手や顔がペンキで汚れたり、屋外で長時間労働を強いられたりといった印象で、若者から敬遠されがちな塗装業を、体験してその良さを見直してもらう職業体験が川崎市高津区で開かれ、市内の中学生十人が参加した。「すごく面白い」「思っていた以上にきれい」などと生徒の反応も上々で、主催者は塗装業のイメージアップに手応えをつかんでいた。 (安田栄治)

 一月二十三、二十四日の二日間、市立橘中学校(同区千年)の男子七人、女子三人が、同区東野川の池田塗装で初めて開催された職業体験に訪れた。企画した同塗装の池田聡社長(45)の指導で午前九時から午後三時まで、昼食を挟んで一日約五時間取り組んだ。

 一日目は紙やすりで下地を磨き、「ペンキを塗る前にこんな大変な作業があるのか」と音を上げそうになる生徒もいたが、みんなで力を合わせて乗り切った。下塗りと二日目からの中塗り、上塗りでペンキを三度塗ると見栄え良く仕上がることを知り「面白い。きれい」と声をそろえたという。

 池田社長は高校を卒業して塗装業に就いた当初は「きつい、汚い、危険の『3K業種』の一つで、若い人が憧れる職業とは無縁」と感じたという。二十三歳で独立しても「信用、コネ、金がなければ下請けしかできなかった」と、魅力を見いだすどころか、自立することも難しかった。

 そんな状況を一変させたのがおよそ十三年前。宮前区に住む六十代女性からの依頼だった。「私の人生で最後となる塗り替えを頼みたい」。当時は一般家庭から仕事が入るのは珍しかった。約四十坪の一軒家を二週間かけ、誠心誠意を持って塗り替えると女性は大喜びした。

 池田社長は「感謝される仕事」と見つめ直し、地道に取り組んで地元で信頼をつかみ、十五人の社員を抱える会社に成長させた。三年前から大卒者対象の会社説明会に参加し、昨年は新卒三人を採用。今年四月には新たに二人が加わる。

 「職人かたぎが抜けない建築業界に大卒者などを入れて構造改革を図り、営業職や管理職にも就けるようにしたい。そのために塗装業の魅力を中学生にも伝えたい」と若い世代に目を向ける。「あの宮前区の女性は健在で、時々、お宅を見に行っています」と今も初心を忘れていない。