昨年十月の台風19号で深刻な被害を受けた県内最古の蔵元「第一酒造」(佐野市田島町)で二十二日朝、二カ月遅れの新酒出荷が始まり、杜氏(とうじ)や関係者らが正門前に新酒完成を示す縁起物、酒林(さかばやし)(別名・杉玉)を飾って祝った。島田嘉紀社長(54)は「ボランティアなど多く方々の支えで今日を迎えられた。おいしいお酒で恩返しをしたい」と感謝していた。 (梅村武史)

 出荷したのは、例年十二月上旬発売の初しぼり「開華 純米あらばしり」と、皇位継承の重要祭祀(さいし)である大嘗祭(だいじょうさい)に合わせた今季限りの「開華 純米吟醸 安寧祈念」。

 「安寧祈念」は昨年十一月の大嘗祭に間に合うよう、同九月に仕込みを行っていたが、台風19号の影響を受け、二カ月遅れで造り直したという。

 第一酒造の創業は、江戸時代初期の一六七三年。創業時から稲作農家でもあり、いまも田植えから収穫まですべて社員たちが行っている。

 台風19号では約二百メートル先の秋山川堤防が決壊、施設などが最大八十センチ浸水し、敷地は汚泥であふれた。日本酒の製造過程で最も厳しい衛生管理が求められる。米麹(こうじ)を作るための麹室も床上浸水し、一時は今季の酒造りも危ぶまれた。

 再起の原動力になったのは駆けつけたボランティアらの支援だった。高校生や大学生、障害者施設の人々なども加わって、延べ六百人が短期間に汚泥を撤去してくれたという。麹室は建物の下半分の壁や床、断熱材を撤去して大改修を行い、十二月から新酒造りを始めた。

 被災直後は「これは難しい。もう無理だな、と思った」という島田社長は、多くの支えに感謝。トラックに積み込まれた新酒が次々と関東各地に向けて出発していく姿を、社員らが感慨深げに見送っていた。

 第一酒造では「復興御礼!!」と銘打った一般向けの新酒お披露目会を二月十五日に開く。入場無料。午前十一〜午後二時半。問い合わせは同酒造=電0283(22)0001=へ。