にゃんにゃんOL物語:年収460万のOLは、年収1,000万以上の男性に見向きもされない

にゃんにゃんOL物語:年収460万のOLは、年収1,000万以上の男性に見向きもされない

定時帰りの、腰掛けOLたち。

楽な仕事に給湯室での井戸端会議、充実したアフターファイブ。

”安定”という鎧を手に入れた彼女たちは保守的で、誰かが幸せにしてくれるのを待っている。

丸の内の大手損保会社に勤める愛華(26)も、その一人。典型的な腰掛けOLである彼女には、実はこんなあだ名がある。

“にゃんにゃんOL”と。

元OLのアリサ(29)から檄を飛ばされた愛華は、何を思う...?



「こないだ、アリサさんから怒られちゃって。」

給湯室で来客用のお茶を汲みながら、同僚の結衣に思わず愚痴をこぼす。アリサさんに檄を飛ばされ、正直少し落ち込んでいた。

「あんたみたいな女、腐るほど知ってるわ」

容赦なく言われたその言葉で、所詮自分は何者でもなく “その他大勢のうちの一人”でしかない現実を突きつけられた気がしたから。

現実は、時に残酷だ。

結局、自分には何の才能もなく、キラキラした生活に憧れながらも、日々満員電車に揺られて出勤する地味な毎日に、ふと虚しさを感じることがある。

そんな現実を、普段は胸の内に秘めていて見ないようにしている。なのにその箇所を、ぐいっとエグられた気がして、胸が痛かった。

「アリサさん、怖いねぇ〜。今夜、私も怒られたらどうしよう。」

結衣がお茶を淹れながらおっとりと笑っている。

その所作は丁寧で、結衣は一見おしとやかに見えるが、実はかなり年上の彼氏がいる。

彼に生活を支えてもらいながら、結婚できる相手を、あらゆる機能(デーティングアプリに食事会、結婚相談所など)を駆使して探しているのだ。

私は、結衣のようにしたたかに生き抜くこともできなければ、アリサさんのように独立して自分でバリバリ頑張ることもできない。

怒られることも、傷つくことにも免疫がない。

ため息をつきながら人数分のお茶を入れ、時計を見た。

—15:10。

帰れる時間まで、あと3時間だ。


にゃんにゃんOLの勝負は、定時の15分前から始まっている?!

17:45。皆が一斉にゴソゴソと動きだす


特に代わり映えもしない日常業務を淡々とこなしているうちに、ようやく定時の時間が近づいてきた。

会社の定時は、18時。

基本的に残業もなく、時計の針が18時を差せばすぐに帰れる。でも勝負は18時前から始まっている。

まず、17:30くらいになれば1日座りっぱなしでむくみ始めた足のマッサージを開始する。男性との食事の席に、むくんだ足で登場するんなんて言語道断だ。

デスク下で、せっせと足裏でゴルフボールを転がしながら、ふくらはぎのツボを押す。

17:50になったら席を立ち、お手洗いに行って化粧室に置いてあるコスメポーチで軽く化粧直し。

「この定時前の30分が、1日の間で一番忙しいよね。」

結衣と化粧室で鉢合わせ、お互いに笑ってしまった。そう、私たちの1日はアフターファイブのためにあると言っても過言ではない。

一昔前なら、“家事手伝い”と言えたのかもしれない。でも、現代の婚活市場では、働いている女性の方が優位になる。

だから、結婚するまではこの仕事を続けると決めている。

仕事が好きだからではなく、体裁のために働く毎日なのかもしれない。

「早く結婚して、楽になりたいなぁ。」
「今日の食事会の相手に、期待だね。」

こんな会話ばかり、毎日繰り返している。



まだまだ続く、腰掛けOLのルーティンワーク


17:55には席に戻ってカーディガンを羽織り、すぐ出られるよう準備開始。

18時を過ぎると、先輩が席を立ったのを見計らってから再び化粧室へ戻り、デスクの引き出しに置きっぱなしにしてあるコテで髪を巻き、ようやく戦闘準備完了だ。

「じゃあ、行こうか。」

アクセサリーを大振りの物に付け替え、気合いを入れなおす。今日は結衣と、アリサさんがセッティングしてくれた食事会に参戦する日だった。

アリサさん 曰く“終わっている”という私に希望の光を差し込むべく、取引先である代理店の人を紹介してくれるという。

丸の内線から日比谷線に乗り換える際の霞ヶ関の駅は特に人が多く、スーツ姿のサラリーマンと、同じような服装をしたOL達でごった返している。

満員電車にぎゅうぎゅうと詰め込まれていると、アリサさんからLINEが入った。

—ごめん、打ち合わせが長引いて30分ほど遅れそう!男性陣も遅れてるみたい

「みんな、遅くまで仕事大変だね。」

結衣と二人で、結局30分以上も店で待ちぼうけを食らってしまった。


仕事ができる女性がモテる時代?結婚競争に乗り遅れるOL達

入れぬ会話、気がつけば相手にされていないにゃんにゃんOLたち


30分もすると、たたみか掛けるようにバタバタと皆がやって来て、アリサさんは相変わらず他を圧倒するオーラを纏いながら、『グリル アンド ワイン ジーニーズトーキョー』に入ってきた。

アリサさんが来ると、その場の空気が一瞬で変わる。

うまく表現できないけれど、美人とかそんな安易な言葉では収まらないような、もっと根本から人を惹きつける魅力があるのだ。

「アリサ、今日は可愛い子連れてきたね。」



目の前に座る代理店勤めの男性が、私と結衣を見て嬉しそうにニヤついている。ほとんどの男性陣は、私と結衣がいると目を細める。

「友達が一人来れなくなったから、代わりに商社で働いているやつ呼んだから。」

トモヤ、と呼ばれているその男性の言葉に、結衣と二人で更に期待値が高まる。そしてその期待値は、本人とご対面して最高潮になった。

「か、和樹さん...」

先日の食事会で一緒になり、いいなと思っていた和樹さんが立っていたのだ。

「あれ、この前会ったよね?」

相変わらず爽やかな笑顔でやって来た和樹さんに、グロスは取れかけていないか、ネイルは伸びていないか、など短時間で色々と考える。

—和樹さんと、仲良くなれるチャンスかも...


結婚行進曲が、頭の中で流れ始める。
ブーケは白とピンクを基調にした物にしよう。


アジア担当だと言っている和樹さんの赴任先は、シンガポールとか?そしたら私は駐妻となり、優雅な海外暮らしをできるのかしら...

一人、妄想が膨らんでいく。

しかし会が進むにつれて、徐々に男性陣との距離を感じ始めた。

「アリサ、最近仕事はどう?」

トモヤとアリサさんは、仕事の話で盛り上がっている。そこに和樹も参戦し、三人で何やら知らない世界の話をしている。

「最近原価が上がっちゃって大変よ。どこも足元見て物流費あげてくるし。うちはPB商品の構成比率が多いから、まだコントロールしやすいけど。」

「そのマーケットでSPA型でやれてるんだから、さすがだよ。デザインから製造工程がコントロールできる会社は、強いね。あれ、和樹の担当ってなんだっけ? 」

「俺はエネルギーの部署ですよ。最近マレーシアのインフラに整備にあわせて...」

一生懸命、理解しようと試みてみるものの、全く分からない。理解の範疇を超えているのだ。

「こうやって、仕事の話ができる女性はいいですね。最近、頭の弱い子が多いから。」

ふと和樹さんの顔を見ると、話が分かるアリサさんと会話している時は、とてもイキイキとした顔をしている。


—それに比べて、私は...


私には、何もない。

誇れる仕事もなければ、男性陣の難しい仕事の話を理解出来るような知識もない。

でもアリサさんより、女子力は高いはずだ。フラワーアレンジメントの資格も持っているし、料理教室にも通っている。女子力磨きも怠っていない。


でも一体、そんなちっぽけなこと、何かの役に立つのかな。


男性陣の視線が、アリサさんへ一点集中になっていくのを、ただ指をくわえて見ることしかできなかった。


▶NEXT:8月16日 水曜更新予定
頑張れにゃんにゃんOL! アリサの檄が再び飛ぶ


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