県は十三日、二〇二〇年度当初予算案を発表した。一般会計は前年度比3・8%増の一兆九千六百三億一千五百万円で過去最大となった。大野元裕知事は就任後初の予算案を「安心・元気のスタートアップ予算」と命名。「災害対応をしっかり行い、東京五輪・パラリンピックを契機に未来へ大きな一歩を踏み出していく」と思いを説いた。二十日開会の県議会二月定例会に提出される。 (飯田樹与)

 河川改修や道路整備などの公共事業費は、過去十年間で最大となる千十六億円(前年度比9・2%増)となった。「安心・安全を確保していく」と大野知事。県内に甚大な被害をもたらした昨秋の台風19号をはじめ、国内各地で頻発する自然災害を踏まえ、「災害に強い埼玉」の構築に重点を置いた。

◆降雨への対応

 台風19号では、三十七年ぶりに県管理河川二カ所で決壊したほか、五十五カ所で溢水(いっすい)・越水した。このため、六十一河川の計百一カ所で緊急治水対策を実施する。堤防の補強や、遮水シートを設置して漏水・浸透を防ぐほか、川底を掘削して水位低下を図る。八十五億九百万円を盛り込んだ。

◆道路網の多重化

 隣接する都県につながる幹線道路で途切れている区間を解消し、円滑な交通を図り、人や物の流通を活性化するほか、災害時の代替ルートを確保。県北に延びる国道254号バイパスを東京外環自動車道(外環道)に接続するなど、五路線七カ所を重点的に整備を進める。予算額は四十二億六千万円。

◆埼玉版FEMA

 関係機関と調整して災害対応に当たる米国の連邦緊急事態管理局(FEMA)の機能に注目し、埼玉版FEMAとして災害対策本部の機能を強化する。風水害や地震による大規模停電や断水を想定し、役割分担や時系列の行動計画などを記したシナリオを作成。これを基に官民の関係機関で図上訓練を繰り返して検証するとともに、担当者レベルで顔の見える関係をつくる。七百万円を計上した。

◆被災者支援制度拡充

 県と全市町村による「県・市町村被災者安心支援制度」の対象を、災害救助法が適用されない市町村の半壊世帯に広げ、一世帯当たり五十万円を支給する。これまで全壊や大規模半壊世帯は同法の適用にかかわらず、別の法律や同制度で生活再建の支援を受けられたが、半壊世帯は生命や身体に危害を受ける恐れがあるなどとして同法が適用された市町村のみで差が出ていた。予算額は七千五百万円。

◆公約実現へ難しいかじ取り

<解説> 過去最大となった県の二〇年度一般会計当初予算案。主な要因は、消費税率引き上げの影響で、県が市町村に交付する地方消費税市町村交付金などの県税交付金が前年度に比べて五百億円増加したことだ。さらに、将来を見据えた災害対策費を前年度より二百億円上乗せしたためで、「災害に強い埼玉」を目指す大野予算案の特徴が見て取れる。

 歳入の柱となる県税は、地方消費税が大幅な増収になることから七千七百五十五億円(前年度比十四億円増)と過去三番目の多さとなった。

 国が返済を肩代わりする借金「臨時財政対策債」などを除いた県の借金「県債」の実質的な残高は、一兆八千九百八十九億円で十八年連続で減少。対して、社会保障関連費が年々増え、県の貯金として財源調整に使われる基金は少しずつ取り崩されている。当初予算案でも、市町村が行う介護事業への県の補助分が前年度比五十六億六千八百万円増、後期高齢者の医療費対策費も同二十六億六千九百万円増と、社会保障関連の歳出が重くのしかかる。

 大野知事は「行政として自由になる経費が徐々に減ってきているのは事実。『1+1=3』になる行財政改革を進める」と話す。一方、選挙公約とした五大プロジェクトの予算は計百四十三億円。「実現へのスタートアップとして最低限、必要な額を積み上げた」と説明するが、県財政が厳しさを増す中、難しいかじ取りとなりそうだ。 (飯田樹与)

◆県「ライブサイト」開設へ 五輪は大宮、パラは朝霞に

 今夏開幕する東京五輪・パラリンピックについては、関連経費18億8400万円を盛り込んだ。

 県は、五輪期間中はさいたま市大宮区の総合コンベンション施設「ソニックシティ」に、パラ期間中は朝霞市総合体育館に、大型スクリーンでの競技観戦のほか、飲食やステージイベントも楽しめる「ライブサイト」をそれぞれ開設する。競技中継のみのパブリックビューイングと異なり、多彩な内容で国際オリンピック委員会の公認。隣接地には県による埼玉PRエリアも設ける。小中高校生に会場までの道案内などボランティア活動を体験してもらうプログラムも実施する。