都が子どもの英語力向上を目指し、二〇一八年十月に開設した英語村「TOKYO GLOBAL GATEWAY(TGG)」(江東区青海)。評判は上々だが、利用者数が伸びない。一九年度末までに約七億三千万円を投じたが、費用対効果を疑問視する声も上がる。移動時間が一因として、都は多摩地域に二カ所目の整備も検討しているが、まずは課題の洗い出しが必要だ。 (石原真樹)

 改装したオフィスビルの一部に、薬局やファストフード店など外国の街並みを模した部屋が並ぶ。ここでの会話は全て英語だ。児童・生徒が八人一組になり、英語が母国語のスタッフ一人が付き添う。英語能力に合わせてプログラムを組み、半日や一日コースなどで「英語漬け」を楽しむ。

 学研ホールディングスなどでつくる民間企業「TGG」が運営し、都が整備費四億五千万円と、フロアの賃料として年間二億七千万円を補助する。都内の学校の団体利用に支障がない範囲で、都外の学校や個人の利用も受け入れている。

 都によると、「話す楽しさを知った」などと利用者の多くが満足し、教員の評判もよい。問題は利用者数だ。一九年度、都内の学校の団体利用は約七万人。都内に通う小学五年〜高校三年生約七十三万人の一割未満で、年間で二十万人という想定を下回る。

 想定を下回っている理由について、都の担当者は「各学校の事情」としつつ、遠隔地からは移動に時間がかかるため二の足を踏むケースも少なくないとも説明。そのため、都は多摩地域に第二の英語村を設立しようと、二〇年度予算案に調査費二千万円を計上した。

 英語村による子どもの英語力向上への効果について、都は二〇年度中に検証する方針。第二の英語村が必要かという検討も求められる。

◆大学教授が賛否 費用と時間かけ疑問 学ぶ必要性感じる

 英語村の意義について、上智大言語教育研究センター長の吉田研作教授は「教室でしか英語に触れない子が『実際はこうなんだ』と体験する場。英語を学ぶ必要性を感じるきっかけになる」と語る。「文法ばかり、読んで訳してばかり。そんな授業だけでは英語嫌いになる。『英語が通じた』体験を積んでほしい」。吉田氏は構想を議論した有識者会議で座長を務めており、二カ所目の整備構想も評価している。

 評価する声がある一方、東京大の阿部公彦教授(英米文学)は疑問を呈する。「英語体験はモチベーションを上げるために必要だが、TGGでこれだけ費用と時間をかける意味があるのか」。学生と接してきた経験から、「実用」英語ばかりを重視する国の政策を批判している。

 「ALT(外国語指導助手)やインターネットを活用するなど工夫すれば、教室でも外国の文化に触れたりネーティブスピーカーと話したりする機会をつくれる。数年に一度TGGに行くより頻度が増え効果的だ」と指摘する。