ボタンやレバーで便を流す水洗式トイレは今では当たり前の設備だが、川崎市内の家庭でも今から六十年ほど前までは、トイレの床下に便をため田畑の肥料などに利用していた。便と密接した当時の生活ぶりを振り返る企画展「うんことくらし−便所から肥やしまで−」が同市多摩区の日本民家園で開かれている。便を身近にとらえるユニークな企画展に来園者の多くが興味を寄せて鑑賞している。五月三十一日まで。 (安田栄治)

 便をためるくみ取り式のトイレは「ボットン便所」と呼ばれ、一九六〇年代後半ごろまで使用されていた。しゃがんで使う和式便器の暗い穴の底に落ちていく便が「ボットン」と音を立てる。不気味だったり、臭いがしたり、嫌な思い出がある人は多い。農家などでは大便所が小便所と分かれて家の外にあり、夜や冬場は暗くて寒く、用を足すにも勇気が必要だった。

 本館企画展示室では、便を肥料として運んだ「肥おけ」や「てんびん棒」、家の中で小便をした「しびん」「おまる」などが展示されている。また、便を吸い取る「バキュームカー」を全国で初めて使用したのが川崎市だったこと、便を海に廃棄した時期もあったことなどを紹介するビデオも放映されている。園内の「おべんじょマップ」を用意し、旧佐々木家、旧工藤家などの便所も見学できる。

 園職員による月に一度の展示解説が十一日行われ、五十人を超える来園者が参加した。逗子市から夫婦で訪れた医師の大橋校(ただし)さん(63)は「企画展のネーミングにビビッときた。大学生のころまでボットン便所を使っていたが、子どものころは便所が怖かった。久しぶりにその思いに触れた」と笑みを浮かべた。

 企画した同園の玉井里奈さんは反響を喜び、「今はボタン一つで流れていく『うんこ』ですが、昔の人には生活の必需品だったことも知ってほしい」と話している。

 今後の展示解説は、一般向けが三月二十日、四月二十九日、五月二十三日、子ども向けが四月二十六日、五月三日のいずれも午後二時から約二十分間の開催予定。また、旧家の外便所などを夜に見学する関連企画「マジで怖い!夜のお便所たんけん」が三月二十九日午後六時から開催され、先着三十人が参加できる。料金はすべて入園料のみ。

 問い合わせは、日本民家園=電044(922)2181=へ。