「電子政府」を樹立した北欧エストニアのユリ・ラタス首相が来日し、十一日には、同行の政府代表団と企業トップとともに市川市入りした。ラタス首相は村越祐民市長と会談し、続いてエストニアの企業十二社がプレゼンテーション、地元企業との交流会もあった。日本政府は人工知能(AI)やビッグデータを活用した最先端都市「スーパーシティ」構想の実現に向けた国家戦略特区法改正案を、今月四日に閣議決定。村越市長は、法案が成立すればこの特区に名乗りを上げる方針を明らかにした。 (保母哲)

 市川を訪れたのは、ラタス首相とマイリス・レプス教育科学相、同国の情報通信技術(ICT)関連企業二十社のトップら。ラタス首相は、同国で進む自動運転や、国内居住者全てに身分証明証であるデジタルIDを交付していることなどを説明しながら、「今回の訪問を機に、市川や日本との協力を強化したい」と力を込めた。

 レプス教育科学相も学校教育を例に、「子どもたちの情報が詳しく分かり、どう支援したら良いのかも把握できるようになった。さらに、企業や公共施設などとの交流も盛んになった」と、電子化の長所を挙げた。

 ラタス首相に同行した企業トップらは、市川市内の山崎製パン総合クリエイションセンターで、地元企業の代表者らと交流した。同国の十二社によるプレゼンテーションも行われ、取り組みぶりを紹介した。

 村越市長は二〇一八年四月の市長就任以来、市政の情報化を進めており、エストニアと地元企業のトップらが今回、初めて交流したことで「新しいビジネスと価値が、この市川で生まれると思う」と述べた。スーパーシティ特区構想では「必ず(市川市が)指定を受けたい」と話した。

 村越市長によると、次回は地元企業の使節団をエストニアに派遣するほか、首都タリンとの交流を進めることなどで、ラタス首相と合意したという。市川市は昨年十月、村越市長を団長とするエストニア訪問団が現地入りし、パルヌ市と連携協定を締結している。

◆処方箋電子化など取り組み紹介

 エストニアのユリ・ラタス首相と同行した企業のうち、12社が市川市内でプレゼンテーションし、電子化の取り組みを紹介しながら「ともにビジネスをしよう」と呼び掛けた。プレゼンテーションしたのは、電子政府関連4社、教育関連3社、エネルギー・健康関連各1社など。

 学校で使うデジタル教科書の技術を開発した会社は「出版業界と協力し、データベースを活用しながら、質の高い学習環境を構築した」と説明。別の教育関係企業も「オンラインを使えば、各国の子どもたちとつながることができる。創造性のある世代を育てたい」と、プロジェクターを使いながらその効用を発表した。

 医師が医薬品を処方するために記載する「電子処方箋」を開発した企業は、「国内どこの薬局でも医薬品を購入することができるようになった」。政府や企業のデジタル化を支援している企業も「エストニアは小さな国だが、デジタル化により大きな取り組みをしている」と話し、いずれも電子化の意義や必要性を強調していた。

<エストニア> バルト3国の一つ。人口約130万人、面積約4万5000平方キロで日本の九州とほぼ同じ広さ。第2次大戦時、旧ソ連に編入されたが、1991年に独立した。首都はタリン。

 同国の「電子政府」 国策としてIT化を進めており、電子投票や納税申告、全ての患者に電子カルテを作成するなど、現在では行政サービスで足を運ぶのは「結婚、離婚、不動産取引のみ」ともいわれる。海外からの投資や企業誘致を促進するため、2014年12月に電子居住権制度(Eレジデンシー)を導入。国民のほか国外居住者でも「エストニア住民」になれば、政府の電子システムが利用できるようになった。