中村倫也が一人七役を演じることで話題の映画「水曜日が消えた」。中村は月曜日から日曜日までの7つの人格が入れ替わり、一つの体をシェアしながら生活する主人公を好演している。本作は、その“7人の僕”の中から“水曜日”が消えたことから起こる異変を描いたサスペンスだ。

■ 気負いもなく、いつもどおり演じた

――最初に一人で7つのキャラクターを演じると聞いたときはどう思いましたか?

「どういうこと?」と思いました(笑)。でも、脚本を読んだら、あくまでも7役あるというだけで、彼らのささやかな日常を届けることが重要な映画だと思ったので、そんなに気負いもなく、いつもどおり演じたという感じですね。

――他の曜日に用事を押し付けられることも多く、一番地味で退屈な存在の“火曜日”を中心に物語が進んでいきますが、やはり火曜日のキャラクターを軸に役作りをされたのですか?

そうですね。なので、他の曜日は共演者みたいな感覚です。

――自分で演じたキャラクターを共演者として捉えることは、あまりない経験ですよね。

一つの作品でいくつもの人格を演じることは、そうないですからね。でも、演じる上では特別なことは何もなく、(各キャラクターの)扮装替えが面倒くさいなと思ったぐらいですね。

――物語のメインとなる火曜日は、素朴な魅力があり、どちらかと言えば“小動物的なかわいい系”のキャラクターだと思います。演じる上で意識したことはありますか?

主人公の“僕”は、体は同一のものでも曜日によって性格も個性も異なる人物として生きているので、それぞれからしたら1年が365日じゃないんですよね。その中でも火曜日は人とのコミュニケーションが苦手で、家の外に出ることもあまりないので、彼の中で時間が止まっているところがあるのではないかと。なので、火曜日を演じるうえでは、見た目年齢よりも若く、彼の中に残っている幼児性的なものは意識していました。

■ 人と仕事をするのが好きなんだなと感じました

――監督はCMやPV界で活躍されており、大ヒットしたアニメ映画「君の名は。」(2016年)にCGクリエイターとして参加されていた吉野耕平さん。本作が長編劇映画デビューということですが、中村さんは監督に対しても積極的に意見を出されていたそうですね。

この作品に限らず、「こんなやり方もあるんじゃないですか」とか、「こういう感じも楽しいんじゃないですか」と、思ったことは提案するタイプなので、それも通常営業です(笑)。

ただ、今回は吉野監督のオリジナル脚本で、監督の頭の中にあるイメージやアイデアをみんなで共有することが大事だったんです。なので、僕だけじゃなく、他のスタッフも含めて、みんなが監督のところに随時話を聞きに行き、それぞれに思ったこと、感じたことを提案しながら進めていくという現場でした。

――クランクアップのときに「人と仕事をするのは難しいけれど、やっぱり楽しい」とコメントされていました。そこにはイメージを共有することの難しさというのもあったのでしょうか?

それもありますが、今回の現場では一人で演技することが多かったので、単純に寂しかったんですよね(笑)。そんな中で、たまに共演者の方が来て一緒にお芝居をすると、ものすごく楽しくて。もちろん、人それぞれのセンスやルールがあるので、単純な話ではないんですが、それでも個々の考えや思いを混ぜ合わせながら芝居を作っていく作業は楽しいなと。改めて、僕は人と仕事をするのが好きなんだなと感じました。

――劇中では、スマートフォンに映った自分に向かって語り掛けるシーンもありましたが、やはり自分とは違う他者が共演者としていると違うものなんですね。

自分を相手に芝居することなんてそうそうないですし、貴重な機会で愉快ではあったけど、やっぱり人と話している方が楽しいですよね。たった一行のセリフでも相手の出し方を耳にしたり、目にするだけで、こちらの反応も変わってきますから。なので、やっぱり相手のいる芝居の方がやっていて楽しい、というのはありますね。

■ 基本的には、どの曜日とも友達になれると思います

――中村さんが本作で演じられたのは、月曜日から日曜日までの7つの人格。その中には、派手な性格のバンドマンからオタク気質の青年、釣りが好きなアウトドア派まで、多種多様なキャラクターが存在しますが、もし一緒に住むとしたら誰がいいですか?

それは特にいないかな。というより、僕はそもそも男とは一緒に暮らしたくない(笑)。

――では、友達になるなら、どの曜日の彼?

基本的には、どの曜日とも友達になれると思います。学生時代もヤンチャ系からオタク系、スポーツマンまで、いろんなタイプの友達がいましたから。

――人に対する許容量が大きいんですね。

どうなんですかね。でも、わりと昔からタイプを選ばず、みんなと愉快に過ごせる人間ではありましたね(笑)。

でも、7つの曜日の中であえて選ぶとするなら、一番興味があるのは日曜日かな。演じていて日曜日が一番好きだったから。

――それはどういう理由で?

日曜日は劇中で一言も話さないし、サングラスをかけていて目すら見えないんですよね。かつ、断りもせずに車の免許を取って、週末ごとに釣りに出かける自由人。それなのに、ほかの曜日に釣った魚をおすそわけする優しさもある。それだけでなんか気になる存在ですよね(笑)。なので、日曜日と会って話をしたら、楽しいんじゃないかなと思いました。

――ちなみに、中村さんはインタビューなどで「これまでに演じてきた役の要素は、すべて自分の中にある」とお話されていますが、今回の7役についてもそうなのでしょうか?

今回の映画の取材でも「どの曜日が一番自分に近いですか?」と聞かれることがよくあったんですけど、その答えは「とくにない」でした(笑)。でも、そのどれもが自分にある要素だし、それがないと演じられないというのはありますね。

――確かに「どの曜日が一番近い?」というのは聞きたくなる質問ですね。

インタビュアーさん泣かせの返答だと思いますが(笑)、自分では決められないんですよね。それに中村倫也がどういう人かというのも人それぞれだと思うし、たぶん僕のことを知ってくださった作品によっても印象が違うと思うんです。僕としてはそれでいいと思うし、その全部が自分なので、好きに選んでくださればと。

――そういうところがカメレオン俳優と呼ばれるゆえんなのかもしれませんね。

それはわかりませんが(笑)、どの曜日が素の中村倫也に近いのかを想像しながら見ていただくのも楽しみ方の一つかと。ジャンルとしてはサスペンスになっていますが、いろんな味わい方ができる豊かな作品になっているので、ぜひ楽しんでいただければと思います。(ザテレビジョン・取材・文=馬場英美)