨年は、アンのセリフ、相手のセリフを一人芝居で録音して、お風呂に入るときもずっとそれを聴いていました。本当に一日中聴いているときもあったし、ここまですれば稽古までに覚えられるんだって知れましたね。

――得意の歌のほうはどうでしたか?

田中:歌は苦戦しました。私、曲の覚えは人一倍早いと思っていたんですが、「赤毛のアン」に関しては1曲につき1、2箇所、どうしても歌えきれないところがあったんです。リズムのせいなのかな? 自分の中では当たり前だと思っていた流れがなかったというか…。変拍子みたいなところが多くて、私の感覚なら入る箇所で入らず、2テンポ遅く入ったり。そういうところにぶつかったんですよね。最初の歌稽古のときは、「帰りたい…」ってなりました(笑)。あんなに練習してきたのに、「こんなにできんか」って。

今回は仮歌がなくて、オケと譜面だけだったというのも大変でした。ピアノで音を出しながら、「この音? ここで? おかしくない?」みたいに、一つ一つ確認です。

全22曲を2日間の個人レッスンで教わって、もう頭はパンク寸前でした。でも、そうやってぶつかったからこそ、合流前にセリフも歌も覚えられたし、通し稽古でも気持ちのままに動けたし、人間、やればなんでもできるようになるんだなって思いました。

私、追い込まれないと覚えられないタイプで、そう思うと「赤毛のアン」は1カ月も前から追い込まれていたんでしょうね(笑)。

■ 私自身の感性を出せば、それが私だけのアン・シャーリーに

――実際に演じて、アン・シャーリーのどういうところに魅力を感じましたか?

田中れいな:感情を偽(いつわ)らない、真っすぐな女の子、というところ。思ったことをそのまま口に出し、行動にも出すじゃないですか。飾った子より、私はアンのような子のほうが好きですね。

マシュー、マリラに引き取られてからは家族愛がどんどん大きくなっていって、ダイアナという初めての親友もできて。アンの成長を直に実感できたのも、演じられて良かったと思うところです。

――アンは大人目線で見ると、こまっしゃくれたところがある子どもです。そういう小生意気さはどう感じましたか?

田中:え!? 全然感じなかったです。基本、私が生意気だからかもしれないです(笑)。私の感覚だと、アンは生意気というより、すごく純粋な子なんですよね。

考え、メルヘンじゃないですか。並木道を通るだけでこんなにも喜べる女の子っていないぞって。思ったことを口にするのも、良くも悪くも子どもだからいいんじゃないかなって思います。

――では、そんな田中さんが思うアン・シャーリーを作る上で、こだわった部分というのはありますか?

田中:お芝居の技術的なことはあまり考えたことがなく、自分自身の色を出せば、それが誰とも違うアンになると思っていました。

これ、昨年もお話ししましたが、私、普段の見た目がアンじゃないじゃないですか。だからこそ私の思うアンになれば、それが“田中れいなのアン・シャーリー”になるんじゃないかなって。そこは自分の感性を信じてです。

あとは、うまくできたかどうかは分からないですが、舞台のシーンではカットされている原作の部分。そのカットされている部分にどういう物語があったのか、感情の流れとか、そういうのをセリフがなくても伝わるように表現しようと考えました。

■ 感情を届ける音楽の力。ミュージカルの魅力を知ってほしい

――このTOURSミュージカルは、ミュージカルの素晴らしさを広めたいという、主催のエステーの思いから始まったものです。近年は2.5次元人気のおかげでミュージカル作品も多くなりましたが、まだまだ観劇を躊躇する人も少なくありません。そんな方々に伝えたいミュージカルの魅力とはどういうものでしょうか?

田中れいな:私もモーニング娘。の半ばくらいまで、お芝居ってあまり得意ではなかったんですよね。唯一救いだったのがミュージカルで、ミュージカルは歌があったからまだなんとかやっていられた感じです。

今でこそ田中れいなを“なし”にて、相手に感情を届け、相手の感情に返して、というところに楽しさを感じていますけど、昔はセリフをしゃべっている自分に、「私、何をしているんだろう」という感じだったんですね。

相手の感情が高まってトーンが変わっても、私は最初に言われた通りのそのまんま、みたいな。でも、それでいいじゃんって思っていたんですよ。早くライブをやりたいって、そればかりだったんです。だから、「ライブをやって!」というファンの方の気持ちもすごく分かるんですよね。

けれど、たくさんの演技のお仕事を経験させていただいたおかげで、20歳くらいからお芝居がすごく楽しくなってきて、今は本当にミュージカルが大好きです。そういう好きになった経験でいうと、ミュージカルの魅力って、やっぱり歌、音楽の力だと思います。

――それは田中さんは歌が好きだから?

田中:それもあります。私、ストレートの舞台より、ミュージカル派なんです。ドラマと同じで、いいシーンで音楽が入ってくると、より感情が高ぶる、揺さぶられる。ドラマティックなBGMもそうだし、悲しいシーンでオルゴールチックなBGMが流れ出すと、知らずのうちに涙が出てくるんです。

そういう感情を動かす力が音楽にはあると思っていて、だから、お芝居と音楽が合わさったら「最強!」みたいな。小学生みたいだけど(笑)、それが一番伝わる言葉じゃないかなって思います。

■ 全力を出す大切さを教えてくれた子どもたちのキラキラパワー

――では、このミュージカル「赤毛のアン」の魅力とは?

田中れいな:「赤毛のアン」は元気になれる作品ですね。演じていてもそうだし、公演のビデオを見ていても。アンの喜怒哀楽というのが、人に元気を与えるものだと思うんです。

怒っていても、泣いていても、その後は自然ににこやかでハッピーな気持ちになってくる作品。大人の方にもそうだけど、子どもの心に響く作品だと思います。

――今作には、オーディションで選ばれた地元の子どもたちがアンサンブルとして出演します。最後に、これからの未来、「赤毛のアン」出演を目指す子どもたち、そして、アンを見に来る方々にメッセージをお願いします。

田中:毎公演、たくさんの子どもたちが参加して、中には役が付いて、一緒に全国の公演を回る子もいるんです。そういう子のパワーってものすごくて、キラキラパワーというか、本当に輝いているんです。

稽古は作り上げていく場で、80%、90%と高めていって、本番で100%。そう考えていたんですが、子どもたちは稽古のときから100%なんですよね。そんな子どもたちの姿から、稽古で100%にならなければ、本番で100%以上を見せることはできないということを教えられました。

私が全力でやれば子どもたちもさらに頑張って、100%以上の力がさらにつながっていくんです。そういう大切なことを学んだ作品で、そこに今年も主演として立てることがうれしいです。皆さん、ぜひ見にいらして、ミュージカルの楽しさを体験してください。

エステー主催の「2万人の鼓動 TOURSミュージカル『赤毛のアン』」は、全席無料招待制のミュージカルとなり、8月16日(日)から28日(金)までを予定している。北海道・札幌公演を皮切りに、宮城、東京、愛知、大阪、福岡、広島、埼玉にて上演。チケットが当たるオープンキャンペーンは4月上旬より実施される。(ザテレビジョン・取材・文:鈴木康道)