第20回東京新聞教育賞(上)地域社会から学ぶ 第1回受賞・上田享志さん

第20回東京新聞教育賞(上)地域社会から学ぶ 第1回受賞・上田享志さん

 学校教育で優れた実践活動を表彰する「東京新聞教育賞」が、二十回の節目を迎えた。賞ができて間もない約二十年前の受賞者はその後、取り組みをどう発展させたのか。三人の先生を取材した。      ◇

 「学校の枠を飛び越えて地域社会から学ぼう」−。若手教師時代、地域を巻き込んで子どもたちと農作業に取り組んだ経験が、第一回東京新聞教育賞受賞につながった。現在、品川区立日野学園で副校長を務める上田享志(たかし)さん(44)は「あの体験が教員としての礎になった」と振り返る。

 初任地は伊豆諸島最南端、人口約二百人の青ケ島村。三年目の二十五歳の時、小学一年生のクラスを受け持った。一年生は男児一人だけ。その男児が発した覇気のない一言に衝撃を受けた。「先生、軍手貸して。土は汚いよ」。自然豊かな島で育った子なのに…。

 一年間でこの子に何を残せるか。悩んだ末、生活科の授業で農業に取り組むことにした。目指したのは本格的なサツマイモづくり。だが、場所も栽培ノウハウもない。地域に飛び出して思いを伝えた。農家や行政関係者から次々と協力者が現れ、全校参加で島をあげた取り組みになった。泥だらけの作業の中で島の子らに元気な笑顔が広がった。

 次の赴任先は十七年間勤めた目黒区の小学校。都会の学校でも地域に学ぶ取り組みを続けた。学校周辺を巡って人脈をつくり、親切なお米屋さんの協力で、地方の農家とつながりができた。学校に田んぼを作って田植えや収穫を体験させた。初めは嫌がった女子児童もはだしで田んぼに入るようになった。

 地域の輪は非常時にも役立った。二〇一一年の東日本大震災直後。給食が中止になった際、弁当を持参できない子どものためにと、学校に米を譲ってくれた。

 防犯などの理由から、学校は地域と壁をつくりがちだ。厳しさを増す教育環境、多忙な現場の中で同僚は賛同者ばかりではなかった。「変わり者教師と見られていた」と苦笑いするが、「最後は必ず何とかなる。地域の人たちが助けてくれる」と信じた。心の支えは青ケ島での経験だった。

 「教師として貫いてきたのはたった一つ、子どもの笑顔を守ること」と上田さん。二十年前に比べ、子どもたちは精神的に弱くなっていると感じる。「人は人とのつながりの中で成長する。社会で強く生きていける子どもを育てたい」と語る。 (梅村武史)

     ◇

 第二十回の応募用紙はホームページで。十月二十日締め切り。問い合わせは、東京新聞文化事業部「がんばれ先生!東京新聞教育賞」係=電03(6910)2345=へ。

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