新型コロナウイルスの感染拡大は、川崎市内に根づいてきた文化芸術活動にも影を落としている。公演の相次ぐ中止で収入源を失い、活動を存続できなくなる懸念も。関係者は「文化は心の栄養。このままでは途絶えかねない」と語り、支援策を求めている。(石川修巳)

 「もうお手上げなんです」。受話器の向こうで、地域演劇集団「京浜協同劇団」の城谷護(しろたにまもる)さん(79)が力なく語った。多摩区で七月に開催予定だった「かわさき演劇まつり」の公演を断念したという。城谷さんは実行委員長だった。

 一九七二年に始まった恒例行事で、観客は毎回千五百〜二千人にも。同劇団が軸になり、公募で集まった市民ら約五十五人が出演。歌あり踊りあり、親子で楽しめるにぎやかな舞台になるはずだった。

 幸区を拠点とする京浜協同劇団は、五九年の創設から丸六十年。京浜工業地帯で働く人たちが旗揚げした市民劇団として、地元川崎に通じる公害や貧困などのテーマに挑んできた。

 九四年完成の稽古場が、地域密着の象徴だ。小劇場も兼ねた鉄筋コンクリート三階建ての総工費は当時一億六千五百万円。うち四千五百万円は市民のカンパを充てたという。

 ローン返済は現在も続いており、税金を合わせて一年間に約三百三十万円。十一月にも定期公演を予定しているが、果たして開催できるのか。たとえ開催できても、「三密」とされる劇場に、これまでのように観客が戻ってくれるのか。不安は募る。

 「この劇団は六十年、困難にぶつかっても耐えてきた。だから、何とかしたいんだけど」と城谷さん。

 プロの腹話術師としての活動も、六月までに約四十件、出演料など約六十万円分がキャンセルになった。城谷さんは三月下旬、相棒の人形「ゴローちゃん」と川崎駅前に立ち、「芸人・文化団体にも経済的補償を!」と訴えた。

 川崎市は独自の緊急経済対策の一環で、活動の場を失った文化芸術の担い手への支援策を発表。ウェブ配信に必要な機材費などの経費を対象に、一件あたり三十万円を上限に補助する方針を明らかにした。

 城谷さんは「相次ぐ公演中止で、劇団も演芸も経済的損失は大きい。その救済をしてほしい。芸をつないでいかないと途切れてしまうし、簡単には育たない」と口にした。