BS12 トゥエルビでは、3月28日(土)、「BS12スペシャル 人間の履歴書―歯が語る 生きた証―」(夜7:00〜)を放送する。

同番組は、災害発生時のご遺体の身元確認の重要性について近年の災害から学んだ日本がこれからなすべきことを探るドキュメンタリー。

番組では女性歯科医師たちが結成した日本身元不明・行方不明者対策チーム「JUMP」の活動や、震災から9年たった現在も震災に特化した「身元不明・行方不明者捜査班」を編成して地道な捜査を続けている宮城県警の取り組みを追っている。

注視するのは、世界で身元確認の重要な手段と位置付けられている「歯」、歯科法医学の実情。年齢推定や血液型・DNA型の判定ができ、治療痕から生活状況も推察できるため、歯は「人間の履歴書」とも言われている。法歯学の現実を丹念に取材し、体制構築が進んでいない日本の状況を伝え、警鐘を鳴らす。

番組を担当した、佐々岡沙樹プロデューサーに今作の制作意図を聞いた。

ーー「人間の履歴書」制作・放送の動機をお聞かせください。

佐々岡:1年半前のことですが、震災から7年半を経過した今も、東北の被災地では警察が地道に行方不明・身元不明の方の捜査を継続していることを知りました。それを知ってもらうだけでも、いまだご家族が行方不明の方々にとっては勇気になるのではないかと思ったことが始まりです。被害のことが忘れられていないという事実を伝えることが大切だと考えました。

一方で、現在の捜査の状況を知り、別の視点から大規模災害時の身元確認についてあらためて取材をしようと思って調べていくうちに、「歯」が身元確認においてとても重要であるということを知りました。たとえご遺体の損傷が激しく、時間が経ったとしても「歯」には情報が残るんです。

そこで千葉大学の法医学教室にコンタクトを取り、お話をうかがった結果、教育や研修面、全国的な連携、歯科情報のデータ化など、歯科所見を用いた身元確認システムの分野で、海外先進国に比べて日本は遅れをとっていることが分かりました。

身元不明の方の7割が歯科所見で特定されているという海外先進国の状況と比べて、日本は1割弱と言います。9割は身体的特徴や所持品での判断だそうです。

今後起こるかもしれない大規模災害に備え、日本はもっと状況を変えていかなければいけない。大きな課題だと感じて、今回の企画になりました。

ーー身元確認のシステム構築が進んでいる例として、タイを取材されています。

佐々岡:タイの取り組みがずいぶんと進んでいるという話で、どれほど日本が遅れているのか、「JUMP」の歯科医師の方々が視察に行かれるというので、同行させていただきました。タイでは考えていた以上に身元確認システムの構築に力を注いでいて、大地震がきっかけとなり国を挙げて動いている現実がありましたので、これを伝えたいと思いました。

タイに限らず、フィンランドやスウェーデンといった、スマトラ島沖地震で現地にいた国民に犠牲者が出た国も、スマトラ地震をきっかけにシステムをガラっと変えていました。

ーーそうした事実に目を向けてほしいという思いがありますか?

佐々岡:やはり国が主導するシステムが日本で整っていないところが海外との大きな差だと思います。今回取り上げた歯科医師の方々もずっと取り組んでいらっしゃるので、関係する人たちが海外との違いを目にすることで、少しでも前に進めばいいなという思いはあります。

この4月1日、死因究明や身元確認方法の充実に国・地方公共団体・大学が責務を負って取り組む「死因究明等推進基本法」が施行されます。一般の方が法律の施行に注目することはなかなかなく、光が当たりにくいことだと思うので、このタイミングでこそ放送したいと考え、3月末の放送となりました。

ーーCMを挟まずに放送するそうですね。

佐々岡:なかなか民放局ではできないことですが、スタッフで相談の上、この形に決めました。以前同様に放送した番組があり、いい形でご覧いただけた。それも踏まえ、番組のテーマに注目していただいた方に、最後まで一気に見ていただこうと考えました。

ーー最後に、ナレーターに眞島秀和さんを起用した理由を教えてください。

佐々岡:このドキュメンタリーは、震災被害を扱っており、言わば人の死を前提とした内容なので、どこまでいっても完璧な救いはないテーマだと思うんです。そんな番組に少しでも寄り添っていただけるナレーションをという視点で眞島さんにお願いしました。最後の眞島さんのナレーションが、番組を通して伝えたいメッセージです。

佐々岡沙樹プロデューサーは、2018年夏に「核の記憶 89歳ジャーナリスト 最後の問い」を制作。日本現役最高齢のテレビディレクターといわれた鈴木昭典さん(2019年1月逝去)が取材を手掛けた同作は、南太平洋と日本の「ヒバクシャ(被爆者)」を追いかけたドキュメンタリーで、映文連アワード2019審査員特別賞受賞、第6回ATP上方番組大賞・特別賞などいくつもの賞を受賞した。

3月28日(土)の「BS12スペシャル」では、「人間の履歴書ー歯が語る 生きた証ー」に続いて、「核の記憶 89歳ジャーナリスト 最後の問い」も放送する。(ザテレビジョン)