映画「もち」の公開が6月26日に岩手・一関シネプラザで始まり、6月27日に公開記念舞台あいさつを実施。小松真弓監督、主演の佐藤由奈らがトークショーを行った。

「もち」は、岩手・一関を舞台に「餅文化」を題材として、生活とともに息づく文化を1人の少女の視点から描いた作品。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で公開が延期されていたが、緊急事態宣言の解除を受け公開。東京では7月4日(土)から、渋谷・ユーロスペースで公開される。

舞台あいさつで小松監督は「人が人を思う優しい気持ちが日常にあふれていて、一関の人たちと一緒に人と人のつながりをきちんと残しておきたいと思いました。だから、私はこの映画を自分が作ったと思っていなくて、皆さんと一緒に一関を残せたらと思って作っていました」と、本作を作った根底の思いを語る。

撮影当時は中学3年生、今は高校3年生となった主演の佐藤は「撮影してから3年間たちましたが、その分熟成されていると思うし、一関で撮影した作品なので、皆さまに楽しんでいただけたら幸いです」とあいさつ。

初めてのオファーに関しては「生きていて、こんな経験は二度とできないと思って決断しました。最初に出会ったときは思いもしていませんでしたが、次に会ったときにもう私を主人公にして脚本を描いてきてくれたので、もう逃げられないと思いました(笑)」とはにかむ。

佐藤由奈にオファーした経緯を聞かれ、小松真弓監督は「きちんと物おじしないで私の目を見て話してくれて、その上ちょっと反抗的な目が良かったです(笑)」と笑いを誘う。

そして、「心の底から出演してほしいけど、撮影というのは本当に大変だから、誰かに言われたから出るのではなくて、由奈の決断をしてほしい。でもやるとなったら私も絶対に諦めない」と真剣な思いを伝えたという。

それに応えるように、佐藤も「私が主人公だけど、私の周りの一関や本寺の人の温かさを切り取るための作品なので、地域の人たちを伝えられるためになるなら、というところが決め手だったと思います」と明かす。

舞台となった本寺中学校の教師であった畠山育王先生は、「最初は撮影する方々のお世話役程度に思っていたのですが、途中から先生役をやることになってしまいまして。リハーサルやせりふもなしで本番になって、普段の学校でのことをやるしかないかなと思い、少し気楽に撮影に臨めました」と振り返る。

だが、小松監督から「そう言いながらも、セリフを自分で考えて書いてきていましたよね? かしこまり過ぎて、普段の先生の思いが全く出ていなくて。捨てましたけど(笑)」と指摘され、会場を和やかなムードに包んだ。

当日、飛び入り参加した撮影の広川泰士は「撮影してから3年ぶりに一関に来させていただきましたが、とても感慨深いです。同じ場所で四季を通して撮影させていただき、不思議な縁を一関に感じております」とコメント。

「僕自身も今回のような撮影スタイルは初めてで、ぶっつけ本番でやり直しのきかないシーンばかりでしたが、出演されていた方々はとても自然で、緊張感を感じさせず、監督がそれを引き出す力を感じ、僕はカメラの気配をなるべく消すようにしていました」と話す。

及川卓也プロデューサーは「僕自身も一関出身で、準備から今まで長い時間を掛けて今日にいたり、感謝をしなければならない人がたくさんいます。出演の皆さま他、数多くの市民の方にボランティアなどのお手伝いをいただき、本当にありがとうございました」と地元の人たちに感謝。

「出演者の皆さんが自分の気持ちを語る映画になっていて、形としても新しい映画になっていると思います。特に一関の皆さまには思いが一つの形になった作品として愛していただける作品になるといいなと思います」と、地元出身者ならではの思いを伝える。

最後に、佐藤は「話しただけでは伝えられない魅力が映画に詰まっているので、楽しんでいただけたらと思います」、小松監督は「笑顔で皆さんに会えたことが本当にうれしくて、ありがとうございました。皆さんが温かい気持ちになって、寂しいニュースが少なくなるといいなと思います」と締めくくった。

■ 映画「もち」ストーリー

山々に囲まれ、冬には雪深くなる地で、古くから根付いているのは「もち」の文化。1つの臼(うす)でもちをついて、みんなで食べる。それは当たり前のように、ずっと続いて来た習慣。

おばあちゃんの葬式で、臼と杵でつく昔ながらの方法でどうしても餅をつきたいと言い張るおじいちゃん。家族は、そんな面倒なことをしなくても、餅つき機で同じようにおいしいものができると言ったが、かたくなに餅をつくと言う。

ユナはそんなおじいさんの心の機微を感じて、そっと寄り添う。生徒の減少から中学校の閉校が決まり、最後の1年を終えると学校もなくなる。ユナの世界も刻々と変化をしていき、友人、憧れの人が離れていくことへの不安を覚えていく。

そして、彼女は「努力しないと忘れてしまうものなんて、なんだか本物じゃないみたい―」と問う。(ザテレビジョン)