昨年十月の台風19号で三万人以上が避難した足立区。荒川や中川が流れる地区の住民らが水害への危機感を抱き、勉強会や教訓を生かした避難訓練を行うなど次の台風シーズンへの備えに動き始めている。 (大沢令)

 一月、荒川と隅田川に囲まれた宮城・小台地区の住民らが勉強会を開き、約九十人が参加した。区の総合防災行政アドバイザーの松尾一郎東大大学院客員教授と、地区が中川に接しているため、水害への備えに住民主導で積極的に取り組む長門南部町会長今坂昭男さん(79)を講師に招いた。

 今坂さんは水害を想定して住民の避難方針などを時系列で整理、作成したコミュニティ・タイムライン(CTL)が台風19号の対応で役立ったと説明した。宮城・小台地区もCTLの作成に向け、荒川氾濫時の浸水リスクや避難のあり方などを検討する。

 地元の江南連絡協議会長松坂敏彦さん(80)は「大型の台風がまた来る前に水害への備えを急ぎたい」と表情を引き締めた。

 台風19号で一時、三百八十三人が避難した長門小学校(中川一)では二月、中川の堤防決壊を想定し、住民ら約二百人が避難訓練を行った。同小で避難所を開設し、運営する区職員も初めて参加し、鍵の開け方や備蓄倉庫などを確認した。

 台風19号の教訓を生かそうと区は水害の恐れがある場合に避難所ごとに担当職員を決め、普段から訓練にも参加するなど住民と顔の見える関係を築き始めた。近藤弥生区長も訓練に立ち会い、「皆さんと避難所を立ち上げ、運営する職員です。顔をよく覚えてください」と住民に職員を紹介。会川大和(ひろかず)校長は「自然災害に向き合うにはラグビー日本代表のように私たちがワンチームになることが大事です」と結束を訴えた。

 訓練に参加した衛生部の女性職員は「鍵の開け方など実際の手順を確認することで、不安感が少しぬぐえた。繰り返し訓練する大切さを感じた」と話した。

 次の台風シーズンまでに全ての避難所で担当職員と地元の運営組織の顔合わせを予定している。台風19号の際の避難所運営を巡っては「派遣した職員が開設する手順を十分に理解していなかった」「各施設に職員を急きょ割り当てたため、備蓄倉庫の位置がすぐに分からないケースもあった」などの課題が浮かんでいた。