昨年十月に本欄で紹介した「銃・病原菌・鉄」(草思社)の著者の最新刊です。この百五十年ほどを振り返って、日本を含む七カ国がどんな危機に直面し、いかに突破したのか。その道筋を解説しています。

 日本は二章分が充てられており、前半はペリー来航で江戸時代が終わり、近代化が進んだ明治時代、そして太平洋戦争に至る約百年間に着目。後半は「日本を待ち受けるもの」をテーマに、財政や人口問題などに言及しています。

 本書のうち、北欧フィンランドのたどった道を知ることができたのが、私にとって一番の収穫です。

 西はスウェーデン、東は大国ロシアと国境を接しているフィンランド。第二次世界大戦で旧ソ連に敗れ、当時三百七十万人だった総人口のうち、戦死者はおよそ十万人にも。国民に金の指輪や宝飾品を供出させてまで、多額の賠償金を支払っています。

 かつては貧しい農業国でした。しかし、こうした苦い経験から重化学工業を発展させ、今やハイテク産業中心の近代工業国になりました。背景には、大国と国境を接する小国−という現実を踏まえ、ソ連と対話を重ねる外交政策への変革があったのです。

 フィンランドを巡る最近の話題の一つが、昨年十二月に三十四歳で就任した女性首相のサンナ・マリーンさん。現職の首相として世界最年少とされています。この国のこれからにも注目したいと思います。

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<ふじしま・あきら> 1942年3月生まれ。77歳。川崎市中原区在住。東京大学大学院在学中の67年、酸化チタンに光を当てると、水を酸素と水素に分解する「光触媒反応」を発見。汚れ防止や抗菌、空気浄化などに応用されている。2017年文化勲章、18年川崎市名誉市民章。現在は東京理科大栄誉教授。