2021年2月11日(木・祝)より全国ロードショー公開される映画「すばらしき世界」の特報映像が解禁された。

「ディア・ドクター」(2009年)、「永い言い訳」(2016年)の西川美和監督最新作となる本作の原案は、直木賞作家・佐木隆三氏の小説「身分帳」。西川監督が、初めて実在の人物をモデルとした小説をもとに、その舞台を現代に置き換え、徹底した取材を通じて脚本・映画化に挑んだ意欲作だ。

主演は、国内外でその演技力を高く評価され続ける役所広司。かつて殺人を犯し、13年の刑期を終えて出所。今は下町の片隅で暮らす、生真面目で真っすぐな性格の男・三上正夫を演じる。人間の本質をあぶり出す作品で世界でも高い評価を得てきた西川監督が、学生時代から憧れ続けた役所広司と初タッグ。役所も「いつか西川監督とご一緒したいと思っていた」と語る。

共演には仲野太賀、長澤まさみ、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、安田成美と実力派がそろった。

このたび解禁となった特報は、冒頭、テレビマンの津乃田(仲野)とテレビプロデューサー吉澤(長澤)の、「相手にしない方がいいんじゃないですか? 放送に堪えられる対象じゃないっすよ」「そこが面白いんじゃん」という会話から始まる。

津乃田が持つカメラが向けられるその先にいるのは、強面な見た目に反して、優しくて真っすぐすぎる性格の男・三上(役所)。実はこの男、人生の大半を刑務所で過ごした元殺人犯だった。

一度社会のレールを外れるも、なんとか再生したいと悪戦苦闘する三上にすり寄り、ネタにしようとする若手テレビマン。しかし、三上の過去と今を追ううちに、思いもよらないものを目撃していく。

「この世界は地獄か、あるいは…」。怒りを目に浮かべた三上が迎える結末とは――?

■ トロント国際映画祭でワールドプレミア上映

そんな注目の一作「すばらしき世界」が、米アカデミー賞前哨戦となる「第45回トロント国際映画祭」正式出品作品に選出され、9月10日(※現地時間)にワールドプレミア上映が行われた。

新型コロナウイルス感染拡大の影響により世界中の映画祭が規模縮小を余儀なくされる中、トロント国際映画祭においては例年の 4分の1程度に絞られた狭き門を見事突破し、正式出品作品として選出された本作。上映作品は、コロナ禍の試みとして、ソーシャルディスタンスを守った劇場、ドライブインシアター、野外やインターネット上で披露され、レッドカーペットや記者会見はバーチャルで行われている。

「すばらしき世界」のワールドプレミアには、主演の役所広司、西川美和監督が日本からリモート参加。プログラミングディレクターのジョバンナ・フルピ氏は、本作を「脚本が非常によく練られ、ストーリーが感動的。見事に質感があり、リアルに感じられる」「(主人公・三上を演じた)役所は、役の解釈がとても素晴らしく、ニュアンスと個性が豊かでカリスマ性を感じる」と絶賛した。

以下に、西川美和監督、役所広司のコメントを抜粋して掲載する。

■ 役所広司「ワンシーン撮ったものが次のシーンのヒントになり、少しずつ三上という男に近づいていきました」

――今までの西川監督の長編作品はオリジナルストーリーで、文学賞も受賞してこられました。「すばらしき世界」は別の方が書いた小説を原案とした初めての作品となります。社会になじもうとする元ヤクザを描いたこのストーリーのどんなところに惹きつけられましたか? また、佐木隆三さんの原作「身分帳」には、どのくらい忠実に翻案されたのでしょうか。

西川美和:前作「永い言い訳」の撮影中に佐木隆三さんが亡くなられたと新聞を見て知りました。その記事の中で、佐木さんをよく知る作家の方が、佐木さんの真骨頂は非常に有名な「復讐するは我にあり」よりも「身分帳」ではないか、と書かれていたんです。それがきっかけで、この原作を手に取りました。そこで描かれていたのは、犯罪者が刑務所を出た後、なんでもない日常を取り戻すために、こつこつと生きる地味な話だった(笑)。これは、自分で探しても見つけられるテーマではないと思い、映画化してみたいと強く思いました。

たくさんのエピソードが詰め込まれている小説を2時間の映画にどう集約するかということが、オリジナルで映画を作ってきた私にとっては、とてもてこずった部分でしたが、2、3年かけて取捨選択して書き上げました。

――役所広司さんの演技は息をのむほどで、この役にぴったりでしたが、三上役にはどのようにキャスティングされたのでしょうか。脚本の段階ですでに役所さんが頭にありましたか?

西川:17歳の時に、役所さんが連続殺人鬼の役をやられたテレビドラマを観て、いたくショックを受け、それがきっかけで物を書く仕事に就きたいと思うようになりました。映画監督をやることになり、いつか役所さんを主役に映画を撮れないかと考えてきました。

本作の三上という男は非常に面白い役なので、憧れの役所さんに一念発起してオファーをしたところ、「前向きに考えます」とお返事をいただき、それが自信となって脚本を書き進めることができました。

――役所さん、三上の役の解釈がとても素晴らしかったです。この役にはどのような準備をされましたか?

役所広司:原案である小説「身分帳」と西川監督が書いた脚本を比べて読みながら――小説はもちろんト書きが多いので、その部分は脚本と照らし合わせて――三上という男を探し求めていました。しかし、この男がなかなかつかめなかった。撮影が始まってから、ワンシーン撮ったものがまた次のシーンのヒントになり、少しずつ三上という男に近づいていく感じがありました。あとは、ミシンの練習を一生懸命やりました(笑)。また、監督と一緒に旭川刑務所を見学できたことは非常によい経験になりました。

映画「すばらしき世界」は2021年2月11日(木・祝)より全国公開。(ザテレビジョン)