亡くなった人の家を片付ける「遺品整理」。専門業者への依頼は増え続けていて、孤独死や壮絶な現場も数多くあります。

 名古屋の遺品整理業者に密着すると、社会問題が切り取られたような、故人からの“最期のメッセージ”が残されていました。 

 愛知県弥富市のマンション。外部とのつながりを遮断するかのように、部屋の中は溜め込まれた物であふれていました。

 部屋に1人で暮らしていたのは、69歳の男性。心筋梗塞で自ら救急車を呼びましたが、その後亡くなりました。

亡くなった男性の兄:
「生前は全然気が付かなくて、亡くなってから気が付いた」

 男性の死後、部屋に駆け付けた兄。自分では手に負えないと専門業者に遺品整理を依頼しました。亡くなった男性の仕事はビルの清掃でした。

 部屋から見つかった多くをゲームやアイドルグッズ。男性は給料の多くをそうしたものの収集に使っていました。

亡くなった男性の兄:
「親がいるうちはやっぱり、いらないものを買ってきたら(親が)怒るでしょ、普通。散らかしたら片付けろと怒るでしょ。それがなくなったら、余計そのままに…」

 20年前、同居していた母親が他界してからは、一人暮らし。その頃から急に物をためるようになりました。このような現場は決して少なくないといいます。

遺品整理会社「Good Service」安保学人さん:
「結構ゴミを捨てられなくて、こうやってたまっている方が多いかと思います」

 亡くなった人の「人生」が浮かび上がる遺品整理。その現場には壮絶なものもありました。

 遺品整理の現場を再現したミニチュアを作っている東京都板橋区の「遺品整理人」小島美羽さん。

遺品整理人 小島美羽さん:
「自分の家族も、もしかしたらこうなってしまうかもしれないという現実が日本にはあるということを知ってもらいたいです」

 就職活動に悩み、誰にも相談できず自ら命を絶った学生…。

 肩を寄せる飼い猫たち…溜まった糞…。多頭飼育の家では、孤独死した家主が食べられていました。

 小島さんは今の仕事に就いたきっかけは、高校生の時に体験した“父の死”でした。

遺品整理人 小島さん:
「生きている時は(父の)すごく嫌な思い出ばかり甦ってくるわけですけど、失ってから気づくものもすごく多くて」

 定職に就いていなかった父親。酒が原因で家族と別居し、一人脳卒中で倒れていました。

遺品整理人 小島さん:
「もしかしたらあの時にもっと父に自分から話しかけていれば、お酒に逃げない未来があったかもしれないなと色々思ったりはしますね」

 3年ほど前から、携わったた現場をミニチュアで再現するようになった小島さん、そのほとんどが“孤独死”の現場です。

遺品整理人 小島さん:
「皆さん、口をそろえて『私は関係ない』『私はこうはならない』という方が本当に多くて。本当はそんなことないのに、自分の身内がもこうなるかもしれないと考えた時に、今いる大切な人をもっと大切にしていこうと思ってもらえたらいいなと思って」

 死後2日以上が経過してから発見されることを指す「孤独死」。遺体の変色などが始まり、死者の尊厳が保たれていない状態です。

遺品整理人 小島さん:
「死って平等なので、お金を持っていてもこうやってやっぱり突然亡くなってしまうんだよっていうので作ったのがこのミニチュアなんですね」

 都内にある高級マンションの一室、50代の男性が座ったまま亡くなっていました。

遺品整理人 小島さん:
「お金持ちで良い家で防音なのが仇となって1か月くらい発見が遅れてしまう、離婚して最期は一人で亡くなって」

 孤独死の件数は年間およそ2万8千件といわれ、1日あたり全国で76人にものぼります。

 特に高齢者に多いのが、トイレや風呂場でのヒートショックによる突然死。

遺品整理人 小島さん:
「一番はふんばった時だと思いますね、血管が切れてしまったりする人もいるみたいで」

 1人で人生の最期を迎える…決して他人ごとではない現実です。

 一方、名古屋を中心に遺品整理を行っているGood Serviceの安保学人さん。

遺品整理会社「Good Service」安保学人さん:
「(遺品整理は)年々増えているように思います。週3、週4ぐらいで多分そのような現場があるのかなと」

 年明けに入った依頼、名古屋市緑区にある公営団地には80歳の男性が1人で暮らしていました。

男性の長男:
「1/2に自分の家族と食事する約束をしていまして、昼に迎えに来た時に電話しても出なくて、おかしいなと思って、入ってきたら(父が)布団のうえで亡くなっていた」

 発見したのは男性が亡くなってからおよそ6時間後でした。

男性の長男:
「大変だったと思うんですけど、色々金銭的な面でも。自分たちがこうしてこられたのもお父さんのおかげと思うのでそこは本当に感謝しかないです」

 この部屋に、家族4人で暮らしていましたが、早くに妻に先立たれました。生活した45年間を整理していきます。

 電気工事の現場一筋で生計を立て、子供2人を育て上げました。この家を見守り続けた亡き妻らの魂が入った仏壇も整理。家族の思い出が次々と運び出されました。

 長男と長女は、毎週のようにこの部屋を訪れていましたが…。

男性の長女:
「一緒にいてあげられなかったのは、ちょっとやっぱりかわいそうだったかなと。最期とかでも、心残りはやっぱり…」

 内閣府の資料によると、65歳以上で1人暮らしをする人は、2005年に386万5000人だったのが、2020年の推計で702万5000人にまで急増。15年で倍近くになった計算です。

 Good Serviceに依頼される遺品整理の件数も10年間で10倍ほどに増えているといいます。

 別の日、安保さんが訪れたのは、名古屋市中川区の共同住宅。

 妻に先立たれ17年間独りで暮らしていた90歳の男性が年末に介護施設で息をひきとりました。

男性の長男:
「それこそ頑固な親父でしたので、あまり『ありがとう』とか言わない人間だったので…。ただ最後のほうは介護施設に顔を出した時は、頑固な親父が『ありがとうな』ということを言われたので」

 遺品整理で見つかったのは、写真が入った「アルバム」。在りし日の父親の記憶がよみがえります。

男性の長男:
「これ親父です、若かりし頃。正直言って初めて見ます、親父のアルバムっていうのを。これがママさんソフト(ボール)をやっていたうちの親父ですけど、親父がアンダースローで投げて息子の自分がキャッチャーで捕ると」

 遺品整理の現場…。そこには故人からの“最期のメッセージ”が残されていました。