新型コロナウイルスの爆発的感染を防ぐためとして、大野元裕知事は二十六日、記者会見し、県民に対して今週末、不要不急の外出を自粛するよう要請した。数日間で感染者が激増した隣接地の東京都やスペインの状況を踏まえ「ピークが来てからでは遅い」と協力を求めた。 (飯田樹与、森雅貴、近藤統義)

 生活必需品の買い物や散歩、ストレスがたまる子どもの公園遊びなどは対象外とし、「都市封鎖ではない」と強調。「商品の買い占めは控えてほしい」と冷静な対応を呼び掛けた。来週以降も要請する可能性があるという。

 大野知事は、この二日間で一日四十人以上の感染確認が続いた東京と比べ、県内は感染者急増やクラスター(感染者集団)発生は見られず、状況は異なると説明。一方、外出者が増えた先々週末と、都内で感染者が増えた時期が重なると指摘し「(埼玉は)頻繁に人と物が往来し、東京と無関係でない」と訴えた。同席した金井忠男県医師会長も「東京のような爆発的感染がいつ起きても不思議ではない」と警鐘を鳴らした。

 県の要請は、今週末の外出自粛を求めた都と足並みをそろえる形に。都内に通勤、通学する人も多く、大野知事は「首都圏を単位として措置することが大切だ」と述べた。

 経営する喫茶店の売り上げが二割ほど減ったというさいたま市浦和区の鈴木恵子さん(69)は「感染者が増える前に対応するという政治の決断力が足りなかった。早く日常に戻ってほしい」とため息。都内に勤める川口市の女性会社員(35)は「在宅勤務が認められていて、仕事に大きな支障はない。これだけ感染が広がると仕方がない」と冷静に受け止めた。

■観光地に衝撃

 首都圏の各知事の外出自粛の要請は、県内の観光地にも衝撃を与えた。長瀞町観光協会の田島茂行事務局長は「初めてのことで、影響が全く読めない」と不安を打ち明けた。二十六日現在、町内の観光地はバスなどの団体客がほぼゼロにまで落ち込んだ。一方、マイカー利用の個人客はそれほど減っていないという。

 人気の荒川のライン下りや宝登山の登山などは天候に大きく左右される。田島事務局長は「今週末の天気予報は雨。自粛要請の影響もあり、長瀞はほぼガラガラになるのではないか」との懸念を示した。

 西武園ゆうえんち(所沢市)は二十八日から当面の休園を決定。二月末から休園し、今月二十一日に営業を再開したばかり。担当者は「都内からの来園客も多く、苦渋の判断。現場の落胆も大きい」と嘆いた。

 県は四月十九日まで、大規模や不特定多数が集まる県主催イベントを原則中止・延期する対応を継続させることを決めた。 (出来田敬司、森雅貴、飯田樹与)

■学校再開へ準備

 県教育局は二十六日、県立学校の再開に向けた準備方針を示した。県立中学・高校と特別支援学校は春休み後の学校再開を目指して準備を進め、具体的な再開日は四月初頭をめどに判断。市町村立学校、私立学校にも県の方針を示し、適切な対応を求める。

 方針は、全児童・生徒を一カ所に集める始業式や体育祭などは当面実施しない▽修学旅行は当面実施しないが中止ではなく、延期を検討▽混雑時を避けた登下校や短縮授業を実施する−など、再開後の学校生活を細かく規定。県立高校に向けては場面ごとのQ&Aも添付し、近距離の会話が必要となる理科の実験や調理実習は当面中止し、部活動でも歌唱や管楽器の使用はできる限り分散して実施することなどを例示した。

 東京都内での感染者数急増などを受け、学校再開後の臨時休校措置などにも言及。具体的な再開時期について、萩原由浩副教育長は「感染状況との兼ね合いがあるが、学校の準備に支障もあり、なるべく早く決めたい」と話した。

 一方、川口市は当初予定通り四月八日に市立小中高校を再開すると決めた。同日実施する入学式は規模を縮小する。感染の拡大状況によって午後の授業は取りやめるなど、柔軟に対応するという。 (前田朋子、近藤統義)

◆新たに8人感染

 県は26日、戸田市の保育園児の男児ら5人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。いずれも容体は安定している。

 男児は24日に感染が確認された40代の男性会社員の息子。17日以降は登園していない。ほかに、2〜17日に仕事でブラジルに滞在していた白岡市の50代男性会社員と、和光市の30代男性会社員、春日部市の40代の医療従事者の女性、ときがわ町の60代男性会社員の感染が確認された。和光市の男性、春日部市の女性、ときがわ町の男性の感染経路は不明。

 県は25日にも所沢市の70代女性の感染を発表。60代の夫の感染が23日に分かり、検査した。

 川口市も26日、市内の50代無職女性と海外旅行帰りの大学生の20代長女の感染を発表。2人は24日に感染が分かった50代男性の家族。 (前田朋子、飯田樹与、近藤統義)

◆「さいたま国際芸術祭」 開幕日28日さらに延期

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、開幕日を当初予定の14日から28日へ延期していた「さいたま国際芸術祭」に関し、さいたま市の清水勇人市長は26日の定例会見で、「現時点で市を取り巻く状況を判断するのは困難」とし、開幕を「当面の間」、さらに延期すると発表した。

 本来の会期は14日〜5月17日の65日間。清水市長は「現時点で中止は考えていない」とし、開幕を遅らせたり、会期をずらすなど、さまざまな観点から検討するとした。

 芸術祭は、3年に1度開催する「さいたまトリエンナーレ」を本来の開催年だった昨年から移し、東京五輪・パラリンピックの公認文化プログラムとして位置付けたイベント。五輪の延期を受け、清水市長は「以前ほど(五輪と)近いタイミングでの開催は難しくなったが、文化の祭典として胸を張れるものができつつあるので、しっかり発信できれば」と期待感を示した。 (前田朋子)